Subject: EEE会議(Re:対ベトナム原子力輸出問題)
Date: Sat, 18 Jan 2003 16:33:45 +0900
From: "金子 熊夫" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

一昨日、対ベトナム原子力輸出問題等に関する拙稿(1月16日付け電気新聞掲載)
をご高覧に供しましたところ、複数の方々から懇切なご批判やコメントを頂戴しまし
た。 小生としては、日本国内において原子力が非常な苦境にあるとき、原子力輸出
問題を論ずること自体にやや躊躇がありましたが、皆様のご意見は概ね肯定的で、む
しろ、こういう状況だからこそ、日本は、アジアのエネルギー安全保障と原子力復権
のために、もっと積極的に対処すべきだというご意見を伺って、安堵しました。 以
下、ご参考までに一部のメールをご披露します(いずれも匿名希望)。
さらなるご議論を期待しております。
金子熊夫

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(貴論文の)結論には大賛成です。ただ、私の個人的な意見を言わせていただけれ
ば、日本製の原子炉を売り込むためだけに協力を進めるというのは、考え方として少
し気になります。 むしろ、アジアで原子力をしっかりとやる健全な仲間を増やすた
めに、協力をするのだろうと
思っています。 日本の制度(たとえば規制など)はベストではないですね。大分遅
れていますね。 したがって、日本の「特殊事情」を立て直しつつ、ベトナム等これ
から原子力をやろうとしている国々に対して、同じ轍を踏まないように、高い観点か
ら、協力をして行くべきかと思います。

<匿名希望>

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・「外国製の炉は日本製のそれに比べて3〜5割以上安い」とありますが、具体的な
数値は、デリケートな話なので、異論を唱える向きも多いと思います。

・また、「日本製の炉がコスト高かなのは、国内の安全基準が諸外国に比べて格段に
厳しく、多重防護システムになっているからだ」といのは、必ずしも正確ではないと
思います。米国もフランスも日本と同じ 2チャンネル(安全系の電源系統構成)、
2トレイン(安全系設備構成)です。むしろ 日本製のコストが高いのは、土地代や
立地のための漁業補償等の経費 や日本独特の国や電力会社の要求する品質保証のた
めの検査の多さや 国際的にもべらぼうに高い人件費用に起因することが原因かとも
思います。また比較する際の 外国為替の問題もあると思います。

・「ベトナムの実情に合った炉」とは 多重防護を止めるというようにも読めるので
すが、実績のある炉(いわゆる米国や日本などで建設可能な炉)という意味であるな
ら多重防護を止めるわけには行かないと思います。そうではなくて「ベトナムの実情
に合った炉」の意味するものが、今研究段階にある様々な小型炉を新しく開発するの
だと言うことであれば、話は通じると思います。(但し、新型炉を提案した場合、輸
入国側は安全審査の体制・能力が不十分なため、「米国で許認可が得られること」と
いう条件を付けてくることが通常です。)

<匿名希望>