Subject: EEE会議(日本の核燃料サイクル計画:「ふげん」の死)
Date: Wed, 2 Apr 2003 16:11:55 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

新型転換炉原型炉「ふげん」が、3月28日、その24年の生命を終えました。孝行
息子然と最後まで奮闘したものの、武運つたなく天寿を全うすることは叶いませんで
した。たまたまその日小生は、日本原子力学会春大会での招待講演のため九州・佐世
保にいてこの「訃報」を聞きました。1970〜80年代の日米原子力交渉の過程で
「ふげん」の存在がどれほど役立ったか、当時の交渉担当者として誠に感慨無量なも
のがあります。問題は、しかし、「ふげん」だけではありません。後に残った「もん
じゅ」には是非とも天寿を全うしてもらいたいという気持ちは決して小生だけではあ
りますまい。京都新聞の関連記事をどうぞ。
金子熊夫
******************************************************


(京都新聞、2003年4月1日“凡語”)

 釈迦三尊像のうち両脇の二菩薩が倒れてしまっては、まん中に残るお釈迦さまはさ
ぞ心
細かろう。国宝や重文ではなく原子炉の話だ。
 
 倒れたのは、核燃料サイクル開発機構の新型転換炉原型炉「ふげん」と、高速増殖
炉原
型炉「もんじゅ」。共に慈悲の普賢菩薩、知恵の文殊菩薩にちなんで命名された。取
り残
されたお釈迦さまとは、日本の核燃料政策そのものだ。

 「ふげん」は3月末、実用化できぬまま誕生から二十四年で運転を終えた。二千七
百億
円の赤字を残し、解体には二十五年の歳月と一千億円が必要という。「もんじゅ」は
一九
九五年のナトリウム漏れ事故で停止のまま。ことし一月には名古屋高裁から国の設置
許可
を無効とする判決が出た。
 
 使用済み燃料からプルトニウムを取り出し再び燃やす核燃料サイクルは、夢のエネ

ギー供給システムだ。プルトニウムの混合燃料を使う二つの原子炉は、その夢を実証
する
はずだった。何が欠けていたのか。

 事故隠しや、ずさん検査など原子炉の周辺には問題が多すぎる。だが、それよりも
シス
テム実現が技術的に可能かどうかが、怪しく思われる。人間の知恵はまだ浅い。

 普賢菩薩には増益、文殊菩薩には物事を深く判断する徳がそなわるという。失敗し
た原
子炉の名称に、苦笑してはおられまい。進むか引くか。国は、原子力政策の根本的見
直し
を迫られている。