050401  ウラン、石油及び天然ガスの需給及び価格の見通し:  豊田正敏氏の意見
 
次のようなメールを豊田正敏氏からいただきました。これは小野章昌氏(元三井物産)宛になっておりますが、内容の重要性に鑑み全会員各位に配信させていただきます。ご参考まで。なお、小野氏以外の方でもコメントのある方々は自由にお寄せ下さい。
--KK
 
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小野様
先般、ウランの今後の需給と価格の見通しについて、貴殿と私及びJNCの小林氏との間で議論しました。ウラン
の需給については、ウラン価格の上昇に伴い、ウランの探鉱、採鉱及び製錬の技術開発により、今世紀末に需給
が逼迫することはないとの結論で一致しましたが、価格については、三者の間で、見解が大きく異なっておりま
したので、改めて、出来れば定量的解析も含めて貴見解についてお伺いします。私の記憶によれば、貴殿は100ド
ル/kgUまではかなり短期間に上昇するが、その後はその近辺の価格に止まると考えておられ、私は、今世紀末ま
でには、技術的進歩を考慮しても200〜250ドル/kgUにはなる可能性があると考えており、小林氏はさらに高くな
ると考えておられたのではないかと考えております。

次に、石油及び天然ガスを三井物産で担当されている方に次の点について見解を伺いたく、貴殿に取り計らい方
お願い出来ないでしょうか。
石油については、一部の学者の中には、「世界の原油生産は、来る10−15年後でピークとなるものと予測し
ている。それはさらに早期にさえなり得るものと思っている者もいる。」とか、「経済産業省の判断は、国際
エネルギー機関(IEA)の判断に準拠し、地球資源は十分あり、開発のために資本を投下し開発努力を強化すれ
ば、2030年にも石油価格35$/バレルは十分達成可能であるとのシナリオの上に立脚しているが、この前提は甘
く、もっと厳しく見るべきである。」という意見がありますが、石油の今後の需給および価格の見通しについ
てお聞きしたい。

私の考えは、現在の石油価格の急騰は、中国の石油需要の急激な伸びや、ロシアの大手石油会社ユコスの不祥事
による生産低下などに起因すると考えますが、石油市場に投機的色彩があることによることも否定できないと
考えております。確認埋蔵量に基づく可採年数は、40年と考えられ、価格上昇に伴う探鉱、開発の技術開発によ
り、埋蔵量がさらに増えることを考えれば、ピークになるのは、今世紀半ばぐらいではないかと考えておりま
す。また、価格については、ロシアのみでなく、OPEC及びメディアが、探鉱、開発を含む増産に踏み切れば、2030年
の価格はIEAが判断している石油価格35$/バレルは十分達成可能であると考えております。しかし、OPEC及び
メディアは、今回の価格上昇による大増益により、多額の資金を獲得しているにも拘わらず、此処で増産に踏み
切れば、かつての石油危機の際、経験しているような供給過剰による大暴落が起こるのではないかと懸念して増
産に踏み切ろうとしていないところに問題があり、当面、価格が高止まりする可能性はあると考えます。しか
し、このままでは国際的な非難も起こり、結局は増産することとなり、価格は低減するものと考えます。また、石
油価格が今のような価格で高止まりすると各国特に、中国及び米国の経済成長に大きな影響を及ぼし、また、代
替エネルギーの採用や省エネルギーが進み、この結果、価格低減の方向に向かうと考えます。従って、2030年
に石油価格35$/バレルは十分達成可能であるというIEAの判断が、間違いであるとか、甘過ぎるという見方が
妥当であるということは出来ないと考えます。なお、私は、IEAの考えている石油価格35$/バレルは、平均の石
油価格であって、WTIのスポット価格ではないと考えていますがどうでしょうか。何れにしても、石油がピーク
を迎えるのは2050年頃と見るべきではないでしようか。
また、天然ガスの埋蔵量、需給及び価格の見通しについてもご見解をお聞かせ下さい。以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp