Subject: EEE会議(Re: ベトナムの原子力導入計画)
Date: Mon, 10 Mar 2003 19:19:55 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

近年ベトナムによる原子力導入計画が国際的に注目を集めております。 これについ
ては、小生も昨年秋2ヶ月間のベトナム滞在中、片手間にいろいろ調べて関連情報を
皆様にお伝えしてきました。 そのせいかどうか、最近日本国内でもベトナムに対す
る関心が大分高まってきているようです。

先月半ばには、藤家原子力委員長がベトナム政府のハイ工業大臣(原子力発電検討運
営会議議長兼任) の招待で初めて訪越されました(2月18〜21日)。同委員長
の出張報告は、原子力委員会のホームページに出ておりますので、興味のある方はご
参照ください。
(http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/teirei/siryo2003/siryo06/siryo5.pdf)

この機会に、小生の承知する範囲でベトナムの原子力関係の諸情報をとりまとめ、以
下のとおりお知らせします。 ご参考まで。 その他の関連情報をお持ちの方は、差
し支えない範囲で随時披露してください。
金子熊夫
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・ベトナムは、一昨年春の共産党大会の決定を受けて、現在、2017年ころの原発
1号機導入(運転開始)を目標に、ベトナム原子力委員会が原子力開発長期戦略をま
とめていますが、これとはパラレルに工業省を中心に、今後原発導入を行うべきかど
うかを決定するための「プレFS」を、本年末完成を目処に作業を進めています。す
でに1号機の建設候補地も2,3か所に絞られてきたようで、現在、ロシア、フラン
ス、中国、韓国、カナダ、日本等が積極的に対越働きかけを行っている模様です(こ
うした動きについては、小生が昨年秋以来3回にわたって電気新聞の時評「ウェー
ブ」欄に発表した論文等をご覧下さい)。

・この「プレFS」には、昨年より日本も国際協力の枠組みの中でベトナム側に種々
のアドバイスをしています。 日本の対越協力は、日本原子力産業会議などが中心と
なって電力、関係機関(NUPEC,原研など)や企業グループ(重電3社など)が、数
年来行っているもので、具体的には、研修生受け入れ、専門講師の派遣などを行って
いるほか、「原子力の平和利用」に関する展示会をベトナム原子力委員会との共催で
行っております。展示会はこれまでハノイなど数か所で行いましたが、この4月には
 ホーチミン市で行う予定だそうです。

・なお、ベトナムが原子力発電に着手するためには原子力の平和利用担保として、
NPT(すでに加入済み)だけでなく、CTBT(包括的核実験禁止条約)などへの署名批
准を行い、かつ地に足がついた計画を立てる必要があると思います。でないと、他国
はともかく、日本側としては、将来政府レベルで日越原子力協力協定を締結しように
も難しい状況となる惧れがあります。 もっとも、1号機導入(運転開始)が200
17年であるので、まだ時間的に余裕はありますが、折に触れてベトナム側にそのよ
う方向でアドバイスをして行くべきだと思います。 因みに、ベトナムは、東南アジ
ア非核兵器地帯条約(通称「バンコク条約、1995年調印)には加入しておりま
す。

以上