Subject: EEE会議(Re: 「もんじゅ」判決について)
Date: Thu, 30 Jan 2003 17:56:42 +0900
From: "金子 熊夫" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

「もんじゅ」判決に関連して、次のようなコメントを「エネルギー問題に発言する
会」の柴山哲男氏(元三菱原子力)からいただきました。 「ふげん」についてのご
感想は小生も同感です。最後の「余剰プルトニウム」管理問題については、当EEE
会議でも今後大いに議論して行きたいと思いますので、ご意見のある方はこの機会に
どしどし発言してください。
金子熊夫 

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 もんじゅの判決について私自身基本設計を担当し安全審査にも関与しており、誠に
残念な気がします。判決の内容については今後詳細に検討し、誤り及び不備な点につ
いてはただしておく必要はありますが裁判批判的なことは避ける必要があること、今
後国が上告しても最高裁で差し戻しになり、高裁で再度判決が下るまでは今回の判決
が行きていると見なさざるを得ないことについては留意しておく必要があると思いま
す。
 このような状況下で私の気になる点は次の4点があります。
 1 もんじゅの改造、運転は可能か
 2 六ヶ所再処理工場の試験、運転は可能か
 3 プルサーマル再開への影響はどうか
 4 核燃料サイクル全体への影響、更には原子力政策への影響はどうか

 以下上記の点について簡単に趣旨を記載致しますので、ご批判を頂ければ幸いで
す。
1 もんじゅの改造、運転については知事の同意が必要になっています。設置許可無
効の判決が出たことにより法的に知事の同意が可能であるかは分かりませんが政治的
には非常に難しい情勢にあることは間違いありません。国として説得を続けるだけで
良いのか、例えば判決で指摘された問題について反論と言う意味ではなく正面から回
答解決策を出すことは考えられないか、その他推進策はないか等

2 六ヶ所の再処理施設は本年6月頃よりウラン試験に入る予定です。ウラン試験開
始前には地元と安全協定を改訂締結する必要があります。これに対してウラン試験開
始後は除染などの必要が生じるので操業の見通しが立つ迄は安易に入るべきではない
という意見があるのは事実です。プルサーマルに続いてもんじゅとプルトニウム利用
の途が見えにくい状況下で安全協定の締結が可能かどうか、そのためには何が必要
か、国が核燃料サイクル施策の継続を約束するだけで良いのか、将来の問題について
覚書きなどの形での処理が可能か等。なお、再処理工場の試験運転などが遅延した場
合、使用済み燃料の六ヶ所搬入延期、更には既搬入燃料の搬出などの問題が出ること
も考えられ、使用済み燃料貯蔵の点からも原子力発電続行に重大な支障がでる可能性
もあります。但し、本件については地元として試験停止によるデメリットはあっても
メリットは殆どなく、知事の同意しやすい環境が出来れば政治判断が可能とは思いま
す。 

3 プルサーマルについては地道に理解を得るしか方法がないように思いますが、可
能性が残っていた高浜がもんじゅと同じ福井県なのは皮肉な感じもします。もんじゅ
の判決が直接影響するとは思えませんがやはり良い影響は与えないような気がしま
す。プルトニウム利用では従来、常陽、ふげんでの利用実績のPRが不足であったよ
うな感もあります。特にふげん(これも福井県ですが)の実績は立派のものでもん
じゅと反対にこの3月で運転を停止するのは残念です。停止が地元または炉自身の問
題ではなく国の方針によるものだけに、日本のプルトニウム利用技術を維持し、プル
サーマルへの道筋をつけるためにも、無茶苦茶な意見とは思いますが、運転再開は出
来ないものかとの気もします。燃料製造などの期間も必要ですが、方針を決めるだけ
でも六ヶ所運転乃至他のプルサーマルのも好影響はあると思いますが。

4 核燃料サイクル全般について、国は既定方針を維持することを明言しています
が、それだけで良いのか、最近説明責任ということが言われていますがその点で十分
なのか、最近の問題に十分答えているのか、核燃料サイクルの必要性が十分に説かれ
ているのか等多少柔軟な対応も必要ではないかと思います。特にもんじゅの運転再開
が厳しくなった現状では高速炉の開発を進めるのか、どう進めるのかに対しては明確
な方針を出す必要があると思います。もんじゅの次期炉についてもんじゅの運転結果
を見てからではなく、建設時期は別として方針を出すことは出来ないか等将来のエネ
ルギーセキュリティを含めて議論が必要かと思います。

 なお、追加ですが以前私が提案した「余剰プルトニウムを適切に保管する」ことに
関しても最近この会議で議論になっている核武装論議に関連して、核武装はしないも
ののプルトニウム保管国になることの是非を含めて議論して頂ければと思います。

(本信は記名で配布して頂いて結構です)

柴山 哲男
tetuo shibayama
shibayama@mvh.biglobe.ne.jp
PS

柴山様へ
貴信の最後に出てくる「余剰プルトニウム」の管理問題については、確か1週間く
らい前にいただいたメールで新構想を提案されておりましたが、小生ちょっと記憶が
はっきりしませんので、すみませんが、もう一度ご提案を披露してくださいませんか

金子拝