Subject: EEE会議(Re: 北朝鮮核問題、日本の核燃料サイクル計画など)
Date: Sun, 9 Feb 2003 12:03:09 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

@北朝鮮核問題と日本の安全保障問題(日本核武装論)、およびA日本の核燃料サイ
クル計画(再処理、プルトニウム利用問題)という2つの重要テーマをめぐる当EE
E会議の議論に、今回からもう一人強力な論客が参入されました。元東京電力副社
長、元日本原燃社長の豊田正敏氏です。月刊「エネルギー」2月号掲載の拙稿(1月
27日付けEメール参照)に対する反論として、次のように論じておられます。ご参
考まで。

なお、豊田氏の「挑戦」に対しては、小生も近日中にじっくり反論させていただくつ
もりですが、皆様方からも積極的な反応を歓迎いたします。便宜上、上記 @、Aの
論点に分けて議論していただきたいと思いますが、両方同時に議論されても構いませ
ん。 匿名OKです。

金子熊夫

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e-mail有難うございます。EEE会議への参加よろしくお願い致します。「もんじゅ」
関連のe-mailの中、例えば古川氏のものなど送られていない重要なものがあればお送
りください。

また、核問題に関連する論文有難うございます。貴説のように北朝鮮がIAEAによる査
察の受け入れを約束したとしても、独裁者の「ならず者国家」との約束は何時破棄さ
れるかもしれないことは過去の経験から明らかであります。「朝鮮半島非核化宣言」
が有名無実のものであり、日本の「非核三原則」も「核を持ち込ませない」という原
則が守られていないことは周知の事実です。貴提案の「東北アジア非核兵器地帯構
想」は構想としては、素晴らしいものと考えますか゛、仮に関係国がこれに賛成した
としても、北朝鮮の核開発の抑止力になるかどうかは疑問です。

貴説のように、テポドン・ミサイルの脅威にさらされている日本は、米国に頼ってい
るだけでなく、自らこの危険を回避する対策をとる必要があると考えます。現状で
は、北朝鮮がテポドン・ミサイルを日本に打ち込んできても日本にはこれに対する何
らの報復手段はありません。勿論、我が国は専守防衛に徹すべきではありますか゛、
「皮を切らせて肉を切る」といった報復手段を考えておくべきであリ、これが北朝鮮
に対する核開発の抑止力になると思いますし、外交を有利に導く手段ともなると考え
ます。

一部有力議員が、「日本もいずれ核武装しなければならなくなるかもしれない」とい
うような趣旨の発言をしているのは、本気で考えている人と中国や北朝鮮にそのよう
な発言をすることによってあまりにもひどい屈辱的外交に対する警告の手段と考えて
いる人とがいるのではないかと考えます。勿論世界で唯一の原爆被害国の日本が今直
ちに核開発に踏み切ると考えている人は皆無であると考えますが、上述のように屈辱
的外交が繰り返される状態が続くならば、時の政府が、世論を喚起し、マスコミがこ
れに同調すれば、国会の承認を得て政策の変更は可能であり、その可能性は否定でき
ないと考えます。
 
次に、貴説のように、この問題は、核燃料サイクル計画に重要な影響を与えることが
懸念されます。わが国には、「原子炉級プルトニウムは、核兵器製造に不適な低品位
プルトニウムだから心配無用」と考えている専門家がいるが、米国政府機関は「高燃
焼度の軽水炉燃料或いはMOX燃料から回収されたプルトニウムにより、比較的単純な
装置で1ないし数キロトンの爆発力になり、より高度の設計技術を適用すればより高
度の破壊力を持つものが生産可能である。」と述べております。

これに対して、我が国の専門家の中には、1962年に行われた実験のみで反論しようと
しているが、この実験のプルトニウムの組成及び爆発力などの詳細も判らないし、そ
の後の技術的進歩も把握出来ていない。即ち、 プルトニウムの圧縮技術などの技術
進歩により、原子炉級プル
トニウムでも所要量8kgで核兵器になり得るとの米国核兵器専門家の主張に反論する
に足りる十分な根拠がありません。

さらに、プルトニウムの蒸気または弗化プルトニウムにレーザーを当てることによ
り、プルトニウム239を選択分離できる可能性があるし、 劣化ウランまたは天然ウラ
ンの燃料棒を軽水炉の炉心周辺部に配置しておき、半年ないし1年後に取り出し再処
理によりプルトニウム239の純度の高いプルトニウムを回収することが出来ます。
 
北朝鮮の場合には、既に再処理技術を持っているので、軽水炉からでもプルトニウム
239の純度の高いプルトニウムを回収し核兵器を作ることは比較的容易に出来ると考
えます。従って、米国が北朝鮮に軽水炉の建設を援助しているのは政策の矛盾であ
り、直ちに、火力発電所の援助に切り替えるべきであります。むしろ、我が国にとっ
て脅威となるのではないでしょうか。
 
また、我が国では、プルトニウムが既に、32トン貯まっており、しかもプルサーマル
が思うように進まない現状で、六ヶ所再処理工場でプルトニウムを回収するという前
提で再処理を行うことについて、国際的な理解を得ることは難しいのではないかと考
えます。従って、六ヶ所ではプルトニウムを回収しないとの前提で再処理することに
すべきであると考えております。

事実、米国は、英仏から日本に持ち帰るMOX燃料輸送に当たって軍艦などの護衛をつ
けるよう要求しているし、六ヶ所再処理工場の保障措置にMUF(測定誤差を含む行方不
明量)を極力抑えるよう要求しております。また、「余分のプルトニウムは持たな
い」との国際約束をせざるを得なかった。

このような事情を考えると、六ヶ所再処理工場の運転開始及びMOX燃料工場の建設に
対して米国がどのような反応を示すかが問題であります。米国の国務省は、外交上の
配慮から好意的に取り扱おうとするでしょうが、反プルトニウム運動家の動きもあ
り、また,強硬な核不拡散論者の一部上院議員や国防総省及びエネルギー省などが、
どのような反応を示すか予断を許さないのではないでしょうか。
以上に対し、重ねて、貴説をお伺いしたい。

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp