Subject: EEE会議(Re: 日本は「エネルギー資源小国」か?)
Date: Fri, 4 Apr 2003 02:44:47 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

標記テーマに関し、横堀恵一氏から次のような有益なメールをいただきました。ご参
考まで。
この問題は、国際比較という点では、思ったより難しい問題のようです。
金子熊夫
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仰るように、議論がかみ合わない感じがしますが、まずいくつかの事実は次の通りと
思います。

国産の石油と天然ガスが国内消費(石油の場合は輸入された石油製品も消費に含まれ
ます)に占める比率(%)をIEA統計で2000年について調べると次の通りです。

    日本  ドイツ フランス  イタリア スペイン
石油   0.3   3.0   2.1    5.3    0.4
天然ガス 3.3   22.0   4.2    23.5    1.0

以上の数字について、若干コメントすれば、ドイツの天然ガスの国産は、北海のガス
田によると思います。フランスとイタリアの石油、天然ガスについては、国策会社の
エルフやENIの基盤になった、アキテーヌ地方やポー河流域のものが主であると思い
ます。日本の新潟などと同じように、国内消費が大きくなったり、資源枯渇などで役
割が小さくなったものです。これは、昔は日本は銅も金も銀もたくさん産出していた
という指摘は事実であっても、今はそうではない、という理由です。

次に、日本の石炭生産はなくなりましたが、BP統計(2002)では、無煙炭・瀝青炭の埋
蔵量は、2001年末で、773百万トンで、米、印、中、豪州、ドイツ等の大石炭国から
見れば3桁から2桁も違い、わずかですが、英国(1000百万トン)の7割ぐらいと見れ
ば、少なくはない、ともいえます。しかし、エネルギー自給度向上には役立たないで
しょう。

Bauxiteについては、日本のアルミ製錬業は、日本軽金属の蒲原工場しか残っていま
せんので、今の輸入量は少ないはずです(Pempel氏が指摘したBauxiteの国産が少な
いことは事実です)。これは、ご指摘の通り、電力集約型であるために、電気料金の
高騰によって、1980年代初めに他の工場が閉鎖されたためです(蒲原工場は、自前の
水力発電なので、残ったそうです)。又、韓国の浦項(Pohan)製鐵所の製品は日本に
も輸入されています。Kinmonth氏の鉄とアルミについてのお話は、今の状況とは違い
ます。

ここから先は若干の意見です。

日本は、石油供給先の多様化をしたかどうか、ということですが、これまでのとこ
ろ、日本の政府も企業も努力したけれども成果がなかなかあがっていないということ
だと思います。石油であればなんでも良い、というわけではなく、硫黄分などが少な
く、又、ガソリン等の得率の大きく取れる軽質の原油で、価格(輸送費等も含めた)の
安いもので多量に安定的に供給されるものなどの条件を満たすのは、日本にとって、
中東原油しかなかった、ということだと思います。メキシコや中国などの原油が中東
原油にとって代わらなかったのは、このためであると思います。又、ヨーロッパのよ
うに、アメリカの反対を押し切って、パイプラインを輸出して、ソ連からガスの大量
輸入をやるという芸当も日本はできなかった、と思います。誤解を恐れずに言えば、
中東依存度が高いことに経済合理性がある、と思います。

輸送部門や家計部門でのエネルギー効率性を高めるのにはどうすればよいか、という
のは、日本に限らず、多くの先進諸国(途上国においても)の問題です。IEAの研究で
もこの部門のエネルギー消費は、価格を上げても、それに応じて減らない(価格弾力
性が低い)事が指摘されています。日本に限らず、政府やNGOが消費者啓蒙に努力して
いるけれども成果があがらない分野です。窓ガラスを二重にするとか、断熱材を入れ
るなどについては、建築基準などで対応できますが、実際に消費者がそれを選択する
かは別の問題です。よその国の例も学んで、良いところ取りをしていく小さな努力の
積み重ねしかない、ように思います。

先生の仰る「中東石油への依存度を下げようとせず、風力や太陽光利用に十分な補助
政策を取らず、省エネも単に口先だけの日本人に対する批判も強い」ということを、
単純に「外圧」としか見ないで、まじめに考えるしかないと思います。

横堀 惠一 拝