040302  Re:核燃料サイクル政策に関する提言案=第2次案: 「余剰プルトニウム」問題

標記件名のメール(3/1)に対して、豊田正敏氏からも次のようなコメントを
いただきました。ご参考まで。 なお、末尾に小生の簡単なコメントを付記し
ておきました。
--KK

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IPS構想については、INFCEでも盛んに議論された所ですが、具体的な実現
方法について議論が分かれて結論が出ていないと理解しております。現在、
この問題を検討するにあたって次のような問題があると考えます。

1. プルトニウムを一箇所に貯蔵しても、各国でプルトニウムを利用することに
なれば、輸送途中や原子炉装荷前に転用されるリスクは避けられません。
韓国や台湾がプルサーマルをやると言い出してもおそらく、米国は、認めない
のではないかと考えます。米国が日本に対して、かって、反対していた本当の
理由は日本が核兵器に転用することを心配していたのではなく、日本に認めれ
ば、韓国や台湾が「何故日本には認めて我々に対しては認めないのか」と詰め
寄られたときに返答するのが難しいことにあったと考えております。

2. プルトニウムを長期貯蔵するためには、その放射能が高くかつ、発熱量が
大きいこと及び厳重な保障措置及び物的防護対策が必要なことから、貯蔵費が
かなり高くなります。また、4~5年経つとアメリシュウムが多数蓄積されるので、
化学処理によってプルトニウムから分離する必要があり、経費がかかります。
従って、これらの経費を誰がどのように負担するかを予め考えておく必要が
あります。

3. 他国のプルトニウムを保管することについては、日本が再処理委託により、
回収されているプルトニウムが長期にわたりフランスなどに保管されていること
に対して、反対派から早く返せという要求が出そうな気運がありますが、IPSを
日本に作るとした場合、国民感情から他国のプルトニウムを保管することに
国民の合意を得ることは難しいのではないかと考えます。

IPS構想については、上述の点を十分検討の上、提案されることを望みます。
以上

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<金子のコメント>

1.かつてのIPS構想と混同される惧れがあるので、本当は別の名称をつけ
るべきかとも思いますが、とりあえず便利なので「新IPS」構想と称しているも
のです。小生の「アジアトム」構想がユーラトムとは大きく違うのに、両者を
混同して頭から「アジアトム」は実現不可能と即断する一部論者の意見と
同じ種類の誤解であります。

2.新IPSは「国際プルトニウム貯蔵庫」(store)を設置することが狙いで、
いくつ何処に作るかは各国の判断によりますが、日本の場合は、再処理工
場、Pu燃料加工工場、その他適当と認められる場所に設置するもので、
それ以外の特別の場所に新設することは想定していません。これらの貯蔵庫
には当然現行のIAEA保障措置の適用がありますが、それ以上の追加的な
保護(PP)や規制を課すべきかどうかは今後の検討課題です。いわゆる
「二重キー」(日本とIAEAが倉庫のキーを持つ)という仕組みは検討する
価値があるでしょう。なお、かつてのIPS交渉で問題となった「IPS国際管理
委員会」(預託されたPuを払い出すかどうかを決定する権限を持つ国際機関)
の設置は全く想定していません。ここが旧IPSとの最大の違い。

3.かかる「国際プルトニウム貯蔵庫」(store)を設置する文書をどのような
形式のものにするかも要検討事項ですが、必ずしも国際条約(多国間協定)
にする必要はなく、とりあえず日本とIAEAの取決め(2国間協定)の形でも
良いと思います。そのようなものであれば、多国間の外交交渉を必要としな
いので、日本のハラ1つで比較的簡単に成立可能と思います。

4.日本国内のIPS倉庫に他国のプルトニウムを預かることは、当面想定
しておりません。もっぱら日本の「未利用プルトニウム」(unused plutonium)
についての透明性を高めることを目的とするものです。海外(英仏等)に
存在する我が国所有のPuをどうするかは、別問題として処理した方が得策
でしょう。MOX化されたPuをどうするかも要検討事項です。

以上、予告編的にいくつかのポイントを列挙しました。いずれ近日中に全体
構想(試案)をまとめてご披露するつもりですが、目下その時間がないので、
しばらくの猶予をいただきたいと思います。ただし、その間に、以上のポイント
により概略ご賢察の上何なりとコメントをいただければ大いに感謝いたします。
とくに技術的な問題点(豊田氏のコメント2.など)について。
--KK


----- Original Message -----
From: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>
To: <Undisclosed-Recipient:;>
Sent: Monday, March 01, 2004 2:38 AM
Subject: EEE会議(Re:核燃料サイクル政策に関する提言案=第2次案: 「余剰プル
トニウム」問題) 


> 皆様
>
> 昨日お送りした標記第2次案の2.提言の(2)に関連して、実は、小生は次のよう

> 意見を持っております。ご参考まで。 私見に対してコメントをお聞かせくだされ

> 幸甚です。
> --KK
>