Subject: EEE会議(Re:原子炉級プルトニウムによる核兵器の可能性)
Date: Wed, 12 Feb 2003 01:22:30 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位様

原子炉級プルトニウムで核兵器ができるかどうかの問題に関する澤田哲生氏の質問
(2月9日付け)に対し、豊田正敏氏から次のようなメールを頂きました。 とくに
豊田氏のメールの最後の部分(「原子力委員会は直ちに・・・」うんぬん)は極めて
重要なご提言であると思います。

因みに、この問題に関しては、昨年6月福田官房長官と安倍官房副長官による「日本
核武装」発言が問題となった際に、当EEE会議上で6、7月の2ヶ月間にわたって
多数の方々(今井隆吉、近藤駿介、藤井靖彦、鈴木達治郎、栗原弘善氏ほか数名の匿
名氏)の間でかなり集中的な議論が行われた経緯があります。当時の関連メールを保
存しておられる方は是非この機会にもう一度それらを再読されるようお勧めします。
 ご希望の方には関連メールのいくつかを再送信いたしますので、ご一報を。
金子熊夫

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私のコメントに対して澤田氏より質問がありましたので、次のように回答及びコメン
トします。

先ず、原子炉級プルトニウムによる核兵器の可能性については、米国のCISAC(米国科
学アカデミー・国際安全保障と軍備管理委員会) 1994 Management and Disposition
of Excess Weapons Plutonium及びOffice of Technology Management(議会技術評価
局)1994に述べられております。例えば、CISACは結論として、「原子炉級プルトニウ
ムを使って簡単な設計で1ないし数キロトン(kt)の爆発力を、より進歩した設計によ
ればさらに大きな爆発力を得ることが可能である。」と述べており、「原子炉級プル
トニウムは、早期連鎖反応の発生の可能性が大きいが設計上最悪の時点で早期発生が
起きた場合にも長崎型の比較的単純な装置で1ないし数キロトン(kt)程度の爆発力
(fizzle yield)になる筈である。より高度の設計技術を適用すれば、原子炉級プルト
ニウムでもより高度の破壊力を持つものが生産可能である。」と説明している。

私も米国が原子炉級プルトニウムの規定有意量を8kgとし、IAEAの査察に当たって
六ヶ所工場のMUFの量を出来るだけ小さくするよう要求した際、その後のプルトニウ
ム爆弾の爆縮のメカニズムがどのように進歩しているかを知らなければ納得できない
として問いただしたが、核拡散防止の観点から答えられないとの返事しか得られな
かったが納得せざるを得なかった記憶がある。
私は、米国の説明を必ずしも信用していないが、どの程度設計技術が進歩しているか
の証拠をつかまなければ、国内でいくら議論していても問題解決にはならないと考え
ます。


私の提案は、月刊誌「エネルギー」2月号に述べているように「米国がどのようなメ
カニズムでどれほど効率的な核兵器が可能になっているかについて掘り下げた検討を
する必要がある。また、レーザーによるプルトニウム239の選択分離の可能性も考え
られる。これらに対する米国政府のはっきりした回答は期待出来ないであろうから、
政府は核兵器専門家や米国のコンサルタント会社に調査を委託して真相を解明すべき
である。その結果、河田(澤田?)氏の指摘のように、将来に亘って核兵器は作れな
いことが確認される場合には、原子力委員会は直ちに、米国に対してMOX燃料輸送の
際の護衛の要求を撤回させると共に、米国及びIAEAに対して原子炉級プルトニウムを
機微物質から除外するとともに、六ヶ所再処理工場及びMOX燃料工場を保障措置対象
から外すよう要請すべきである。また、日米原子力協定の改訂交渉を開始すべきであ
る。これらの点について、原子力委員会の見解を聞きたい。」



豊田正敏