Subject: EEE会議(Re: 北朝鮮の電力事情とKEDO問題)
Date: Wed, 26 Mar 2003 15:12:10 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位

標記テーマに関し、KEDOの存続問題も絡めて、いろいろな問題点を提出(3月24
日)し
ましたところ、横堀 惠一氏((財)産業創造研究所専務理事)から次のようなコメン
トを
いただきました。ご参考まで。
金子熊夫
******************************************

(この件について)私が、韓国やKEDO等の友人から聞いたところは次のよう
なものです。

>(1)北朝鮮のエネルギー電力事情(送配電網も含め)に照らせば、100万キロ
ワット軽水炉2基を供与するというKEDO構想は最初から不適切であったのではないか
(2)そもそも、この構想は1994年に訪朝し金日成と会談したカーター元大統領
の思いつきに過ぎなかったのではないか(カーター氏自身原子力の大専門家であ
る)、に関して:

韓国のエネルギー問題の第一人者であるDr. Hoesung Lee 元韓国エネルギー経済研究
院長(先の大統領選挙に出馬した李 会昌候補の実弟)の2月の太平洋エネルギー協力
会議での発言によれば、「エネルギー問題とは全く関係なしに決められた」とのこと
で、おそらく、そのような検討をしている暇もなかったのではないか、と思いまし
た。

>(4)100万キロワット軽水炉1基で北朝鮮の電力需要の何%くらいを賄えると

えていたか、に関して:

当時の状況下で、北朝鮮の経済破綻が続くと判断していたかどうかですが、これはも
う少し明るい見通しをもっていたかもしれません。W.T.Stonehill氏は「日本で20万

帯に送る電力量」としていますが、日本のように電化が進んだところと北朝鮮では、
比較が無理と思います。KEDO軽水炉2基で、稼働率80%とすると、14Twhの発電量とな
ります。IEAのKey World Energy Statisticsによれば、2000年の北朝鮮の電力消費量
は28.68Twhです。どういう推計でやったかとか、送電損失などを無視して、この二つ
を比べれば、KEDO軽水炉での供給は50%増となります。KEDOの専門家の一人は、電力
供給が倍になる、とも言っています。いずれにしても、現在の北朝鮮の電力事情で
は、大変な貢献が期待できることになります。同時に、送配電設備が老朽化していて
は、宝の持ち腐れになる、という指摘もあたっていると思います。

>(5)原子炉の建設以外に送配電網の建設・整備も当初経費に計上されていたの
か、
別途の予算だとすれば、どのくらいかかりそうなのか、に関して:

まず、前段については、多くの韓国人のエネルギー専門家から、「送配電網の建設・
整備は、KEDO事業の対象外」という理解であった、と聞いています。しかし、北朝鮮
側から韓国側に送配電網の建設・整備についての支援要請はあった、とのことで、韓
国側では韓国電力の専門家などを含む調査団による原調査や電力事情に関する基礎資
料の提供を求めたところ、とにかく金と技術を出せ、といわれてこの話はだめになっ
たとのことです(出所は、韓国エネルギー経済研究院の専門家ですが、匿名となりま
す)。従って、韓国(政府・電力関係者などを含め)では、お金が大変かかるという認

はあり、アジア金融危機もあって、無理、という判断になっている由です。

>(6)今後KEDOはどうなるのか?もし中途で放棄となれば、その後はどうなるの
か、
に関して:

私にもわかりませんが、「北朝鮮が経済発展の軌道に復帰する」という状況になれ
ば、
当然電力等のエネルギー需要が増えるわけで、W.T.Stonehill氏の指摘のようにこれ
で十分ではないことになります。つまり、そのような状況下では、KEDO軽水炉は意味
ある事業です。

私は、問題は、軽水炉を活用する前提としての送配電網の整備と思います。又、その
過程をどう考えるかです。実はこの点で指摘したいのは、ロシア、中国、韓国間等に
天然ガスパイプライン(これにも北朝鮮を通る案もありますが)構想と同様の東北アジ
アでの送配電網の連系という観点からの議論もあることです。私の前の仕事であるア
ジアエネルギー研究センターでも、電力・ガスのインフラの統合というテーマでこの
点について若干検討し、今でも関連研究が続行されているようです。この研究につい
てもっとも、関心を持っているのはロシアで、イルクーツクにあるEnergy Systems
Instituteの研究者達が熱心です。背景には、旧ソ連崩壊による電力送配電システム
の崩壊、シベリア地域のエネルギー自給度の向上などが考えられます。地域的に考え
ると発電施設の有効活用、環境負担の軽減(中国の石炭火力の稼動を抑えられる)、立
地問題の解決などの利点が考えられます。中国では、清華大学、国家電力公司(当時)
などの専門家、韓国では韓国エネルギー研究院、韓国電気研究所などの専門家が参加
しており、その他米国のNautilus Institute,USDOE,、さらにはKEDO職員も参加した
セミナーやワークショップが昨年春まで開催されていました。その中の一つの提案
は、KEDO軽水炉からの電力をロシアや中国に送って、外貨を稼いだらどうか、という
ものでした。もちろん、送配電網の整備といっても、連系については、各システム間
の整合性の確保等技術的課題を始めとする検討が必要でしょう。私自身は、日本人の
専門家の参加が少ないことが気になっています。

いずれにしても、北朝鮮における送配電網整備については、地域的な視点からの検討
等も必要でないかと思います。私もこのような議論の内容については、知識不足であ
り、ご指摘いただければありがたいと思います。


横堀 惠一
(財)産業創造研究所 専務理事
113-0034 東京都文京区湯島1−6−8
電話: 03−5689−6351; FAX: 03−5689−6350

-----Original Message-----
From: kkaneko [mailto:kkaneko@eagle.ocn.ne.jp]
Sent: Monday, March 24, 2003 4:47 PM
To: Undisclosed-Recipient:;@m-kg202p.ocn.ne.jp
Subject: EEE会議(北朝鮮核開発とKEDOの存亡)