Subject: EEE会議(Re: 「もんじゅ」問題について)
Date: Fri, 4 Apr 2003 03:14:06 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

標記に関し豊田正敏氏からさらに次のようなメールをいただきました。これは、核燃
料サイクル開発機構の伊藤和元氏(敦賀本部高速増殖炉もんじゅ建設所)のご意見
(3月21日)に対する豊田氏のコメント(3月26日)を補足するものだと思いま
す。ご参考まで。
金子熊夫
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伊藤様
 詳細なコメント有り難うございます。今後、最高裁に対して十分な対応を採られる
よう期待しております。
 原子力安全委員会が、考えている原子力安全の「物差し」と一般国民や裁判官が安
心できると考えている
「物差し」が違うことの認識に乏しい点が問題であって、社会的に許容されるリスク
レベルについての議論は
避けて通れないのではないかと考えております。
 単一故障の考え方はお説の通りでしょうが、事故で仮定した事象に関連する機器、
装置の不動作まで含めた発
生確率が、10-4/年であれば、関連する機器、装置の不動作まで含めた解析をすべき
であリ、それに対する安全対
策を採るべきであると考えます。 私は、これまで軽水炉及び六ヶ所再処理工場で
は、このような考えでやって
きたつもりです。 私には、何故、関連する機器、装置を基本的安全機能のみに限定
する必要があるのか理解出
来ません。
二次系漏洩事故については、漏れの発生確率は10-2/年程度であり、漏洩検出器が作
動しないか、またはドレ
ン弁が開かないかの確率も10-2/年程度であれば、綜合した発生確率は10-4/年程度と
考えられるので、ドレン出
来ない場合について解析すべきです。従って、ナトリウムとコンクリートが直接接触
するような事態も考えら
れなくはないと考えます。
蒸気発生器伝熱管破損事故の場合にも、漏洩検出器が作動しないとか、急速ブロー出
来ないとか、それらの作
動に遅れがあった場合、または圧力開放板の検出器のみが作動した場合には、高温ラ
プチャーの起こる可能性
があるとするならば、それらの綜合発生確率は10-4/年程度と考えられるので、この
ような場合を考慮した解
析をする必要があると考えます。
問題は、事故解析の目的が、事象の発生によっても、炉心の溶融あるいは著しい損傷
に至ることなく、かつ、周
辺への放射性物質の放出をある限度内にとどめ得ることを確認することであることに
ついて、裁判官に十分な
理解が得られていない点にあると考えます。
伝熱管の破損現象については、繰り返しになりますが、実機条件を模擬した実験によ
り確認したとしても、実プ
ラントの運転条件とは大きく隔たりがあり、安全の確認が出来たとはいえないと考え
ます。このことは、軽水炉
で何回も経験しているところであり、例えば、SCCについて原子力学会誌1993年12月
号を参照されたい。
 このような予期出来ないトラブルが発生する可能性があるため、多重防護とか、多
重防壁の考えを採用してい
るし、プラントの技術開発に当たって、実験炉、原型炉、実証炉、実用炉のステップ
を踏む必要があるのであっ
て、貴殿の主張しておられるように、実験で全てが実証できるのであれば、上述のよ
うなことは不要と考えま
す。この点十分反省されたい。
 なお、判決とは関係ありませんが、蒸気発生器伝熱管破損事故についての地元住民
への説明は、トラブル発生
前の現時点に、判り易く、明確に説明し、理解を得ておくべきであって、もし、説明
が不十分であったり、伝熱管の
破損は、最大でも4本であると説明して、実際には、十数本で破損が起こるようなこ
とがあれば、「もんじゅ」だ
けでなく高速増殖炉は挫折せざるを得ないであろう。独りよがりの安全を地元住民に
押し付けるのではなく、如
何にして、地元住民に安心して貰えるかについて一層の努力をする必要があると考え
ます。以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp