Subject: EEE会議(Re:イラク攻撃問題:日独比較)
Date: Fri, 24 Jan 2003 11:20:20 +0900
From: "金子 熊夫" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

昨日、標記題名のメールを差し上げましたところ、早速品川信良先生
(弘前大学名誉教授)より次のような示唆に富むメールをいただきまし
たので、ご参考までに転送いたします。
金子熊夫
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「イラク攻撃問題:日独比較」を、大変興味深く拝読しました。
それに対する「忌憚のない意見」というほどのものではありませんが、
戦中派の一人として、また戦後、かなりしばしば、ドイツに行ったことがあり、
ドイツに多くの友人を持つ者の一人として、2、3コメントをさせて頂きます。
雪国の老人の「独り言」と思ってお読み下さい。

 1.まずは、日独の比較からですが、同じ第二次大戦の敗戦国と言っても、
両国民には、国際問題などに関する「経験」や「勘」のようなものに、
非常に大きな違いがあります。日本は極東の島国。
特に江戸時代は、鎖国までした国です。
明治以降、アジア大陸などに出て行って、こっぴどい目にあい、
「あつものに懲りて膾(なます)を」ふいているようなところのある国です。
日本も第二次大戦末期に空からはかなり酷くやられましたが、
それでもドイツのように、本土で地上戦まで戦ったわけでもなければ、
四つの国に分割占領されたわけでもありません。

  これに対しドイツは、僅かに北のほうだけは海に面していますが、
あとは陸続きで、たえず異民族に接し、もまれ、何度も何度も外国と戦争を
繰り返してきた国です。特に冷戦時代は、東西に分断されてきました。
民族的経験が違います。

  もう一つ日本と大きく違うところは、あの戦争のことや、ヒトラー/ナチスの
時代のことを、学校では子供たちなどに、いわば徹底的に教えてきたことです。
例えば 1995年に多くの大学などでは、敗戦50年を記念して、
ナチス時代に自分たちの大学と大学人がどんなであったかに関する
自己批判をやりました。
日本のどこの大学が、「敗戦50周年記念行事」をやったでしょうか。
また、ドイツで一番広く読まれている週刊誌「シュピーゲル」には、
今でも毎週のように、ヒトラー時代のことや、第二次大戦のことが、
延々と書き続けられています。

これに対し日本では、徳川時代ぐらいまでのことは学校で教えても、
明治以降のこと、特に大正時代以降のことなどは、
ほとんど教えてきませんでした。

 正式にはその差が、いま出てきているのだと思います。
その、戦争を知らないばかりか、教えられもしなかった世代が、
いま国会議員を始めとする国の要職にもおれば、
マスコミなどを支配したりもしているのです。
そこに、何かの歪みや甘さのようなものが無い筈はありません。
歴史教科書問題、靖国神社参拝問題、「神の国」発言問題等々、
そのルーツは皆、この教育の欠陥と、あの敗戦を「終戦」と言い張って、
直視しなかったためなのです。

 2.第二には、アラブ産油国からの石油の輸送ルートの確保に関してですが、
さればこそ、早々とイージス艦はインド洋まで出かけ、国会の皆さんも、
余り反対されなかったのかとばかり私は思っていましたが、
そうではなかったのでしょうか。それにしても、石油もさることながら、
核燃料やその廃棄物を、アラブよりももっと遠いフランスやイギリスと
六ヶ所村などとの間を、よくもこれまで、一度も事故なく運んでいたものと、
天地神明海洋に感謝致します。

 3.実は、この三番目のことが一番申し上げたいことなのです。
「石油の輸入先を多元化せよ」との御意見には、全面的に賛成です。
例のオイルショックのときにも、このことは国会などでも大きな話題になり、
いわば国策になっていた筈ですが、それがその後、余り履行されていませんでした。
善意に解釈すれば、つい先日の小泉総理の訪ロの目的の一つも
そのためだったのでしょうが、この「多元化」の問題は、
一朝一夕には実現できません。

 そこで、次善の策を提案します。それは、石油の国内備蓄量を、
飛躍的に増やすことです。いままでのように、やれ80日分の、
160日分のと言っていないで、国策として、もっと増やすことです。
それも、港や大工場などの近くにだけ備蓄するのではなくて、
全国津々浦々、それこそ全市町村にあまねく備蓄することです。
石油の備蓄に貯金をするのです。預貯金や外貨の問題、
雇用の問題などにも、かなり貢献できるかとも思います。
 
 この際私は、金子熊夫さんのような有力なお方が、
私の意見に賛同して下さることを、このメールの場をお借りして、
切にお願い申し上げます。
 
 勿論それと同時に政府は、もっともっと、国民に対して、広く、
「日本は資源の無い、エネルギー資源の乏しい国だから、
アメリカやアメリカ人の真似をしないで、石油も、電気も、
大いに節約しましょう」と呼びかけるべきものだと思います。
あの敗戦のときのことまでは無理としましても、せめて、
オイルショックのときのことを、もう一度思い出しましょう。

 なお、私の記憶ちがいでなければ、スイスは昔から食料と燃料を
確か5年分、貯蔵している筈です。

長々と、大変失礼しました。反論などを歓迎致します。

弘前市  品川 信良