Subject: EEE会議(Re:「もんじゅ」判決について)
Date: Sun, 2 Feb 2003 14:47:29 +0900
From: "金子 熊夫" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

標記判決に関して、次のコメントを「エネルギー問題に発言する会」の石井正則氏
(元石川島播磨重工業)からいただきました。ご参考まで。一部の方々にはダブって
いるかもしれませんが、悪しからず。
金子熊夫 
*************************************************

「もんじゅ裁判に思う: リスクの評価と受容について」

もんじゅ判決の技術的論点の詳細を理解していないが、放射性物質が外部への漏洩す
る“可能性を排除できない”ことなどから、安全審査に“看過しがたい瑕疵”があっ
たとされたようである。

原子力施設に限らず、リスクの大きさはその発生確率と影響の大きさとの関係から決
まるものである。原子力プラントは言うまでもなく安全性が最重要課題であり、重大
なリスクの発現確率をゼロに近づける必要があると同時に、リスクが発現した場合の
危機管理を含めたシステマティックな対応が必要とされる。リスクの“可能性を排除
できない”ことが“看過しがたい瑕疵”とされるとしたら、新しい技術、とりわけ大
型新技術の実証はほとんど不可能になる。判決がリスクの可能性を問題とするのであ
れば、発生確率と被害の規模を適切にとらえ、受容できるリスクかどうかを評価する
必要があると思う。判決ではこのような点が欠如しているように思われる。

一方、原子力のこれまでの一般国民に対する説明では、安全神話といわれるようにあ
まりこのリスクに触れてこなかったように思う。リスクに関するコミュニケーション
が不足しており、リスクの受容性に関する国民の合意が十分には進んでいない。この
こともこのような判決がなされる背景にあるのではなかろうか。一歩踏み込んだリス
クコミュニケーションが必要になったように思う。

原子力は地球環境とエネルギー安全保障のうえから、21世紀の基幹的なエネルギー資
源であり、ウラン資源の有効利用からも高速炉の選択肢を排除するわけにはゆかな
い。この判決を乗り越えて、見直すべき点は見直し、この選択肢を追求してもらいた
い。

石井正則
エネルギー問題に発言する会
E mail m_ishii@flamenco.plala.or.jp (自宅)