Subject: EEE会議(Re:「もんじゅ」判決について)
Date: Wed, 5 Feb 2003 14:40:11 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

「もんじゅ」判決に関連し、内田裕久教授(東海大学大学院工学研究科、研究推進部
長)からも有益なコメントをいただきました。 ご参考まで。
金子熊夫
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このところの「もんじゅ判決」について、いろいろなご意見が交わされていて興味深
く、今朝も澤田先生のご意見を拝見いたしました。
以下、2つの点を思い出しました。

1。今回の判決に関して、このメール会議で科学・技術の立場から真摯に出されてい
る方々は 、原子力の開発に一生懸命取り組まれた関係者が多く、その視点からの意
見が多いのは当然でしょう。
一方、現場のいい加減な意識、管理体制により引き起こされてきた原発関係のトラブ
ルでは、日経産業新聞「てくのろじー考」(1996年8月9日)に書いた「もんじゅ事故
で科学技術庁傘下の動力炉・核燃料開発事業団担当者がとった初期対応は、国民の原
子力エネルギーへの信頼性を低下させ、原子力技術の実用化と信頼性確立に努力して
きた研究者、技術者の長年の努力を台無しにした」がくり返されてきた。
今回の裁判の判決の背景には、むしろこういった不信に対する素人、一般人の視点に
立った判決だったと思います。
1996年のもんじゅ事故のころ、「米国の警告後もHIV感染の危険性がある非加熱製
剤の使用を許可していた厚生省の態度は、HIV撲滅に向けて闘っている科学者、医
療担当者をどれほど欺く結果になったのか」(同コラム記事)。
「事件の本質は事故そのものにはない。組織的体質の問題である」(同コラム記
事)。 このあたりに日本の原子力の問題があると思います。

2。スペースシャトルの事故について、ちょうど、ドイツの研究所に勤務していたこ
ろ、マックスプランク金属研究所にいた仲間(メイボルト氏)がドイツ人として初め
てシャトルに乗る事になり、本人が搭乗前後に研究所で話をした中に、ケネディース
ペースセンターはじめ、シャトルプロジェクトを実施している雰囲気は、官僚的で気
分が悪い、といっていたのを思い出しました。KSCのお偉いさんに気に入られない
と「お前でなくとも他にもシャトルに乗りたいやつはいるのだから」という雰囲気が
あり、技術者としていいたい事もいえない雰囲気が合ったと。このお役所的な雰囲気
の中で、起きてしまうのが「あり得ない事故」なのでしょう。「あり得ないのに起き
た」というのはお役所の常套句ですね。

「日本の行政には責任者不在という不思議な傾向がある。『 お上が無知な民衆を指
導する』という日本の伝統的政府主導体制」(同コラム)。
この延長に日本の原子力行政があるならば、近藤先生がご指摘のように「構造改革」
しかないのでしょう。

内田 裕久

東海大学
1)大学院工学研究科・工学部
  エネルギー工学専攻  教授
2)研究推進部(産学官連携担当部署) 部長
3)未来科学技術共同利用センター 所長