EEE会議(米国の小型核兵器開発の動き)...............................................................2003.9.18


 北朝鮮やイランの核兵器開発問題は一向に解決されませんが、その一方、
米国では、ブッシュ米政権の「使える核兵器」研究がいよいよ本格化し始めた
模様です。米上院は9月16日、小型核兵器の研究など核開発関連予算の
大幅削減を求めた民主党提出の修正条項を反対多数で否決したからです。
今年10月からの2004会計年度エネルギー省関連歳出法に同研究費用が
計上されることは確実とみられています。

 米上下両院はこの5月22日、「スプラット・ファースト条項」(5キロトン以下
の小型核の研究・開発禁止条項。1994会計年度の国防権限法で設定)
の廃止を盛り込んだ国防権限法(国防予算)を可決(下院は開発は禁止した
ままで研究を解禁)しており、ブッシュ政権は、今回の修正案否決で、最後の
ハードルを乗り越えたことになります。

 国防総省によれば、研究される小型核兵器は(1)地上の目標を攻撃する
破壊力の低い核弾頭(2)地中深く貫通して地下施設を破壊する核弾頭(い
わゆるbunker-busters)―の2つで、いずれも5キロトン以下、つまり広島、
長崎型原爆の3分の1以下。 国防総省が2002年1月議会に提出した
「核戦略見直し報告」で研究・開発が提案されていたものです。

 小型核兵器とはいえ、研究から開発に進むためには核実験が欠かせま
せんが、核実験そのものは包括的核実験禁止条約(CTBT)で禁止されて
います。ご承知のようにCTBTは、核不拡散条約(NPT)の無期限延長決定
(1995年)と引き換えに、米露など核兵器国も交渉に参加して1996年9月
やっと採択され、クリントン前大統領が同年末に署名したものの、共和党
主導の上院は批准を拒否、ブッシュ大統領も就任早々にCTBTに拘束さ
れないとして、その「死文化」を宣言したことは周知の事実です。このため
CTBTは未だに発効の目処が立っておらず、先週閉幕したウィーンでの
CTBT発効促進会議も全く成果なしに終わりました(9月2日付けEメール
「核実験禁止未だ成らず! CTBT発効促進会議の開催」をご参照くだ
さい)。

 いずれにせよ、冷戦期の相互確証破壊(MAD)理論に基づく核抑止体制
が、いまや根本から変わりつつあることは確かです。小型核兵器研究の狙
いが対テロ戦争遂行にあることは明白ですが、見方を変えれば、限りなき
核拡散・大量破壊兵器拡散の危険性を伴うものです。それが分かっていな
がら、唯一の被爆国日本も、北朝鮮の核の脅威に晒されて、米国の核抑
止力(核の傘)への依存度を増さざるをえず、あまつさえ国内には、非核三
原則廃棄論や日本核武装論が台頭しつつあるのが現実です。

 時あたかも、アイゼンハワー大統領の「平和のための原子力」(Atoms for
Peace)演説から50周年。日本国内でも原子力の平和利用と軍事利用の
意味を問い直す50周年記念シンポジウム(日本原子力学会主催、EEE会
議後援)が9月29〜30日東京で開催されます(このシンポジウムについて
は別途のご案内メールをご覧ください)。

こうした現在の内外の状況に対する皆様の率直なご意見、ご感想をお聞か
せ下さい。
--KK