Subject: EEE会議(北朝鮮核問題の抜本的解決法)
Date: Sun, 12 Jan 2003 12:08:15 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

北朝鮮問題問題は、(敢えて野次馬的に言えば)いよいよ佳境に入ってきたよ
うです。まるで10年前のビデオテープを見ているような気もします。この問
題に関する小生自身の意見は、この10年、基本的には変わっていません。最
近ある雑誌(今月下旬発売)に書いた小論の一部を次にご紹介します。一般向
けに書いたもので、ちょっと舌足らずですが、ご高覧の上、忌憚のないコメン
トを賜れば幸いです。
金子熊夫

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(前略)単刀直入に結論から言えば、日本人は、もっと独自の立場で長期的に
ものを見るべきだということである。米国は、唯一の超大国として最後は軍事
力で解決できるから、ある意味で単純だが、軍事力に欠ける日本はそういうわ
けには行かない。

 今後米国が本格的に北朝鮮に軍事的圧力をかければ、核兵器開発を断念させ
ることができるだろうが、それはあくまでも一時的なもので、抜本的な解決に
はならない。仮に北朝鮮が断念したと言っても、そして、その担保として国際
原子力機関(IAEA)の査察を受け入れたとしても、いずれ遠くない将来再開す
るのは疑いない。例えばイラクの場合も、1981年にイスラエル空軍によっ
てバグダード郊外のオシラク(Osirak)原子炉を破壊されたはずなのに数年後
には核開発を再開した。それを湾岸戦争(1991年)時に米英が空爆で再度
破壊したはずなのに、近年また再開し、今回の騒動に発展した。見ていると、
大体10年間隔で同じことを繰り返している。北朝鮮もほぼ同じパターンだろ
う。

 このことは何を意味するか。端的に言えば、国際査察は所詮その程度のもの
で、それほど当てにならないということだ。誤解のないように言っておくが、
これは今始まったことではなく、マンハッタン計画で最初の原爆を作った直後
から予測されていたことだ。要するに「パンドラから一旦出た核=原子力とい
う怪物は元に戻らない。核物質を転用して原爆を作ることを阻止する真に効果
的な手段はない」(R.オッペンハイマー)からだ。仮に炉や関連施設を完全に
破壊しても、科学者の頭の中までは―科学者達を皆殺しにしない限り―破壊で
きない。しかも、国家が総ぐるみで秘密裏に核開発を決意したら、外部のどん
な機関もこれを完全に摘発し、阻止することは出来ない。それが国家性悪説に
基づく国際政治の実態である。

 とすれば、打開のための選択肢は2つしかないはずだ。「北」を、つまり金
正日政権を、外科手術で完全に抹殺、除去するか。しかし、いくら米国でも、
十分な大義名分なしにはそれは出来ない。ならば、北朝鮮に核開発を自らの意
思で断念させ、平和路線に切り替えさせる以外にない。韓国の「太陽政策」 
はそれを狙ったものだろうが、不十分である。結局米国が、北朝鮮が先に攻撃
してこない限り、北を本格的に攻撃することはしないという確約を与える以外
にない。その確約を「北」は喉から手が出るほど欲しがっている。つまり朝鮮
戦争(1950−53年)の休戦協定を相互不可侵条約に置き換えたいのだ。

 米国は、北の「瀬戸際政策」の脅しに屈してそのような条約を結ぶことは断
固拒否しているが、もしそれ以外に抜本的な解決方法がないのならば、日本
は、韓国と共に対米説得に乗り出すべきであろう。もちろん、拉致問題も満足
に解決していない現時点で、日本がそうしたイニシャティヴをとるわけには行
かないが、いずれ機が熟したら日本はそうした方向にできるだけ動くべきであ
る。その際、私や他の日米の専門家がかねてから提唱している「北東アジア非
核兵器地帯構想」が参考になると思う。米国は太平洋を隔てているからいい
が、日本はテポドン・ミサイルで10分そこそこで、どんなミサイル防衛
(MD)システムでも完全防御は不可能だ。日本は米国の同盟国ではあるが、地
政学的な立場は大きく違うのだから、何から何まで米国に追随するというわけ
には行かない。
  (以下省略)