Subject: EEE会議(Re: 「もんじゅ」判決について: 検討会長期傍聴記)
Date: Sat, 8 Mar 2003 00:49:47 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

3月5日に行われた、日本原子力学会の「もんじゅ」判決緊急討論会の傍聴
結果が、「エネルギー問題に発言する会」から送られてきましたので、ご参考
までにご披露します。
金子熊夫

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<もんじゅ判決討論会の傍聴記>

3月5日原子力学会主催の緊急討論会「もんじゅ判決と安全確保」を傍聴し
ました。 聞かれた人もいるかも知れませんが、ご参考までに。

まず経産省保安院渡邊氏、原子力安全委員会事務局仲嶺氏、JNC永田氏が
それぞれの立場で、今回の判決は技術的に飛躍があり、 おかしいと述べられた。
以上の3人の講演を聞く限り、非の打ち所がなく、いかにも裁判官がおかしいと
思われる。

しかし、それを裁判所でどう議論をし、なぜ理解してもらえなかったのか、
その点に触れられなかったのは残念であった。

そのあと、原告側の久米三四郎氏が講演されたが、それを聞いて、議論の
仕方にプロとアマの違いを感じた。

反対派は、伊方原発の提訴以来の30年のベテランで、裁判で負けるたびに
社会の動き、法規、審査基準等を徹底的に勉強したとのこと。

今回のもんじゅ裁判については、裁判長が原告、被告を交えて
ラウンドテーブル方式で議論を進めたとのことであるが、そこでは裁判長の
問いかけに被告側(国、JNC)は、ほとんど回答or反論しなかった(?)という。 
察するに、どうも建前論で終始したように思われる。

今回、問題と考えられるのは、

1.段階規制:現在の安全審査が基本設計に対して行われ、詳細設計は工認と
いうことが、一般の人には理解し難いこと。
例えば、床ライナーの厚みは、安全審査マターでなく、詳細設計(工認)マターだ
と言うことが、一般市民にどこまで理解されるか(常陽の技術課長時代に国際
技術交流等で感じたが、この方式は、日本独特で、欧米と異なる。メデイアの
報道でも、この点は良く理解されていないし、安全審査は、詳細設計ベースで
すべてのことが審査されていると思っている。学術会議の議論を聞いたときも、
大学の先生でも誤解しているのを知っている)

2.開発炉の規制法:規制法、審査基準が古すぎる、または改訂されてきていな
い。 久米氏によれば、法、あるいは審査基準(指針)がきちんとしており、
それを満たしておれば、反対派と言えども勝訴できるとは考えていないと言う。
もんじゅの場合、開発炉であるにもかかわらず、審査基準がないか、古いまま、
あるいは軽水炉の引用で、この30年来改訂されていない。
軽水炉の方はこれまでの経験を元に審査基準等が改訂、整備されてきているの
で、告訴しても勝てるとは思っていないという。

3.国側の弁護士(?)山内氏は、パネル討論で開発炉も経験豊富な実用炉も
規制法が同じだというのはおかしいので、改正するよう提言しているが、まだ
国は動こうとしないと発言している。

パネル討論で、フロアから、元東電の豊田正敏氏からPSAを取り入れれば、
市民に理解してもらえ易くなるのではないかとの発言があったが、パネラーの
鳥居氏から、PSAは説明のツールであって、納得のツールではない、よけい
混乱を招くとの反論があった。 等々。

最後に、山内弁護士の、「裁判官にさえ理解してもらえないものが、一般市民
に理解してもらえるか」とか、久米三四郎氏の「あなた達は反対派の資料を
検討したことがあるか」 (先ず敵を知れ?:孫子の兵法)と言うのは耳に痛か
った。

この討論会で受けた印象は、原子力の人は、まとまった技術的説明はうまい
が、相手との議論に入って行けない、あるいは、臨機応変に対応出来なかった
と言うことだろうか?

実は、裁判がどういう風に行われ、被告側がどう説明、反論し、対応したかの
状況が報告され、その上で判決がどう不当かの議論があるものと期待してい
たが、残念ながらそのあたりはあまり聞けなかった。
以上

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YAMAMOTO Hisashi
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 e-mail: yamamoto.hisashi@nifty.com
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