Subject: EEE会議(Re:「もんじゅ」判決について)
Date: Wed, 5 Feb 2003 08:10:07 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

「もんじゅ」判決に関して、東工大の澤田哲生先生からつぎのようなメールを内々に
いただきました。同氏は目下、航空宇宙工学の国際会議のため訪米中で、今この形で
公表することに同意されたわけではありませんが、タイミングの点などを考慮して、
小生の独断でここにご披露させていただくものです。ご参考まで。
金子熊夫

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今回の民事訴訟はそもそも安全審査−許認可の手続き論に関する異議申し立ての審議
のようですが、だとすると、Na漏れ、SG細管破断、CDAなど安全性に対する問題
点(それもかなりマニアックでピンポイント的かつ甚だしい誤認・誤解がある)その
ものを論って云々することと、審査−許認可の手続きの正当性とは別次元の問題では
ないか。ましてや原子力安全委員会方面へのまともな事情聴取はなかったとすれば、
仮に何らかの認識のズレがあったにせよ、寧ろ端から偏向していて、いわば‘まんま
としてやられた’ようにすら思えます。
しかし、金子先生、近藤先生、そして石井氏のコメントを読めば、これはちょっとナ
イーブな見方のようです。法律論(民事の位置づけ)や訴訟のおこなわれ方、それに
裁判官の心証まで絡んでくると、まったくもって難しい。
ある新聞には行政庁の対応が裁判官の心象を損ねたとも書いてあったようですし、反
対派が必死で主張することに対し、行政庁がたかをくくったようにおざなりの対応を
したともいわれているようです。こうなってくるとものの本質がどこにあるのか非常
に見えづらいですね。

しかし、そうかといって司直が易々と一市民的情動をもって“市民意識を発動”する
というのも、事実とすれば異常ですね。この裁判官の個性を問いたくなりますが、E
EE会議でいま議論されている「戦後歴史教育」の問題とリンクしているのではない
かと思わず勘ぐりたくなります。ゲスの勘ぐりですが。
ただ、近藤先生の最後通牒のような「わが国の原子力界は本気で構造改革を行なわな
ければ先がないことだけは確かです。ご参考まで。」は重いですねえ。「それだから
こそ我々は機会あるごとに原子力法改正をと叫んできたのです。この点で、この判決
はproactiveどころかreactiveにすら動かなくてもよければ動かないですまそうとし
てきた原子力界の受けるべき天罰と思うべきでしょう。」を読めば、結局は立法府の
政治家が動かなければならないのでしょうが、実のところこのツケを誰が払うのか。
これまでの行政府−立法府と学や民の連携では今後は立ちゆかないのか。等々考え始
めると気が重いですね。

ところで、わたしは今航空宇宙工学の国際会議で米国に来ておりますが、土曜日のス
ペースシャトル事故でCNN他のニュースは持ちきりで、サダムも一時的に陰を薄め
ています。
スペースシャトルに関しては、様々な角度から、多くの専門家を招いて、現状で得ら
れる情報をベースに徹底的に分析し報道しています。スペースシャトル一色で異常と
もいうべき状況ですが、国を挙げてこのことを国の行き先、国民の選択とからめて真
剣に考えているようにも読めます。大統領が早々に声明を発表しましたし、NASA
のスペースシャトル・プロジェクト・マネージャーの記者会見も連日フルに報道され
ています。何が分かっていて何が分からないか、何が今後の問題かなどを非常に明確
に述べています。まあ、こういうのが“説明責任”と“透明性”の体現なのでしょう
ね。

もう一点、会議では宇宙用原子炉(定置用やロケット推進)の話題を主に取り上げた
シンポジウムがありまして、こちらでは、火星探査や、木星の惑星カリスト(氷の惑
星)への有人探査、そして冥王星への有人探査に原子炉とくに高速炉やガス炉を用い
る話題が盛りだくさんで、CRBRPは死んでも、革新的原子炉の夢はこちらでチャ
ンと生きているようです。まあ、これは半分(以上?)軍事利用ということでしょう
が、人類の夢と使命そして安全保障という観点からはこれが健全なやりようなのかも
しれません。

澤田哲生