Subject: EEE会議(Re:東海再処理工場のPu計量誤差問題)
Date: Wed, 29 Jan 2003 23:02:49 +0900
From: "金子 熊夫" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

標記問題に関して、保障措置問題の第一人者である栗原弘善氏(核物質管理センター
専務理事)より、次のメールをいただきました。ご参考まで。
金子熊夫

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いつもEEE会議、たいへん面白く、また、有益で、拝読
しています。 東海再処理工場の計量管理の件ですが
1月28日の原子力委員会での会議後、記者発表された
「最近の我が国における保障措置の実施状況」の一部として
TRP(東海再処理施設)のこの問題が説明されています。
この施設では、発電所からの使用済み燃料のプルトニウム
量は、発電所側の推計値をもらうのですが、その数字と
再処理施設で溶解後に実際の計量を行ったプルトニウム
量の数字を比較しています。必ずしも一致しません。その
累積値が、昭和52年の操業開始から平成14年9月まで
で206kgに達したということです。これを、われわれは、
SRD(Shipper Receiver Difference)と呼んでいます。
MUF(Muterial Unaccounted For)とはまったく違うものです。

その間の使用済燃料の処理量は1003トンで、6.9トンの
プルトニウムを回収しています。

計算による推計値と実測値ですから100%合うことは期待
できませんが、それにしても大きいので平成7年から、国、
IAEA,事業者の間で検討されてきていました。

一部の結果がわかったので今回公表したということです。
報告書をお読みいただくほうが正確なのですが、この原因は
4つあったということです。

1.原子炉におけるPu生成量に係る計算コードによる誤差
2.入量計量前のせんだん・溶解過程から廃棄される燃料
被覆管(ハル)等に付着したPu量の過少評価
3.核的損耗(Puの放射性崩壊による損耗)
4.入量計量槽を経ずに高レベル放射性廃液貯槽に流入
するPuの存在

これまでのところ累積204kgのSRDのうち、4の原因が
94kgのうちの大部分(あいまいな表現ですが、報告書
の詳細を略したためお判りにくいと思います。)、3が29
kgとわかってきました。まだ、検討は続いています。

TRPは、古い設計で保障措置の実施を考慮にいれていま
せん。そのため、4のようなことがおこっています。六ヶ所
ではそのようなことはありません。また、3も、平成6年
以前のデータが問題になったので六ヶ所ではないです。
2については、技術の進歩があって最近では問題では
なくなりました。1は依然として残る問題と思います。

以上、取り急ぎ要点のみ書きました。報告書をお読み
いただければ、もっと詳しい事情がわかります。

栗原弘善 拝
kurihara@jnmcc.or.jp
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