Subject: EEE会議(Re: 原子力の予防と治療)
Date: Mon, 17 Mar 2003 17:09:22 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

榎本聰明氏のご意見(3月16日)に対し、豊田正敏氏より次のようなコメントをいた
だきました。豊田氏のご所論には、極めて広範かつ重要な論点が多数含まれており、
添付ファイルの「原子力開発の進め方に関する提言」でさらに詳しく敷衍されており
ますので、これを併読された上で、何らお気づきの点や感想、反論、異論等があれ
ば、どしどしお寄せください。すべての論点でなく一部の論点だけについてでも結構
ですし、匿名(ハンドル名)でも結構です。
金子熊夫
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 3月16日の榎本氏の感想に対して、私の意見を述べたい。原子力発電所では、運転
後に設計、製作、施工の段階
でのミスが顕在化し、また経年劣化によるトラブルも避けられないので、これに対し
て適切な対応を取ることが
重要である。このためには、定期点検と診断が必要であり、それに基づく適切な治療
が要求される。問題は、社
会的視点に欠け適切な診断や治療が行われていないことである。この問題解決のため
には、原子力関係者一人
一人に社会的倫理の徹底を求める以外に方法はない。

 次に、エネルギー・セキュリティについては、わが国は100%のウランと約80%の濃
縮役務を海外に頼っている
が、ウランについては、供給国を3ヶ国以上にし、3年間の備蓄をすることで対処し、
濃縮役務については、供給先
を米国、フランス、ウレンコ及び日本原燃に分散することにより対処し得ると考え
る。榎本氏の言う「エネル
ギー・セキュリティ確保のための技術確保」は何を意味するのか理解出来ない。最
近、新増設原子力発電所の
数が減ってきており、わが国の原子炉メーカー3社が生き延びるのは難しい状況に
なってきており、それぞれの
各社が原子力技術者を抱えるのは難しくなって来ているので、他の重電機器ととも
に、1社に統合し、国際競争力
を高め原子炉機器の輸出も視野に入れるべきである。

原子力発電を円滑に進めるためには、安全性の確保を最優先に、信頼性(地元住民の
信頼確保)及び経済性の確保
が前提であって経済性が無ければ、社会に受け入れられないことを銘記すべきであ
る。経済性確保のためには、
原子力発電所だけでなく、バックエンドのコストダウンを図ることが極めて重要であ
り、0.5~1円/kWh程度は高
くなっても問題ないというようなことは、社会的に許されることではない。榎本氏が
指摘しているように、電力
経営層の中に原子力発電所のみでなく、フロントエンドからバックエント゛までの原
子燃料サイクルについて
熟知している人が皆無に近いのが問題であって、この点榎本氏に期待したのであるが
失望せざるを得ない。勿
論、電力自由化をひかえて、厳しい電力コストの低減要求に答えるのは容易ではない
ので、炭酸ガス排出施設に
炭素税を課しそれを原子力発電所などの建設費に充当するような政策をとるよう要請
すべきである。なお、
「原子力開発の進め方に対する提言」を別添ファイルで送りますので、これに対する
見解をお聞かせ願いた
い。