Subject: EEE会議(Re:日本の原子力開発の進め方について)
Date: Sat, 26 Apr 2003 00:12:52 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

標記テーマに関する中神靖雄氏のご意見(4月25日)に対し、再び豊田正敏氏から次
のようなコメントが寄せられました。ご参考まで。
金子熊夫

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 JNCの中神氏よりのコメントを拝見し、当事者としてご苦労されていることと拝察
します。問題は、高速増
殖炉及び高度再処理技術の開発が思うように進まず、何時になったら実用化出来るか
判らない点にあると思い
ます。
先ず、高速増殖炉の経済性については、熱交換器と一次ポンプの合体程度では、一次
冷却系及び二次冷却系が
なく、原子炉容器内に内部循環ポンプを収めているA-BWRに比べて系統が複雑でプラ
ントも大きくなり、経済
的に比肩し得るのか疑問に思っております。

かって、ATRの経済性について動燃は、当初、軽水炉並になると主張し、次に、石炭
火力程度にはなると訂正
し、結局は周知の通り中断となったことを思い起こして欲しい。

「2030年頃の実用化を目指す」といっておられるが、実用化までの技術開発スケ
ジュールを要素技術開発、実
証炉、実用炉の各段階毎に詳細に作り、そのスケジュールに沿って計画通りに確実に
実施する必要があると考
えますが、JNCとして責任を持って実現を約束できる実施スケジュールを示して頂き
たい。私には、経済性の
実用化の問題の他に、「もんじゅ」のあの程度のトラブルで運転開始までに10年以上
かかっていること、プル
トニウム含有量が多く、原子炉特性が軽水炉とは全く異なること及び化学的に活性な
ナトリウムを取り扱うこ
となどの理由から、立地にはかなりの困難が伴うことを考慮すると、40~50年後にも
実用化の見通しは不透明
と考えざるを得ません。

 再処理、MOX燃料成型加工も同様にコストダウンを図ることが不可欠であります
が、燃焼度の増加とともに
再処理費が飛躍的に高くなるピューレックス法ではなく、弗化物揮発法や熔融塩電解
法などの乾式の高度再処
理技術によらざるを得ないと考えますが、どのような方式を選択し、どのような技術
開発体制で、どのような
実施スケジュールにより、何時までに実用化出来るとお考えでしょうか。実験室程度
の実験により、「大幅な
経済性の向上の見通しが得られている」といえるのでしょうか。問題は、実規模の実
証をどのような技術開発
体制で何時までに実施するかであって、その実用化は、JNCが考えておられるほど容
易なものではなく、米、
仏、ロシアなどとの積極的な国際協力によって進めたとしても、40~50年後の実用化
はかなり難しいと考えて
おります。具体的な技術開発体制及び実施スケジュールを示して頂きたい。また、実
用化のための再処理費及
びMOX燃料成型加工費のコストの目標値はいくらとお考えでしょうか。

 なお、高速増殖炉の温度係数は、「負」であるといっておられるが、100万kW級で
も「負」の温度係数にするこ
とは可能なのでしょうか。

「船頭多くして責任者不在」であることが、プロジェクトが計画どおり進まず、成果
が得られない最も大きな
理由であると考えられます。これは、原子力行政、素人の官僚の指示やJNCが特殊法
人であることに大きな原
因があると考えますが、JNCの組織、体制にも問題がないとはいえないのではないで
しょうか。フランスのCEA
や旧国鉄の新幹線の技術開発体制を参考に、もっと技術開発のスピードを上げ、成果
が得られるような責任体
制の整備を考えるべきではないでしょうか。また、JNCには高度な学術論文を書くこ
とには熱心であるが、実
用化の技術開発には不向きな人が多いように見受けられます。製作図面を書いたり読
んだり出来る人は殆どい
ないのではないかと思われます。自己完結型ではなく、もっと民間の活力が活用でき
るよう資金面でも配慮す
べきではないでしょうか。以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp