Subject: EEE会議(Re: 東海再処理工場のプルトニウム計量誤差問題)
Date: Wed, 2 Apr 2003 00:46:45 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿
 
東海再処理工場におけるプルトニウム計量誤差問題に関し、本日当局より次のような
連絡を受けましたので、お伝えします。ご参考まで。
金子熊夫
**********************************************

東海再処理施設における計量管理の改善状況につきまして、新聞報道がなされている
ようですが、本日(4月1日)に文部科学省より原子力委員会の定例会(公開)に報
告がありましたので、その内容についてご報告いたします。
内容は、国・IAEA・JNCの三者から構成されるワーキンググループにおいて受払間差
異(SRD)の要因について更に精査が行われた結果、IAEAの確認を経て、206kgとなっ
ていたSRDの累積値は最終的な修正後に59kgになったというものです。修正後の値が
妥当であることは、ワーキンググループの作業を踏まえ、IAEAによって確認されてい
ます。
なお、本件については、国及びIAEAにより、封じ込め/監視手段の適用や施設への査
察、更には設計情報の検認や未申告活動探知のための補完的アクセス等の各種保障措
置が適用されており、これらの活動を通じて、IAEAも、転用の恐れはないと判断して
います。

本報告に対し、原子力委員会は、本件は改善に時間がかかりすぎていることが問題で
あること、六ヶ所再処理工場でこのようなことが起こらないよう・起こったときには
迅速に対処する必要があること、原子炉におけるPu生成量に係る計算コードの誤差に
ついて電力関係者に再検討をお願いする必要があるのではないかということ、当事者
として信頼を得る努力・問題意識を常に持つことが必要であること、について指摘し
ております。

犬塚

<以下、原子力委員会への報告内容>

核燃料サイクル開発機構 東海再処理施設における計量管理の改善状況−IAEAに対す
る計量管理報告の修正について−

1.趣 旨
 核燃料サイクル開発機構(JNC)東海再処理施設において発生していたプルトニウ
ム(Pu)の累積の受払間差異(SRD)※に関しては、国際原子力機関(IAEA)と協力
しつつ、SRDの要因の更なる精査を行い、過去の計量管理報告を適正な値にするため
の作業を進めてきており、その作業の状況を本年1月28日に原子力委員会に報告し
公表したところである。
 今般、IAEAの確認・評価を経て、SRDに関して、最終的に過去の計量管理報告の修
正後の数値が確定した。

※東海再処理施設の受払間差異(SRD:Shipper/Receiver Difference)
原子力発電所から払い出されたPu量の推計値(発電所側において燃焼コードにより計
算)から再処理施設で溶解後に実際の計量を行ったPu量(入量計量)を差し引いた
値。 昭和52年の操業開始から平成14年9月末現在の累積値で206kgに達していたもの
であり、国・IAEA・JNCの三者から構成されるワーキンググループにおいて調査・検
討を実施してきたところ、主な要因として以下のとおり判明していた。
@払出側(発電所側)の要因
・原子炉におけるPu生成量に係る計算コードによる誤差
A受入側(再処理施設側)の要因
・入量計量前のせん断・溶解過程から廃棄される燃料被覆管(ハル)等に付着したPu
量の過小評価
・発電所側の払出から再処理施設の受入(入量計量)までの貯蔵等の間のPuの放射性
崩壊による核的損耗
・清澄工程のフィルター洗浄液における不溶解残渣(スラッジ)等の一部として、入
量計量槽を経ずに別ルートで高レベル放射性廃液貯槽に流入していたPuの存在

2.修正後の受払間差異について
 国・IAEA・JNCの三者から構成されるワーキンググループにおいてSRDの要因につい
て更に精査を行ってきた結果、以下のとおり、IAEAの確認を経て、206kgとなってい
たSRDの累積値は最終的な修正後に59kgになった。

@入量計量前のせん断・溶解過程から廃棄される燃料被覆管(ハル)等に付着したPu
量の追加:12kg
〔説明〕JNCと米国ロスアラモス国立研究所との共同研究により、中性子線を測定す
ることによりハル等に付着したPu量を確認する装置(ハルモニター)を開発してお
り、当該装置を用いて測定・評価を実施。この評価の結果、ハル等に付着していたPu
量として12kgが追加された。
A発電所側の払出から再処理施設の受入(入量計量)までの貯蔵等の間のPuの放射性
崩壊により核的損耗したPu量の追加:29kg
〔説明〕平成6年以降は、核的損耗をSRDから除くこととしているが、それ以前の核
的損耗量は評価されていなかったもの。平成6年以前の核的損耗分としては29kgであ
ることが確認されており、核的損耗として計上することとした。
B入量計量槽を経ずに、清澄工程のフィルター洗浄液における不溶解残渣(スラッ
ジ)等の一部として高レベル放射性廃液貯槽に流入していたPu量の特定:106kg
〔説明〕これまでの分析技術の改善を通じて、高レベル放射性廃液貯槽中のPu量が
94kgであることが判明した。さらに、既に高レベル放射性廃液貯槽からガラス固化処
理施設(TVF)に移送されていたPu量について新たに評価を行った結果、17kgである
ことが確認された。
以上より、これまで高レベル放射性廃液貯槽に流入したPu量は、ガラス固化分を含
め、計110kg(94kg+17kg(小数点以下は四捨五入))となる。この中には、入量計
量槽を経た上で抽出工程から流入したPuと、入量計量槽を経ずに清澄工程から直接流
入したPuとが存在するが、評価の結果、前者については4kgとなり、今回のSRDの要因
となっていた後者については106kgとなることが確認された。

以上により、累積206kgとなっていたSRDのうち、計147kg(12kg+29kg+106kg)分の
要因が確認されたことになり、修正後の累積SRDは59kgになった

3.修正後の数値の評価
 これまでのワーキンググループの作業により、東海再処理施設において計量管理上
SRDの主な要因と考えられるすべての課題について、検証が加えられた。
 その作業結果に基づいた修正後の累積SRD(59kg:処理Pu全量の約0.9%)は、関連
する測定や計算の誤差に照らし妥当な値であると考えられる。  
 また、これらの修正後の値が妥当であることは、ワーキンググループの作業を踏ま
え、IAEAによって確認されている。
 なお、本件については、国及びIAEAにより、封じ込め/監視手段の適用や施設への
査察、更には設計情報の検認や未申告活動探知のための補完的アクセス等の各種保障
措置が適用されており、これらの活動を通じて、IAEAも、転用の恐れはないと判断し
ている。

4.まとめ
 IAEAと協力して進めた一連の作業により、計量管理上の課題であった東海再処理施
設におけるSRDに関しては、上記2.の要因について改善措置が講じられるととも
に、過去の計量管理報告について最終的に適正な修正ができたものと考えられる。
 しかしながら、修正まで長期間を要したことは反省すべきであり、今回の経験を踏
まえ、今後このような問題が生じた場合は、より迅速な対応に努めることとしたい。
 また、引き続き、東海再処理施設における保障措置技術の向上に努めるとともに、
同施設での経験及び知見を六ヶ所再処理施設における保障措置に活かしていくことと
する。