EEE会議 第1回講演/研究会の概要

日時: 2003年8月22日、10〜12時

場所: 参議院議員会館(第5会議室)

講師: 加納 時男 参議院議員、経済産業委員会理事、自由民主党経済産業部副会長


演題: 「日本のエネルギー基本政策について」


配付資料:1)日経ビジネス、2003.8.25号、“時流超流”「発送電分離」は風前の灯

2-1)エネルギー基本政策に関する中間報告?要旨

2-2)同、本文

3)電気事業法及びガス事業法の一部を改訂する等の法律案に対する附帯決議(案)

4)電気新聞、2003.7.14、?自由化時代の原子力を考える?「硬直的発想はやめ、柔軟な対応求める」

 

講演の概要:

●まず最初に、「発送電分離」問題については、経産省内部に発送電分離を日本にも導入するべしとの意見が根強くあるが、それはあり得ないという認識を強く持っている。電気は特殊な公共財であるという認識が不可欠であり、日本の国情を正しく認識する限り、発送電分離はあり得ない。電気事業に新しく企業が参入してくること自体はよいが、行きすぎた自由化は、安定供給面での問題が大きくなることは間違いない。電力会社首脳で自由化に前向きと言われている東電荒木顧問でさえも、発送電分離には無理があるとしている。この国のエネルギー政策を決めるのは、役人ではなくわれわれ国民に選挙で選ばれた議員の使命である。

 

●エネルギー基本政策に関しては、エネルギー政策の一丁目一番地はセキュリティーである。その基盤の上に、市場原理と競争の導入があり得る。市場原理と競争を優先的に考えることは真っ当な政策ではない。エネルギー基本政策には、与党のみならず、自由党と民主党も賛成にまわったことが重要である(反対したのは、共産党と社民党のみ)。 朝日新聞は、その論説において、基本政策の意図は、

原子力ごり押し、地方自治の無視として、基本政策そのものを否定する論調であったが、ナンセンスである。エネルギー自給率4%、石油への高依存度などを考えると、日本に原子力が欠かせない状況はなんら変わらない。

 

●エネルギー政策は、そもそも国家のものであって、地方自治に委ねられる性格のものではない。一部の地方首長が、アンチ原子力的言説をものしているが、中央(国政、原子力委)への対抗姿勢を示せば示すほどメディアも取り上げ人気が出る傾向が見られる(のはどうも困ったものである)。最近、地方自治の発意として住民投票の有意性が主張されることが多いが、住民投票にかけられる案件は、

その地域に固有の問題で

他の地域への波及が無く

そこで閉じている

問題に限らないといけない。そうでなく、エネルギーのような国策レベルの問題を住民投票で諮るのは本末転倒も甚だしい。

 

●一次エネルギーの石油依存度が相変わらず大きいが、今後はその輸入において、特定地域への過度の依存度(中東80%[米国は25%])低減する施策を行って行かなければならない。

 

●二酸化炭素の削減問題

排出増加は運輸部門、民生部門がともに21%の増加を見せている(19902000年度)。後者はビルと家庭に関しており、情報化(IT化)およびアメニティー化(RV3ナンバー車)などが主な要因になっている。

2000年における温室効果ガス排出の上位5カ国は、@米国、A中国、Bロシア、C日本、Dインドである。1位の米国は京都議定書に反対、中・印は対象外、ロシアは未批准。日本は、“切りしろダボダボ”の独・仏などと一緒に健気にも(議定書に沿った政策実施)を行おうとしている。

 

●原子力政策の着実な展開

原子力発電、燃料サイクルはエネルギー政策基本法の原則を満たすものとして、今後もエネルギー政策の中核として最重点をおいて推進する。

市場の自由化に伴い、民間企業の投資リスクがバックエンド中心に高まると言われているが、これは引当金をあてるのか積立金を充てるかの問題はあるが、基本的に解決できる問題であり、あまり騒ぎ立てるようなことではない。

FBRは是非ともやらねばならない、但し柔軟性をもって。この“柔軟性”を‘実質やらないこと’と曲解する方がいらっしゃるようだが、そうではなく‘哲学の柔軟性’を言っているのである。そのことを誤解なきように。

私自身(加納議員)ウラン協会会長を2年間務めたことがあるので、ウランの需給動向をよく知っている。日本には、プルサーマルに止まらず、その先のFBRとサイクルが必要。

RPSは過渡期においては意味があろうが、やはりNPFS(非化石燃料ポートフォリオ基準)のあり方を検討しなければならないと思う。これは、米国のドメニチやマコウスキーもその通りだと大いに同調してくれ、マコウスキー法案と呼んでよいか・・・などとの好意的反応だった。フランスも賛成してくれた。

 

●『電気事業法及びガス事業法の一部を改訂する等の法律案に対する附帯決議』(資料3)が平成15年6月10日に、参議院経済産業委員会において決議されたことの意義は大きい。すなわち、これを認めないと自由化は進められない(政治主導である)。要目を挙げると(正確な文言は附帯決議本文を参照されたい):

エネルギーセキュリティーと環境保全の両観点から、原子力発電を中核的な電源と位置づける。

〇原子力発電のバックエンド事業については、平成16年度末までに必要な措置を講ずること。この‘講ずる’と明記できたことのインパクトが大きい。

〇電気・ガスの効率的安定供給を確保するために、「責任ある供給主体」が必要であることに鑑み、一般電気事業者制度及び一般ガス事業者制度を存続させるとともに、本法施行3年後の改正検証の際も、この趣旨を十分尊重すること。ここでの、‘「責任ある供給主体」が必要である’および‘十分尊重する’との文言の意義をかみしめて欲しい。

 

●その他質疑などにおける問題点:

〇役人が最重要としているのは、自由化と発送電分離である。

〇今回エネルギー政策基本法の国会審議において、役人は一切答弁していない(政治主導の議員立法である)。

〇法案策定の基盤となった(自民党)エネルギー総合政策小委員会は、小委員会といっても77名の議員が参加し、最大の規模である。甘利議員が委員長。しかも顧問に閣僚経験者が12人も名前を連ねている。これまでに60回開催した。

〇自民党の環境派および公明党を巻き込むためには、新エネルギーを盛り込むしかなかった。

〇原子力委員会の今後のあり方については、現状のままでよいとは思っていない、(かつて閣僚が委員長であったように)強力なリーダーシップが必要なのは確かだろう。ただし、現行法では委員長は専従なので議員を辞めることになるのかもしれない。

〇研究開発テーマは、GIFなどにみられるように、人もカネも国際的に集中してやっていく傾向が強い。

〇日本の総合安全保障政策として原子力を位置づける。

〇国の三本柱として外交、国防、エネルギーであり、「エネルギー省」の設立が必要ではという考えに対しては、明確なことは今の時点でいえないが、そのような考え方はあるかも知れない。

〇基本法をベースに基本計画立案の過程で、パブリックコメントを頂きたいので、皆さんのご意見を是非とも寄せていただきたい。期限は今月(8月)28日まで。

 

以上