Subject: EEE会議(Re: 軍事評論家諸氏に物申す!)
Date: Sat, 10 May 2003 17:08:47 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>

各位殿

昨日(5月9日)付けの標記「中性子」氏のご意見に対し、吉田康彦氏(大阪経済法科
大学教授)から次のようなコメントをいただきました。ご参考まで。 なお、吉田氏
は2ヶ月近い闘病生活を克服し、このほど論壇復帰されたものです。Welcome back!
金子熊夫
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北朝鮮の核開発をめぐる「軍事評論家」ならびに「専門家」のコメントに関しては、

月9日付の「中性子」氏のご指摘の通りです。

北朝鮮の核疑惑は、小生のIAEA勤務中の1989年に浮上、以来、この問題には当初
から関与していますが、当時のウィーンの査察専門家の分析情報では、「北の核関連
技術はまだ後進国の域だ。核の軍事転用を試みたとしてもきわめて初期段階の筈だ。
米国と交渉するために関心を引き寄せようとして疑惑を造り出しているのだろう」と
いうことで、懐疑的でした。従って小生は、メディアの問い合わせには控えめのコメ
ントをしていたのですが、日本国内では、今にも北が核保有しそうなワシントン情報
が独り歩きし、北朝鮮脅威論が一斉に火を噴きました。

その後も小生は一貫して否定的、懐疑的で、現時点でも「北朝鮮は核保有はしていな
い。北京での核保有発言はブッシュ政権を交渉のテーブルに就けさせたいための
bluff (脅し)だろう。プルトニウム利用の核弾頭は核爆発実験が不可欠で、実験な
しに保有には至らない。北は実験をしていない」と分析し、論評しています。昨今も
新聞各紙、テレビ局からコメントを求められますが、ほとんどボツにされ、「ノドン
・ミサイルに搭載されて、いまにも日本に飛んでくる」というような脅威論を吹聴す
る自称専門家のコメントだけが掲載、放映される傾向にあります。

問題は、「中性子氏」が指摘するように、軍事評論家に専門知識が欠如しているとい
うより、ワシントン発の北朝鮮脅威論にメディアが振り回されている、その根底に
は、拉致報道でも明らかな通り、北朝鮮に対する不信感、特に金正日体制に対する日
本国民の嫌悪と憎悪があると思われます。ご存知の通り、小生、数年前から北朝鮮国
内の民衆に対する人道支援を呼びかけ、ほとんど毎年のように訪朝していますが、そ
れだけで産経新聞、文春など右派系メディアに、「親朝派」「媚朝派」知識人などと
呼ばれて批判されています。朝鮮民族に対する蔑視、敵視は今始まったことではあり
ませんが、昨今はその対象が「北」に集中しているわけです。

北のNPT脱退、大量破壊兵器の拡散は阻止しなければなりませんし、北の「瀬戸際外
交」は大いに批判し、多国間協議を通しての問題解決の道をさぐる必要はあります
が、北の一挙手一投足に感情論で反発することは慎むべきだと思います。
以上。

吉田康彦(元IAEA広報部長、大阪経済法科大学教授)