EEE会議(Re:「再処理に経済性があるか?」:ハーバード大学の研究報告)................................031227


一昨日(12/25)お送りした米国ハーバード大学研究グループの報告書"Managing
the Atom"に関して、会員の小野 章昌氏(元三井物産)から次のような批判的
コメントをいただきました。ご参考まで。
大変説得力のあるご意見であり、これを同大学研究グループに反論として提示すべ
きではないかと思います。他にも批判的コメントがあればどしどしお寄せください。
--KK

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ハーバード大学レポートを案内頂き有難うございました。
目を通させていただいた感想として2点だけ申し上げます。

1.ウラン資源がどのくらいあるかについて、IAEA「レッドブック」のデータをベー
スに、「軽水炉路線を維持するに十分のウラン資源が地球上に存在する」と解釈する
のは私も同様の意見を持つ者ですが、ウラン価格と発見資源量を対数関数式にまとめ
て、現在の40ドル/KgU以下の既知資源量210万MTUが価格を倍の80ドルにすると、
2,100万MTU、130ドルにすると1億MTUになるとしているのは、明らかに行きすぎで
す。

数式の根拠にしたのは、豪州の「ウラン・インフォーメーション・センター」資料に
記載された、WNA(元ウラン協会)研究員のイアン・ホアレーシー氏の意見「現行価
格が倍になると資源量は約10倍になるだろう」ということだけを根拠にしているもの
です。銅その他の金属例を見てもこのような数式にはお目にかかったことがありませ
んし、明らかに基礎データの収集不足と言えます。何でも数式にまとめれば良いとい
う悪しき慣習かと思われます。

2.再処理・リサイクル路線とワンス・スルーの経済性比較を数式で試み、ウラン価
格がどの程度に上がれば、リサイクルはbreak evenになるかを計算していますが、方
程式の前提として使用している固定数字には疑問が出てきます。例えば、ワンス・ス
ルーのコストを600ドル/KgHMとしていますが、これは勿論ヤッカマウンテンをベース
にしたものです。しかし、重要なのは第2処分場建設コストと再処理(あるいは再処
理+高速炉による核消滅)を較べるべきであろうと考えます。あやふやな前提数字
(再処理費用もそうですが)をベースにして、数式を使い、常にbreak evenとなるウ
ラン価格に収斂させて物事の比較を行うと言うアプローチは、あまり感心しないもの
です。

他にも使用済燃料処分用キャスクの容量とHLW+ILW処分用容器の容量比較で、再処理
の有利性は薄い(本来は処分場の所要スペースや処分コストで比較すべきではなかろ
うか)とか、FR路線については高速増殖炉のみを計算対象に取り上げて、核消滅高速
炉と高温冶金再処理との組合わせなどを対象としていないのは、少々おかしい等の感
想を持ちました。

小野 章昌