各位殿
 
近時、北朝鮮の核開発問題とか、日本自身の核開発疑惑あるいは核武装論など、かなりきな臭い話題が内外のマスコミを賑わしており、当EEE会議でも盛んに議論されております。かく申す小生自身も「外交評論家」と称して、この問題でしばしば際どい発言をしておりますが、もとより技術的素養を欠く者として、常に内心忸怩、隔靴掻痒の感がありました。しかるところ、偶々ある高名な原子力の専門家から、次のような適切かつ厳しいご意見をいただきました。お立場上実名は伏せ、ハンドルネーム「中性子」氏ということで、全文ご披露します。ご参考まで。
金子熊夫
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  最近の「北鮮の核武装」関係のいろいろなニュースや解説を眺めていて、気になる
ことがありますので、金子さんのご注意を喚起しておきたい思います。

 最近の議論では、技術的な背景があいまいで、マスコミもしくは軍事評論家と呼ば
れる人達の論議では核兵器というものの定義や種類、範囲が明確でないものが多い。
いわゆる、わかったような一般論が横行していていて、ひょっとしたら意識的に相手
や一般大衆が誤解することを狙っているのではないかとさえ思えるものが多いことで
す。傾向としてはどうみても北の技術能力を過大評価しているとしか思えないことが
多いのです。

 臨界安全や安全解析のかなり高度の原子核工学の知識や経験をもっている技術者で
あれば、そうした議論の怪しさとか誤解はすぐに見抜けるはずですが、それを具体的
に説明して一般の方の誤解を解くためにに説明することで生じる、余計な雑音や別の
誤解を考えると口を閉ざすほうが楽だとなって、皆さん黙っておられるようです。専
門家同士では,何かの機会にこの種の話題がでて、なんとなくお互いの認識が共通し
ていることを確かめあって安心するという場面には,何回か遭遇しましたが、いわゆ
る暗号や符牒を使った話であり、多分一般の方に通じていないはずです。JCO事故
での処理を眺めて、日本の現場管理のずさんさにあきれる一方で、事態の推移を眺め
つつパニックも起こさず、淡々と臨界解除の作業をやった技術能力への評価は、日本
国内ではさほどではないけれど、国外ではかなり違うようです。国内ではわれわれの
ような専門家が核兵器のことをこっそり議論したとなれば、それこそマスコミのいい
餌食になるので,知らん振りをしてはいますが。

 私としては、マスコミをふくみ政治家や評論家の皆さんが、この辺どこまでわかっ
ておられる気になるわけです。どうすれば良い対応ができるのか、うまい案が見つか
りませんが、いわゆる軍事通とか情報通の話には意図的なウソが見抜かれないで残っ
ている可能性がかなりありますから、国として決定的な判断をする必要があるときは
、ちゃんとした複数の本当の専門家の判断を求めなさいといっておくべきでしょうね。
 
     「中性子」