040302  Re: 核燃料サイクル政策に関する提言案へのコメント

標記の件に関し、黒井英雄氏からいただいたコメントをご披露します。
ご参考まで。
--KK

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最近の多くの報告書が指摘しているように、放射性廃棄物の深
地層処分は技術的に可能とされるが、未だ、地層処分を実施し
た国はなく、廃棄物の最終処分の問題は世界中の原子力利用を
進めている国にとって大きな障害となり続けています。
更に、使用済み燃料の直接処分、再処理廃棄物の処分にかかわ
らず、原子力発電コスト評価において、最終処分のためのコス
トが一番不確定要素の大きい所である事も指摘しています。

放射性廃棄物の最終処分は原子力全体の死活的課題である上に
、長期の隔離保証が求められるために、各国とも、処分地の選
定に対して、公衆の理解を求めるために苦慮している問題です。

EEEの議論において、地層処分に関して、スペースの問題、
ベントナイトの議論は行なわれていますが、日本の地層処分の
コンセプトの議論は少なかったように思います。
一方、最終処分方法は、採用する燃料サイクルの形態にも死活
的な影響を持つために、速やかに見通しをつけなければならな
い問題です。

例えば、再処理か直接処分かの議論はEEEでよく見かけます
が、ウラン価格が急騰しない限り、直接処分が再処理に対して
コスト的に有利であることは、常識でないでしょうか。しかし
、問題は処分地が得られるか、また、その処分コストが焦点だ
と思います。

従来のIAEAの報告書は処分地の安全性に関して、処分量の
評価は考えていませんでしたが、昨年の報告書には「最終処分
地に起因する一般人の将来の被爆は年間0.3mSvを越えな
いこと、この処分場からのリスクの頻度は10−5/年程度と
すること」で初めて処分量が評価の対象に組み込まれました。

また、最終処分のコンセプトもBore hole やRetrievable な考
え方も考慮されるようになり、その他の選択肢も議論されてい
ます。

 最終処分の問題は単純でないことは、理解できますが、その
検討に触れない核燃料サイクル政策に関する提言は画竜点睛を
欠くと思います。政府関係者では触れにくい基本的な問題も議
論して初めて提言の価値が出てくるのではないでしょうか?

 小生が某社の為に参考として、まとめたプルトニウム利用の
ロードマップの資料から、一部を添付させていただきます。二
ヶ月ほどで全体を纏めた上に、能力不足もあって、間違ってい
るところも多いかと思います。専門家は既に詳しくお調べの事
と思いますが、EEE議論に出てきていないために、議論を活
性化出来ればと思って、浅学非才を省みず、添付させていただ
きます。

黒井英雄(一般会員)