Subject: EEE会議(Re:原子力開発の進め方:豊田氏のコメントに対して)
Date: Sat, 5 Apr 2003 08:50:20 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿
 
豊田正敏氏の累次のコメントに対し、柴山哲男氏から再度補足的コメントをいた
だきました。ご参考まで。一層多くの方々からのご発言を期待しています。
(金子)

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 私のメールに対する豊田氏のコメントの内、直接処分に関する部分に対して初歩的
とのご指摘を頂きましたが、初歩的なりに次の通り補足説明させて頂きます。なお、
高速増殖炉に関する部分については基本的に同意致します。

1 直接処分が永久処分を意味することは確かですが、米国のように将来のプルトニ
ウム利用の可能性を残している場合もあるので、敢えて確認した次第です。永久処分
の場合、将来のプルトニウム利用の可能性を完全に排除することになるので、永久直
接処分に踏み切るためには、プルトニウム利用に代替する他のエネルギー源の確保が
必要であると思います。豊田氏の御指摘の海水からのウラン採取、トリウムサイクル
はその候補となり得る可能性はありますが、前者は実験室的に成功した段階、後者は
試設計の段階であり、経済性の確証を含めた実用化の見通しが立たない限り、プルト
ニウム利用を完全に排除することはリスクが多すぎると考えます。最終的にはこれら
代替手段の経済性と高速増殖炉の経済性の比較で有利な方を選択することになると思
います。高速増殖炉の経済性は第一義的には現在の軽水炉から円滑に移行するために
軽水炉とほぼ同等であることが要求されますが、究極的には他の代替手段との比較に
なる可能性もあります。

2 処分場の所要面積については御指摘の通り、共通部分もあり、設計により、面積
の増加は処分体の容積比に対してはかなり抑えられる可能性はあります。しかし、冷
却期間中の保管は別に考える必要があり、例えば現在六ヶ所で再処理を計画している
800トン/年を50年間保管するとすれば、総保管量は40,000トンになり、
初期はプールまたは乾式保管、後期は固化する場合は多分固化体の乾式保管と保管形
態は異なるもののかなりの量になります。現在六ヶ所のプール保管が3,000ト
ン、むつ市で計画中の中間貯蔵施設が計6,000トンに比べれば6〜10倍以上、
更に発生使用済み燃料全体を処分するとすればこの2〜3倍になります。安全上は問
題の少ない施設であり不可能とは言えませんが楽な数字ではないと思います。処分場
の一部を冷却保管と共用にすることも考えられますが、トータルとして見ていく必要
があります。

3 核不拡散、保障措置の問題に関してはこれがテロ組織を対象としたものではな
く、当該国を対象にしたものであることを考慮する必要があります。日本の核武装の
可否についてはEEE会議でも討議されていますが、当面核兵器開発を行う可能性は
少ないとしても国家として開発する気になれば潜在的可能性を有しているだけに何ら
かの対応は必要であると考えます。固化前の監視は技術的には特に問題ないと思いま
すが、当該燃料体が確実に固化されたことの検認、固化体保管中が確実に実施されて
いることの検認、処分体が処分場の所定位置に確実に設置されたことの検認、設置後
埋設までの間に移動のないことの検認、更に埋設後再発掘の行われないことの検認な
どカメラ監視だけで良いのか、固化以降は非破壊検査等による内容物の検認まで要求
されるのかどうか等検討課題は多いと思います。なお、この辺については先行してい
るスエーデン等の例が参考になるかと思いますが、この辺の事情を御存知の方がおら
れましたら情報を提供して頂ければと思います。

4 海外で実施が検討されているからといっても米国は一種の長期中間貯蔵であり、
且つ核保有国ですが、非核保有国のスエーデン等の場合は絶対量が少ないという事情
もあります。ドイツについては参考になり得ますが、原子力政策自体が未だ流動的な
感もあります。以前の私のメールでも直接処分に関してもっと積極的な検討を行うよ
う提案をしていますが、海外で実施しているからと良いということではなく、日本と
して導入する場合にはどうなるか、経済性も含めて具体的な検討を行って初めて成否
が問われるのではないかと考えます。

柴 山 哲 男
tetuo shibayama
shibayama@mvh.biglobe.ne.jp