Subject: EEE会議(イラク戦争と日本の立場)
Date: Thu, 27 Mar 2003 11:25:49 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

イラク戦争が熾烈さの度合いを増しております。私事ながら、かつて35,6年前ベ
トナム戦争の最盛期にサイゴンの日本大使館に在勤し、猛烈な市街戦に巻き込まれ危
うく命を失いかけた体験を持つ小生としては、連日テレビでリアルタイムで伝えられ
るイラク戦争の困難さが痛いほど分かる気がいたします。 だからといって、この戦
争の日本にとっての意義を忘れることは出来ません(小生自身の考えはすでにいくつ
かのメールで明らかにしております)。

今朝配信された小泉内閣メールマガジン( 第88号、2003/03/27)から、小泉総理と
外交評論家・岡崎久彦氏(元サウジアラビア大使)の意見をご紹介します。ご参考ま
で。
金子熊夫
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[小泉総理のメッセージ]

● 早期の解決を望む

 小泉純一郎です。

 米国などによるイラクへの武力行使が続いています。イラク問題に対する
日本政府の考えを改めてお話したいと思います。

 これまで何度も申し上げてきましたが、この問題の核心は、イラクが自ら
保有する大量破壊兵器、生物兵器、化学兵器を廃棄しようとしないこと、国
連の査察に無条件、無制限に協力しようとしないところにあります。

 もしも危険な大量破壊兵器が危険な独裁者の手に渡ったら、どのような危
険な目にあうか。それはアメリカ国民だけではありません、日本も他人事
(ひとごと)ではありません。危険な兵器を危険な独裁者に渡したら、私た
ちは大きな危険に直面するということをすべての人がいま感じていると思い
ます。これをどのように防ぐか、これは全世界の関心事です。

 私は、平和的解決がもっとも望ましい、そういう努力を最後まで続けるべ
きだ、と関係国に訴えてまいりましたが、残念ながらそれに至りませんでし
た。武力の圧力をかけないとイラクは協力してこなかった、しかも、かけ続
けても十分な協力をしてこなかったのです。

 ブッシュ大統領は、これはイラクの武装解除を求めるものであり、イラク
国民に対する攻撃ではない、イラク国民に自由を与える、将来豊かな生活を
築き上げるような作戦だと言っております。私もそうだと思います。日本政
府としても、このブッシュ大統領の方針を支持してまいります。

 日本の戦後の発展の基礎は日米同盟関係と国際協調体制です。日本は第二
次世界大戦の敗戦の反省から、二度と国際社会から孤立してはならないとの
考えでこの方針を堅持してきました。そして、今後もこの方針に変わりはあ
りません。

 日本は米国の立場を支持しておりますが、日本は一切武力行使いたしませ
ん。戦闘行為にも参加しません。この武力行使が速やかに終結して、できる
かぎり犠牲を少なくするような努力をしつつ、今後日本としてイラク国民の
ために何ができるか、イラクの復興のために何が必要か、周辺地域に対する
人道支援をどう進めるか、イスラム諸国との理解と協力をどのように深めて
いくか、そういう点については国際社会と協調しながら、日本は国際社会の
一員としての責任を果たしていかなければならないと思っております。

 日本に対してもいつ脅威が降りかかってくるか分かりません。日本自身の
対応で不十分な場合は、日米同盟関係の強い信頼のきずなを基盤としながら、
日本国民の安全確保に十分な努力をしていかなければならないと思っており
ます。

 アメリカは、日本への攻撃はアメリカへの攻撃とみなすとはっきり言って
いる国です。日本への攻撃は自国への攻撃だと言っている国はアメリカだけ
です。このことが日本を攻撃しようと思ういかなる国に対しても大きな抑止
力になっているということを日本国民は忘れてはならないと思います。

 今回、一時的にイラクに対して全世界の協調体制がとれなかったとしても、
将来必ず多くの国が世界の平和と安定と繁栄のために国際協調の必要性を痛
感すると思います。日本はそのために日米同盟の重要性と国際協調の重要性、
この両立を図っていくという方針に今後も変わりはありません。

 私は、戦闘が一刻も早く終結することを望みます。そして、イラクが一日
も早く再建され、人々が自由で豊かな社会の中で暮らしていけるよう、イラ
クの復興のためにできる限りの支援をしていく考えです。


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[特別寄稿]

● 小泉総理発言に思う(元在サウジアラビア大使 岡崎久彦)

 小泉総理のイラク攻撃支持表明は近来の快挙であった。

 小泉総理は3月20日の記者会見で、「アメリカは、日本への攻撃は自国
への攻撃と見なすとはっきり明言しているただ一つの国だ。そのこと自体、
日本を攻撃しようと思う国に対する抑止力となっていることを忘れてはなら
ない」と言い、翌21日のブッシュ大統領との電話会談で、ブッシュの開戦
演説について、「貴大統領は、・・自国の犠牲を覚悟で決断されたのであり、
これを支持するのは当然のことである。昨夜も深夜まで国会で質疑を行い、
国民の理解を求めた。米国は日本のかけがえのない同盟国であり、日本も米
国の信頼するに足る同盟国でありたいと思っている」と述べている。

 戦後半世紀、ここまではっきりと日米同盟の重要性の認識を示した総理が
いただろうか。かつて鈴木総理が、日米安保条約は軍事同盟でないという趣
旨の発言をして日米信頼関係を傷つけた事を想い出すと隔世の感がある。

 たしかにワイド・ショーのレベルでは、いまだにイラク攻撃の是非、安保
理決議なしの行動の正当性、そして何よりも戦争すること自体の是非ばかり
論じられ、それが世論調査には影響しているようである。

 しかし、これだけの大事件に際して、責任ある政府が判断の基準とすべき
は、こんな評論家的第三者的な善悪是非論ではない。それはいかにして国民
の安全と繁栄を維持、増進するかである。

 当面日本にとっての関心事は北朝鮮問題であるが、それだけが問題なので
はない。今後日本が直面するすべての政治、軍事、経済の危機の際、日本に
とって死活的に重要なのは日米同盟である。資源の乏しい島国日本にとって、
七つの海を支配するアングロ・アメリカン世界との協調の重要性は明治開国
以来一貫して変わらない。それを見失ったための破滅的な時期はあった。し
かしその後半世紀を経て、日本政府は初めて、国家安全保障の長期的大戦略
を堂々と打ち出したのである。それを敢えてした小泉発言を有り難く思う。