Subject: EEE会議(日本核武装に関する防衛庁の研究報告:朝日新聞記事)
Date: Thu, 20 Feb 2003 23:05:18 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

今朝(2月20日)の朝日新聞朝刊1、4面に次の記事が載りました。すでにお読み
になった方も多いと存じいますが、今後の当EEE会議における議論に資するため同
記事を再録しておきます。 

因みに、類似の研究は、1960年代末から1970年代初めにかけて、核拡散防止
条約(NPT)に対する日本政府の態度決定の過程で、総理官邸(内調)や外務省で
も行われた経緯があります。
金子熊夫
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<日本核武装「利点なし」 防衛庁検討報告書判明>
    <米頼り「最良」  95年村山政権時>

 防衛庁が95年、日本の核保有の可能性について内部で検討した際の報告書の全容
が1
9日、明らかになった。報告書は、日本が核保有に踏み切った場合、日米安保の信頼
性や
周辺諸国の信用を失い、政治的・経済的なコストが大きいなどと指摘、日本の国益に
そぐ
わないと結論づけている。北朝鮮の核武装については「(米国に)容認される可能性
が低
い」などとして、日本が核武装を検討する条件にはならないとしている。同調関係者
はこ
の報告書の結論は、8年たった今も基本的に変わらないとの見方を示している。

 報告書は「大量破壊兵器の拡散問題について」と題する計31頁の文書。村山政権
だっ
た95年、前年の北朝鮮の核危機を受けて、畠山蕃事務次官(当時)の指示で同庁の
文民
と制服組のチームがまとめた。報告書が存在することは分かっていたが、全容が明ら
かに
なったのは初めて。
 95年当時、北朝鮮の核開発疑惑に対抗し、日本が核武装するのではないか、との
疑念
が周辺国などに広がったのが検討のきっかけとなった。防衛庁によると、日本の核武
装の
可能性をめぐる研究は、67〜70年にかけて「日本の核政策に関する基礎研究」と
題す
る研究がまとめられており、その際も、否定的な結論を示している。95年の研究は
2度
目で「これ以降、日本の核保有の可能性を検討した文書はない」(同庁幹部)とい
う。
 報告書によると、日本が核保有に踏み切った場合、@核不拡散条約(NPT)によ
る核
不拡散体制の破壊をリードすることになりかねないA米国の核の傘の信頼性を低下さ
せる
とともに、日米安保条約への不信の表明と理解される可能性が高いB周辺国から、日
本が
日米安保を離脱し、自主防衛に傾斜すると見られる恐れが高い―などと指摘。世界的
に重
要な市場であるアジアで軍事バランスを大幅に崩すことにもなり、周辺諸国だけでな
く欧
米にとっても深刻な問題になるとした。
 報告書はさらに、日本の狭い国土や人口の集中を考えると、他国と量的な核の均衡
が実
現しても地理的な条件が脆弱▽核保有をめぐって政治的な混乱を引き起こす▽核兵器
保有
のためのインフラ整備で膨大な政治的、経済的コストがかかる―といった理由も挙
げ、
「米国の核抑止力に頼ることが最良の選択」としている。
 報告書は北朝鮮の核保有の可能性にも触れ、「NPT体制の最大の受益者の米国に
北朝
鮮の核開発は看過できない課題で、北朝鮮の核武装が容認される可能性は低い」と指
摘。
このため、北朝鮮の核問題は安全保障上の重要課題だが、日本が核武装の可能性を議
論す
る上での条件にはなりえない、としている。

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 防衛庁が95年にまとめた報告書「大量破壊兵器の拡散問題について」の要旨は次
の通
り。
● 核保有のコスト
 日本が核保有に踏み切ることは、現在の核不拡散体制の破壊をリードすることにな
り、
日米安保条約の核心である米国の拡大抑止との関係で微妙な問題を生じかねない。よ
ほど
の合理的理由がない限り、同条約に対する不信の表明と理解される恐れがある▽周辺
国か
らは、日米が同条約の枠組みから離脱し自主防衛に傾斜する行為と見られる恐れが高
い▽
国内政治の混乱を引き起こし、核兵器管理のためのインフラ整備に、膨大な政治的・
経済
的コストを負う。
 アジアは世界的に重要なマーケット。この地域の不安定化は域内諸国だけでなく、
米国
や欧州諸国にとっても深刻な問題で、大幅なパワーバランスの変更は許容しがたい。
● 日本の選択
 日本の核保有は決して有利なものでなない。核保有にかかわる疑惑は近隣諸国との
間の
信頼醸成に不利益となる。核保有しないこと、NPT無期限延長を支持することを日
本の
見解として表明する▽核抑止の理論が有効である以上、日本は米国の核抑止力に依存
する
ことが最良の選択▽核保有国で構成される国連安保理常任理事国を(非核保有国に
も)拡
大する趣旨で国連改革を検討。
● 北朝鮮
 北朝鮮の核問題は、NPTの最大の受益者である米国には看過できない。米国に
とって
米朝交渉は失敗できない政治課題。従って、北朝鮮の核武装が容認される可能性は低
い。
北朝鮮の核は当面の安全保障政策上の重要課題だが、将来、日本が核武装の可能性を
議論
する上での条件とはなりえない。