Subject: EEE会議(Re:ドイツの脱原発政策:グリーンピース講演会)
Date: Sun, 23 Mar 2003 03:33:57 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

先日(3月17日)、グリーンピース・ジャパン主催の講演会のご案内を差し上げ
ましたところ、これに出席されたある方(匿名希望)から、早速次のような報告の
メールをいただきました。ご参考まで。
金子熊夫
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原子力に関心を持つ者として、本日(3月22日)に行われた「ドイツに学ぶ原
発をやめる道〜コストの視点から考える」(グリーンピース・ジャパン講演会)に
参加しましたので、その状況を報告します。

○プログラム
 13:30 開演 GPJ事務局長木村雅史氏挨拶
 13:35 クリスチャン・キュッパーズ氏講演「ドイツの脱原発とエネルギーコ
スト」
 15:15 グリンピース・ドイツ スベン・テスケ氏報告「グリーンピース・エ
ナジー」
 15:45 國學院大学経済学部教授 菅井益郎氏報告「原発支援−日本政府
       と電力会社」
 16:15 質疑応答
 16:35 閉会 GPJ核問題担当 鈴木かずえ氏挨拶

○概要
(1)クリスチャン・キュッパーズ氏講演「ドイツの脱原発とエネルギーコスト」

・ドイツでは、1998年の原発の段階的廃止を決定する以前から、コスト高と
電力需要の鈍化から産業界は新規原発建設に無関心であり、電力自由化の実施に
よりさらに新規原発への関心が薄まっていた。1998年の決定は、エネルギー
コストと気候変動の視点を考慮した上での決定。
・再処理・プルサーマルは、使用済燃料の直接処分と比べ再処理の過程で10〜
20倍の廃棄物量が出る反面、再処理により得られるプルトニウムは1%程度で
ありカンやペットボトルのようなリサイクルとは違う。
・ドイツでは、使用済燃料の再処理施設への輸送は2005年6月以降禁止され
ている。使用済燃料を30年程度中間貯蔵し、その後調整施設で燃料棒を集め
パッキングし、最終処分を行うことを考えている。調整施設での作業は、再処理
施設のような廃棄物が出るような作業ではない。
・再処理をやめる理由は、@大西洋の放射能汚染、A廃棄物管理負荷(量の増
加、プルトニウム、ウラン)、B再処理時の長距離輸送、C直接処分よりも大幅
にコスト高、によるもの。
・ドイツの再処理施設を建設していたヴァッカースドルフの敷地では、建設計画
中止後BMW等の企業が入り、2003年には2006件の雇用がありこれは再
処理工場以上のものとなっている。

(2)グリンピース・ドイツ スベン・テスケ氏報告「グリーンピース・エナジー」

・原発反対というだけでなく、その解決策としてグリンピースでは再生可能エネ
ルギーについて進めている。
・ドイツではグリーン・エネルギーの共同組合として「グリーンピース・エナ
ジー」をつくり、自由化された市場において枠組みを作るキャンペーンを行っ
た。
・グリーン・エネルギーは、当初、そのコスト高と、電力会社を変更しなければ
ならないということから、特定のグループにしか関心を持たれなかった。そこで
ドイツの550000人のグリンピースのサポーターに対して郵便作戦等により
働きかけその拡大を図っている。
・顧客を得るために、そのコンセプトを明らかにすることが必要であった。コン
セプトは、@在来型(原発を除く)の3分の2に二酸化炭素削減と脱原発(1%
の太陽光発電、49%のその他再生可能エネルギー(風力、水力、太陽光、バイ
オマス)、50%(暖房など)はコージェネからまかなう)、A製品の透明性確
保のためのモニタリング(15分毎に更新されるバロメーターをインターネット
上に置くhttp://www.greenpeace-energy.de/content/barometer/)、B24時間
保証、24時間消費応じて供給される、というもの。
・このような活動は、日本での自由化の際にも参考になると考える。

(3)國學院大学経済学部教授 菅井益郎氏報告「原発支援−日本政府と電力会
社」

・原子力が安いと言い続けている政府は嘘つき。原発の「後処理」に30兆円か
かるとの報道もある。
・1960年代に電力需要が伸び、それをまかなうために電力会社にメリットを
与えようと、レートベース方式として金のかかる固定資本の整備を電力料金に
転嫁できるようにした。それにより、固定資本の整備として原子力発電建設が伸
びた。このようなことにより日本の電力料金は高い。
・電源三法により、地域丸ごと買収を行い、当該地域では原子力関連の財源に依
存する財政となっている。それに加えて、さらに長期発展交付金というものも整
備され、柏崎では年間5〜6億円である。このような買収費も原発が高くつく理
由である。
・電力受給を心配する中、エネルギーフォーラム2003年3月号では「オール
電化生活」の宣伝を、野田中部電力社長の発言「新築住宅の半分以上をオール電
化にしたい」を掲載している。これはナンセンスである。
・電力自由化に関し、毎日2003年3月7日「原発事業の分離検討」の記事で
は、『原子力発電事業・・・電力各社にとっては経営上の重荷になりつつあ
る。・・・経済産業省は、電力市場の競争構造を平等に保つためにも、原発事業
を電力会社から分離した方が合理的と判断。』とされている。これはイギリス同
様に国にあずけるということ。

○感想
・直接処分と再処理とのコスト比較が行われていたが、部分的なコストの比較の
みでトータルとしてのコスト比較や、直接処分により無駄となってしまうウラ
ン・プルトニウムをエネルギー源として利用するというメリットについては触れ
られていなかったのが残念。我が国としては、エネルギーセキュリティーの観点
から資源の有効利用は不可欠と考える。また、高速増殖炉を使用すればウランの
利用効率は飛躍的に高まると考えられ、再処理の意味合いは大きいと考える。
・再処理により廃棄物量は増えるとの一面のみとらえられ、その環境負荷につい
てまで触れられていなかったのは残念。
・グリンピースのグリーン・エナジーという共同組合のような動きが今後日本の
自由化の中で出てきて、新たな原発反対の活動となるかもしれない。

以上