040127  濃縮・再処理の国際的な制限について


標記のテーマについて、ある特別会員(匿名希望)から次のようなメールをいた
だきました。ちょっと厄介な問題ですが、今後国際社会で重要になってくる問題と
考えられますので、我々としてもこの機会にできるだけ勉強しておくべきものだろ
うと思います。なお、以下で引用されているメールや資料はすべてホームページ
(http://www.eeecom.jp/)のバックナンバー・ページに掲載されておりますので、
適宜再確認して下さい。ユーザー名:memberパスワード:tomatoです。 念のため。
--KK

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いつも有益な情報をありがとうございます。
今回、以下の点に関して、皆様のご意見をいただければと思いまして、メールを
送らせていただきます。よろしくお願いしたいと存じます。

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 国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長が昨年11月初めに国連総会で「プ
ルトニウムや高濃縮ウランを国際管理下に置くことを検討すべし」との提案(@:11/6
付けメール)と、これに対する豊田氏のコメント(A:11/17付けメール)や、12月22日

けのNY Times への米国4著名人による投稿論文「Good Nukes, Bad Nukes」(B:11/23
付けメール)、本年1月4日付けのNY  Times  の社説「Plugging  Nuclear Leaks」(C
:1/5付けメール)などをご紹介いただいておりますが、これらに共通する基本コンセ
プトのひとつは、たとえNPTに加盟し、IAEAのフルスコープ保障措置と追加議定書の
保障措置までを受け入れていようとも、濃縮・再処理については認めるべきでない
国があることを明確にさせよう、ということではないかと思われます。このような
考え方そのものの是非の議論もあろうかとは思いますが、仮にこのような考え方を
とった場合、それではどのような国までは、濃縮・再処理が認められるべきかが明
確にされないと、今後の議論が進みにくいと思われます。

 @、A、Bではこのような限定のためのアイデアは提示されていないと思われま
す。特に、@は国際管理とすればどの国にも権利があるような仕組みとなりえる可能
性を持っていると思われます。IAEAはそもそも加盟国が意志を決定できる国際機関
ですので、濃縮・再処理が認められるべき国を限定するような国際約束の構築には
限界があるかもしれません。

 一方、Cでは「Reactor  fuel  production  should  be  limited  to  the  few
advanced  countries  that already have fully transparent nuclear technology
industries.」として「透明性」という判断基準を示した上でさらに「the      few
advanced  countries」というように数の限定も示唆しています。(なお、この文章
は、濃縮・再処理を明示しておらず、「Reactor fuel production」であるので、単
に軽水炉用の低濃縮ウラン燃料加工のことだけを言っているとも読めるもので
す。)しかしながら、「透明性」という判断基準は極めて曖昧であり、このような
基準で、濃縮・再処理を制限するような国際約束を目指すことは難しそうです。

 ということで、以下に、濃縮・再処理の制限条件に関して思いつくアイデアを述
べてみます。

(1) 最も限定的なのはNPTの5核兵器国のみという案があり得ますが、これは我が国
として全く受け入れられる案ではないと思います。

(2)   別なアイデアとしては、NPTの核兵器国の定義のアナロジーで、ある一定時点
(基本的には現時点)で、IAEA保障措置(包括的保障措置+追加議定書の保障措置)の
下で濃縮・再処理を行っている国(及びNPT核兵器国)以外に濃縮・再処理(技術)を拡
散させない、というようなことがあるかとは思われます。(さらに厳密には、単に
保障措置協定とか追加議定書が発効しているだけではだめで、保障措置の補助取決
めの施設付属書が発効して査察等が円滑に実施されており、追加議定書の措置によ
り未申告活動が無いことが結論されて統合保障措置に移行していること、としても
よいかもしれません。但し、こうすると現時点では日本もまだ統合保障措置に移行
していないので除外されてしまいます。)

 ちなみに、2002年版のIAEA年報(ホームページからアクセス可)に載っている保障
措置対象施設リストから見ると、再処理施設としては、北朝鮮(一応、例の放射化学
研究所が載っています。但し、当然施設の補助取決め施設付属書(FA)は未発効)、ド
イツ(WAK:閉鎖中?)、インド(PREFRE:包括的保障措置ではなくINFCIRC/66タイプの
保障措置。昔、米国から支援を受けた原子力発電所の使用済燃料を処理する時だけ
査察が行われるとの話があるようですが、詳細は不明)、イタリア(EURE,
ITREC-Trisaia)、日本(東海)。一方、濃縮施設としては、アルゼンチン、ブラジ
ル、中国(以上の3ケ国の施設はFA未発効)、ドイツ、日本、オランダ、イギリス(日
本以外の3ケ国はURENCO)が載っています(中国、イギリスは核兵器国なのでボラン
タリー保障措置協定の保障措置)。なお、このうち、追加議定書が発効しているの
は日本と中国だけです。いずれにしても、ある一定時点の実績等で将来を拘束する
形式は、不平等との反対を招きやすい案であると思われます。

(3)  最も反対を受けにくいのは、濃縮・再処理が認められる客観的基準を明確にし
て、個々の国の申請のようなものを国際的に合意された手続きで審査するというよ
うなものでしょうが、これでは将来的には、数を制限できないと思われ、実効性に
疑問符がつくかもしれません。

 ということで、濃縮・再処理国の制限に関して、その是非も含めどのようなアイ
デアがあるかについて、ご意見がいただけると幸いです。