EEE会議 第3回講演・研究会の概要

 

日時:    2003919日(金)1500 1700

場所:    核燃料サイクル開発機構 東京事務所 1会議室

講師:    中神 靖雄 核燃料サイクル開発機構副理事長

演題:   「FBR実用化と核燃料サイクル技術確立に向けた(JNCにおける)研究開発の現状と将来展望」

講演概要:

 

1.高速増殖炉サイクル実用化の狙い

[開発目標]           

・安全性

・経済性(軽水炉に比肩しうる)

・資源の有効利用 

将来的にはウラン輸入が不要に → エネルギー自立

・核拡散抵抗性  

たとえばプルトニウムを燃焼させ資源として消費 → 余剰なプルトニウムを持たない。

・環境負荷の低減 

超ウラン元素を燃料としてリサイクル    → 高レベル廃棄物量を大幅低減

                                        → 核変換で毒性を大幅低減

2.実用化戦略調査研究

 1999〜2000年:フェーズ1

  ・開発(達成)目標の設定

  ・多様な選択肢の比較・評価

 2001〜2005:フェーズ2 ← 中間取りまとめ(2003年度末)

  ・候補概念成立への技術開発

  ・実用化候補(複数)概念絞込み

  ・工学規模試験計画の策定

 2006〜2010年

  ・概念設計研究

  ・工学規模試験による実用化技術開発

 2011〜2015年

  ・実プラントの基本設計

  ・確証・実証試験

 2015年頃:競争力あるFBRシステム技術体系を提示

 2015〜2030年:社会的ニーズに応じて実プラントを試験的に導入

2030年〜:FBRサイクル実用化

3.「もんじゅ」の役割と高速増殖炉の将来展望

(信頼性の確立) もんじゅの運転

第1段階:発電炉の信頼性実証、ナトリウム技術等の確立

第2段階:高性能燃料の開発、環境負荷低減等の実証

(経済性の向上) 実用化戦略調査研究

方策の評価絞込み

主要技術の確立

上記を通じて、実用化技術を確立し、2015年頃競争力あるFBRサイクルの技術体系を提示し、2030年ごろの本格実用化を目指す。

 

4.高速実験炉「常陽」の役割と成果

(役割)

高速炉の安全性、信頼性の実証

燃料・材料等の照射データの取得

「もんじゅ」許認可データ取得

(成果)

高速炉の安全・安定な運転、燃料・材料等の照射を「もんじゅ」に先行して実施、増殖性等の性能確認、ナトリウム取扱技術の向上、安全研究等の実施

 

5.「もんじゅ」開発のこれまでの成果

「もんじゅ」設計・建設・試運転(40%出力試験までの安全性設計余裕の確認等)、国際協力、技術成果

 

6.「もんじゅ」における増殖性の実証

増殖比として1.18〜1.22 → 原子炉としての増殖性を実証 →今後は燃料製造・再処理と連携して燃料サイクルの実証

 

7.高速増殖炉実用化に向けた「もんじゅ」の役割

「もんじゅ」はFBR開発の中核的研究施設として活用

運転開始後

1段階:FBR発電プラントとしての基本性能の確認

FBR発電技術の高い信頼性の実証、Na取扱技術の完成、運転容易性の向上および保守・検査技術の高度化、運転維持費の削減

2段階:試験研究施設としての活用

新技術の実証(高性能燃料等)、高速中性子を活用した環境負荷低減技術の実証

 

8.実用化戦略調査研究における協力体制

オールジャパン体制によるプロジェクトの推進と国際協力

 

9.実用化戦略調査研究の体制(JNC内)

理事長以下、FBRサイクル開発推進部を中心に大洗工学センター、東海事業所、敦賀本部等、全社的な体制にて実施している。

 

10.発電単価の目標とフェーズ1における評価

 

11.性能向上に向けた研究開発

原子炉構造簡素化、配管系簡素化、高温化、水平免震、一体貫流SG等の研究開発を行っている。

 

12.フェーズ2:FBRシステムの技術開発の例

12%Cr鋼の採用による配管短縮化、中間熱交換器と1次系ポンプの機器合体、原子炉容器構造の簡素化により、原子炉格納容器の容積を「もんじゅ」の約1/8にする見込み

 

13.ナトリウム冷却炉:要素技術開発の主な成果

合体機器の健全性評価、大口径・高流速配管の健全性評価等

 

14.再臨界回避に関する安全研究

カザフスタンの試験炉IGRを用いた炉内試験、補完的な炉外試験の実施。

 

15.東海再処理技術開発の成果

我が国において再処理プロセス実証、環境負荷低減及び廃棄物処理技術の向上、核不拡散対応技術の高度化、プラント安定化技術の確立、再処理技術高度化

16.フェーズ2:燃料サイクルシステムの技術開発

  ・経済性向上(プロセス簡素化)

  ・核不拡散(U/Pu共抽出・低除染)

  ・環境負荷低減(TRUのリサイクル、燃焼)

17.先進湿式法と従来型PUREX法の比較

ウラン、プルトニウム、マイナーアクチニドを一括して抽出。

早期実現を見込めるシステムや革新的技術を導入し経済性を大幅に高めるシステム等を検討。

 

18.簡素化ペレット法技術開発の進捗状況

現在の25工程から5工程、ホールドアップ量の低減、廃棄物発生量の低減を目指し、ショートプロセスを指向。

 

19.燃料サイクルコストの評価

経済性向上に係るR&Dの展開により燃料費低減の見通しがあるとした実用化戦略調査研究のフェーズTの結果を踏まえ、燃料費低減のためのR&D、経済性の評価制度を向上させるとともに、小型プラント規模での経済性向上の検討を実施。

 

20.フェーズ2:炉心燃料の技術開発

高性能被覆管材としてODSフェライト鋼等を開発。

 

21.実用化へのシナリオ

実用化戦略調査研究、常陽、もんじゅ等の成果を踏まえ、実プラントの試験的な導入、2030年頃の実用化を目指す。

 

22.世界の高速炉開発の現状

アメリカ      第4世代原子力システムの開発に精力的に取り組んでいる(6概念中、3概念が高速炉)。

フランス      環境負荷低減技術開発のためにフェニックスを運転中。

ロシア        BN−600を運転中(解体核プルトニウム処分の協力を実施中)。

インド        50万キロワットのPFBRの建設を計画中。

中国          試験炉であるCEFRを建設中。

 

23.国際協力

(ロシア解体核プルトニウム処分協力)

ロシアの高速炉での解体核プルトニウム処分

(新型炉開発)

第4世代炉開発国際フォーラム(GIF)(米仏日を含む10ヶ国):ナトリウム冷却高速炉は次世代新型炉の有力候補のひとつとして、日本がリード国となり研究開発推進

(高レベル放射性廃棄物処理処分技術)

米、仏、加、スイス、スウェーデン、韓国等との2国間国際協力

(海外との研究者の交流)

 

質疑応答:

 

会員)オールジャパンの体制で研究開発を行っているとの事だが、そのような体制では、「船頭多くして、船、山に登る」であり、開発スピードが遅くなる。説明のようにそんな早くできるわけがない。

 

会員)ナトリウム炉、1炉型の説明しかなかったが他の炉型の研究開発状況はどうなっているのか。

 

講演者)ガス冷却炉や鉛ビスマス冷却炉等についての研究も行っているが、実用化の技術レベルがかなり異なっている。現状ではナトリウム冷却炉が最も進んでおり、他の炉型では2030年を目指すことは難しいと考えている。また、多くの炉型についての研究開発を日本のみで行うことには限界がある。第4世代炉開発国際フォーラムの枠組み等を利用して国際協力をしながら研究開発を行っていきたい。

 

会員)ループ型、ピューレックス法では何も変わっていないではないか。

 

講演者)他の形式の研究開発もおこなっているが、最短コースということでいうとナトリウム冷却炉、先進湿式というところをご説明させていただいた。

 

JNC)鉛ビスマス冷却炉については、中・小型炉の概念について研究を行っているが、腐食の問題が大きな課題となっている。ガス冷却炉については、被覆燃料粒子のコーティング材、取扱いについての問題が大きな課題となっている。いずれにせよ、課題を摘出し研究を継続しているところ。

 

会員)概念設計の段階で安くなるかもしれないが、詳細設計になっていくと1.5〜2倍位、高くなってしまうのではないか。また、発注は各メーカーに分割という従来のやり方をやっていたら安くはできない。競争で1社に任せるということはできないのか。それから、フランスがスーパーフェニックスをやめた具体的な理由は何か。

 

JNC)設計が進めば進むほど、高くなってしまうことは過去の現実であるが、2ループ化、SGの大きさ等については、AP1000のデザインと同等であり、機器の大きさ等関係についてはある程度デザインできると考えている。ただし、限界設定に近い条件に設定している部分があるため、実際にものを作ったり、設計が詰まってくると、物量が多くなってしまうこともありえる。ただ、クリティカルな部分はあらかじめ実験等を行って、現在のターゲットに収まるようにしていきたいと考えている。

 

会員)熱疲労割れについてはどのように考えているのか。

 

JNC)もんじゅの段階で綿密に実験を行い設計に反映させているところ。もんじゅの運転を通して更なるチェックにより確認していきたい。

 

会員)ナトリウムというのは目に見えないが、ナトリウム炉のメンテナンスはどのように考えているのか。

 

JNC)超音波による点検等を検討している。

また、先ほどの質問のスーパーフェニックスの廃止の理由については、政治的なもので現在の政権が緑の党を連立に引き込む際の政治的条件として原子力研究開発の象徴的なものとしてのスーパーフェニックスの廃止が決められてしまったとの理解。

 

会員)きちんと経済性を得ていれば、そんなことはなかったのではないか。

 

講演者)スーパーフェニックスの問題は、フェニックスの25万キロワットから、130万キロワットと規模に飛躍がありすぎたことも原因のひとつ。フェニックスはサイクル機構と同じ研究開発機関であるCEAが実施したが、スーパーフェニックスはEDFがコマーシャルプラントとして実施。それにしては開発要素が多すぎたということも原因の一つ。また、多国籍の出資の元でEDFが実施主体となったため、実施主体としての問題があったことも原因と考えられる。

 

会員)実施主体は非常に大きな問題。実施主体が決まらないと、立地等、何も決まらない。

 

講演者)実施主体の問題は非常に難しい。国や電力事業者との役割分担についても検討していかなくてはならないと考えている。来年から検討が始まるであろう次期長計ではそういったことを具体的に記述していくことが大切。基本的には国の役割が大きくなるのではと思う。これまでは、ナショナルプロジェクトということで各メーカーにたくさん分けて、やってきたということは責任体制という点でも問題。H2Aロケットや石炭ガス化のプロジェクトのようにどこかが全責任を負ってプロジェクトを行っていくという形になっていくのがこれからの流れと思う。ただ心配なのは、それらの体制が整って実施に至るまで、現在メーカーにある技術を伝承し、人材を育成していくということが大きな課題である。

 

講演者)実用化に向けて大切なことは次期長計にキチンと先についても示されること。ご支援賜りたい。

 

会員)「柔軟に」なんて言っていてはだめ。

 

会員)「ナトリウム冷却の高速増殖炉をやるんだ。」という明確な方針が必要。

また、建設費については軽水炉に対抗できるなんて事を言っていたらだめ。高くなっても必要なんだと、そういうことが認めてやらないと絵に描いた餅で、みんな信じない。

 

会員)完成した技術を輸入した軽水炉でも相当苦労した。そこまでもっていくもの大きな予算がかかっている。FBRについてその部分をだれが負担するのか。「軽水炉と同じところまで行って、電力どうするのか?」ということではないか。

それから、これから自由化になって、変わってくるのは、これまでの料金は認可制だったから、研究開発予算は総括原価に吸収されてしまっていたが、今度はそうはいかない、軽水炉や火力と競争しなくていけない。建設費が2倍ということもありうるそのリスクを誰が負担するかということが大きな問題。

 

会員)高くなることに対して国が負担しますということでなければ到底進められない。

 

講演者)次の2030年までは国の役割というのがかなり大きいと考えている。

 

JNC)いわゆる実用炉の機能をもった炉を国の責任において研究開発しようと考えている。難しいかもしれないが。ここで考えているものは、30〜40万キロワットのものでまずは実用化を目指せるものにしていこうと考えている。

 

講演者)そのサイズで十分経済性を発揮しうるものを考えている。

 

会員)もんじゅのトラブルは安全審査だけでも5年もかかっている。2、3年でできなくてはいけないこと。サッサとやらないと今のペースではいつまでたっても実用化なんて遠い先のこと。

 

講演者)もんじゅは確かに長くかかってしまっている。地元の理解を得てしっかりやらなければと考えている。

 

会員)原研との統合はマイナスなのではないか。

 

講演者)原研の中にも革新的な原子力システムについての研究を行っている部隊もある。そういったところをうまく取り込んでやっていきたい。

 

代表)実用化戦略調査研究は電力・JNC半々とのことだが、メーカー側でもベストの人材をキープしていくことが課題となっているという。現在JNCの研究チームにメーカーはどのくらいはいっているのか。

 

講演者)現在は10数名程度。高速炉の技術者を維持しようとすると30名程度必要かと思う。いかにメーカーの技術を維持していくかということは大きな課題。現状、それぞれ細々と研究開発を継続しているが、これからは、知恵を絞ってJNC、メーカー、大学と一緒になって公募型研究を利用していくこと等も含め検討していかなければならない。

 

代表)「もんじゅ」、「実用炉の機能を有するプラント」とパラレルで開発していくべき。「もんじゅ」の訴訟のけりがついてからでないといけないということではないであろう。

 

会員)訴訟をまっていたら厳しい。折衝の仕方をよく考えないと。

 

代表)県のもんじゅ委員会というのは何をやっているのか?

 

講演者)福井大学の学長が委員長となり、県民のアンケート等から課題を挙げ、「もんじゅ」の安全性等についての科学技術的な審査をしてきた。先日、最終報告案がまとめられたところ。今後、パブリックコメントを求めたり、県議会、市議会に説明したり、1ヶ月後くらいに知事に上がる予定。

 

代表)必ずしも最高裁判決が下らなくても、少しずつジワジワやっていこうということの1つか

 

講演者)そのとおり。

 

会員)責任体制の話についてだが、FBRの研究開発は、国が国益のために責任をもってやるということではないのか。

 

講演者)そのとおり。われわれはシナリオを示し、そのために研究開発を進めていく。もう1つは長計の中でそういうものを明らかにしていくということが必要。

 

会員)かつて原研は国から受注して責任をもってまとめる受注者という感じであったが、動燃は発注者という感じになって受注はメーカーとなってしまった。「もんじゅ」のトラブルはそういった問題もあったのではないか。新法人は受注者となって詳細設計レベルまで責任を持って進めていくことが必要。

 

講演者)これからは受注者として詳細設計まで踏み込んでやらないといけないと思う。残念ながら「もんじゅ」については不十分なところがあったかもしれない。

 

会員)JNCはそこまでできるのか。立地や何から全部できるのか。これは原子力委員会が責任をもって役割分担すべき。

 

代表)次の長計の中できちんと書いてやっていくことが大切と思うが、次の長計はいつごろ出来上がると想定しているのか。

 

講演者)当方としては、新法人が独立行政法人になるということもあり、17年度頃に予定される新法人設立に向けた中期目標・中期計画作成の前には、原子力長計ができていてほしいと考えている。

 

以 上