050401  反原発団体のメールマガジンから2点ご紹介
 
今朝拙宅に舞い込んできた「環境エネルギー政策研究所(ISEP)メールマガジン
「Sustainable Energy and Environmental News (SEEN)」- No.15 (4月1日)
から次の2点をピックアップしてご紹介します。ご参考まで。
--KK
 
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6.連載「お笑い原子力ムラ敦賀」?
  日野 行介(毎日新聞大阪社会部記者 今年3月まで福井支局敦賀駐在)

 原発のある自治体に行ったことがあるだろうか。原発はその多くが大都市か
ら遠く離れた過疎地にある。しかし街中を歩くと、不似合いなあまりに巨大な
公共施設が立ち並ぶ光景に気付くだろう。体育館、ホール、温泉施設、野球場
…。建設費は高いもので50億円近い。だが一様に利用者は少ない。
 こうした巨大ハコモノ施設の建設費の原資はその多くが電気料金。一定分が
国から特別税として天引きされて特別会計にプールされた後、原発のある自治
体や計画のある自治体に「電源3法交付金」として支払われる。このほかにも
電力会社が納める巨額の固定資産税、果ては億単位の「匿名寄付」まである。
 こうした巨額の原発マネーが入り、インフラ整備が進むことで住民福祉が向
上するというのが、過疎地が原発を誘致する最大の理由だ。では原発を誘致し
た自治体は本当に幸せになったのか。日本原子力発電の敦賀原発1、2号機、
核燃料サイクル開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」、新型転換炉「ふげん」など
4基が立ち並び、3、4号機の増設工事も昨年から始まった福井県敦賀市のケ
ースをこれから連載で見ていきたい。
 市内中心部にある市立敦賀病院は、原発15基が集中する福井県嶺南地域の中
核病院だ。現在は約73億円をかけて増築工事中で、この原資も3、4号機増設
に伴う電源3法交付金、そして日本原電からの匿名寄付金を当て込んでいる。
この増築工事には当初から市民の異論が強かった。この病院では医療過誤事件
が続出、不信感がうずまいていたためだ。「建物ばかり作っても中身が整わなけ
れば無駄。良い医者を呼んできてほしい」という声も多かった。
 だが3、4号機増設計画が関西圏の電力需要低迷を背景に遅れに遅れていた
ため、地元建設業界は予定していた建設工事が中々入らないことに業を煮やし
た。損失を補てんするかのように病院増築計画を求める声を強め、同市は03
年度に着工した。
 増築完了後の07年度からは当然病床数が増える。だが皮肉なことに、この病
院に医師を派遣している金沢大学病院が常勤内科医6人を04年度で引き揚げ
ると通告。敦賀市当局は大混乱に陥っている。過疎地の自治体病院の医師不足
は全国的にも深刻で、6人の常勤医師を補充することができず、当面は外来診
療日や内科の病床数を減らして対応する方針だが、07年度になれば医師を確保
できる見通しも薄い。市民の不安が的中した形だ。3月の定例市議会はこの問
題で大揺れで、それを見た同業他社の記者はつぶやいた。「これじゃ建物ばかり
立派で料理人がいない高級料亭だ…」。

  日野 行介(毎日新聞大阪社会部記者 今年3月まで福井支局敦賀駐在)


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●「原子力長計中間とりまとめ国際評価パネル」発足

「原子力研究開発利用長期計画」(原子力長計)の中間とりまとめを評価する
「原子力長計中間とりまとめ国際評価パネル」(座長:吉岡斉、九州大学教授)
がたちあがり、ISEPは事務局を努めることになった。この評価パネルは、高木
仁三郎市民科学基金(http://www.takagifund.org)の委託研究として行われ、
日本の再処理政策に関心を持つ国内外の識者・学者たちが、原子力委員会での
議論に懸念を抱き、国際的な評価基準に照らして日本の核燃料サイクル政策を
評価し直すために設立したものである。

今回の国際評価パネルでは、核燃料サイクル政策について徹底した議論を経て
きたアメリカ、イギリス、フランス、ドイツの各国より、議論の中で中心的役
割を担っている識者が参加する。また、日本からは、原子力政策に関わる学者・
識者たちが参加するほか、策定会議委員でもある吉岡斉九州大学教授がパネル
全体の座長を努める。

パネルは、策定会議の議論が集約される夏に向けて、報告書をとりまとめ政策
提言を行う予定である。

「原子力長計中間とりまとめ国際評価パネル」

◎日本側パネル委員
 吉岡斉、九州大学大学院教授 (評価パネル全体座長)
 飯田哲也、環境エネルギー政策研究所所長
 海渡雄一、弁護士
 橘川武郎、東京大学社会科学研究所教授
 藤村陽、京都大学大学院理学研究科助手
 協力 特定非営利活動法人 原子力資料情報室

◎海外側パネル委員
・アメリカ:フランク・フォン・ヒッペル
  プリンストン大学教授。前ホワイトハウス科学技術政策局国家安全保障会
 議副議長。核・原子力政策の国際的な権威で、その発言は米国内だけではな
 く国際的に大きな影響力を持つ。「市民科学」の提唱者。
・イギリス:フレッド・バーカー
  エネルギー政策コンサルタント。英国放射性廃棄物処分委員会(英国政府の
 指名した独立委員会) 委員。原子力・核燃料サイクルに関する経済性評価の
 権威。
・ドイツ:クリスチャン・キュパース
  エコ研究所。ドイツ放射線安全委員会、標準化委員会委員。ドイツ原子力
 安全委員会委員長の同研究所のミヒャエル・ザイラー氏とともに、原子力安
 全研究の国際的権威。
・フランス:マイケル・シュナイダー
  国際エネルギーコンサルタント。ドイツ政府、フランス政府などの原子力
 政策アドバイザー。前WISE-Paris代表。国際MOX評価研究で「もう一つのノ
 ーベル賞」を受賞。

CONTACT: 「原子力長計中間とりまとめ国際評価パネル」事務局
(特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所気付)
phone: 03-5366-1186, FAX: 03-3358-5359

                      大林ミカ(ISEP副所長)