Subject: EEE会議(北朝鮮の8,000本の使用済み核燃料は?)
Date: Fri, 25 Apr 2003 01:18:20 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

北朝鮮核問題等を話し合う米朝中3者協議が昨日から北京で始まりましたが、当面最
も懸念されるのは寧辺の核再処理施設の動向です。 この点に関してはこれまで米国
サイドからいろいろな情報が流れており、真相ははっきりしませんが、我が国の原子
力の専門家はこの問題をどう見ているのか、実は小生も尋ねてみたいと思っていまし
た。その矢先、核燃料サイクル開発機構(JNC)の河田東海夫氏(経営企画本部企
画部 研究主席)からタイミングよく次のようなメールをいただきました。ご参考ま
で。
金子熊夫

*****************************************************


昨日から、米中朝協議が始まりました。

直前にあった北朝鮮の再処理は「最終段階」発言が会議開催の雲行きを怪しくしまし
たが、協議が開催されたのは何よりです。
ところで、北朝鮮が保有している8,000本の使用済燃料の意味するところを、技
術的視点で整理すると以下のようになります。

北朝鮮の5MWe炉はコールダーホール型炉ですが、英国の設計をそのまま踏襲して
いるとすれば、燃料のウラン金属部分は、直径約3cm、長さ約1mで、1チャンネ
ルに6本装荷されます(したがって炉心高さは6mくらい)。
燃料8,000本が1炉心分とすると、炉心は約1,300チャンネルから成ること
になります。なお、本家の英国のコールダーホール炉は42MWeで、約1,700
チャンネルから成りますが、最小臨界は406チャンネルで達成できます。

一体の燃料は金属ウラン約13キロですから、8,000本ということは、ウラン金
属総量で約100トンということになります。

ところで、兵器級のPu(Pu240<7%)を狙うのであれば、燃焼度は900M
Wd/t以下に抑える必要があり、この場合、ウラン中へのPu蓄積量は約0.05
%と見積もられます。したがって、この場合は、100トン×0.0005 = 約
50kgのPuが回収できるということになります。

スーパー級(Pu240<3%)を狙う場合、燃焼度は400MWd/t以下で、P
u蓄積量は約0.03%と見積もられますので、回収できるPuは約30kgという
ことになります。

北朝鮮のミサイルの搭載能力は最大1トンと見られているようですが、原爆をこれ以
下の重量に仕上げようとすると、やはりスーパー級Puをということになると思いま
す。

米国のいろいろな機関から、30kg前後の見積もりが報告されていますが、おおむ
ね上記のような評価によるものと思われます。

なお、北朝鮮は、昨年12月に20トンのTBPを中国から入手しましたが、1トン
のウランの処理には約50kgのTBPを必要とします。したがって、20トンのT
BPで、計算上は約400トンのウランの処理が可能ということになります。

以上

**************************
核燃料サイクル開発機構
経営企画本部 企画部
研究主席
河田 東海夫
TEL:029-282-1122(代表)
FAX:029-282-4915
E-Mail: kawata@hq.jnc.go.jp
〒319-1184
茨城県那珂郡東海村村松4-49
*************************