Subject: EEE会議(北朝鮮の核開発の現状)
Date: Sun, 11 May 2003 21:40:16 +0900
From: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>

各位殿

北朝鮮の核開発の現状、あるいは核開発能力の実情をどう見るかについては、いろい
ろ異なった見方がありますが、北朝鮮の事情に詳しい吉田康彦氏から次のような見方
を提示していただきました。ご参考まで。
金子熊夫

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(1)北朝鮮は天然ウランを産しますが、ウラン濃縮技術は未開拓、国内に濃縮施設
もなく、(米偵察衛星でもそれらしい施設は存在せず)、このため1994年の「米
朝枠組み合意」では、凍結の対象にはなりませんでした。(だから、ウラン濃縮をは
じめても「枠組み合意」違反ではない、というのが北の言い分なのです。)

(2)その後、パキスタンから濃縮技術を導入、遠心分離器を調達した証拠を米国が
パキスタン軍部から入手、昨年10月3−5日の訪朝の際、ケリー国務次官補がこの
コピーを突きつけて追及したわけです。北朝鮮側は、その時はノーコメント、一日お
いて姜錫柱第一外務次官が「われわれは核よりも強力な兵器を保有する権利を有して
いる」と開き直り、これがウラン濃縮計画を是認したものと受け取られたのです。

(3)米国は偵察衛星と無人偵察機による観測結果を詳しく分析した結果、「ウラン
濃縮施設と特定できる施設は存在しない。パキスタンから入手した遠心分離器は未稼
働のようだ」と発表しています。

(4)これに対し、『現代コリア』グループの西岡力氏らは、国内でウラン濃縮を
やっていなくても、ミサイル技術提供と引き換えに、パキスタンから高濃縮ウランを
入手、あるいは直接、核弾頭の完成品を入手した形跡がある(亡命工作員の証言)と
主張しています。小生の知人の田岡俊次氏(朝日新聞)も、「パキスタンに限らず、
ロシアから秘密裡に購入した可能性もある」と推測しています。そうなるとキリがな
いわけで、「北は体制存続のためには何をするかわからない、何でもする」という不
信感ですべてを判断することになりかねないわけです。

(5)小生はこの見方には賛同しません。朝鮮民族はたいへん誇り高く、自尊心が強
い。特に北朝鮮の政治理念は「主体思想」、政治、経済、国防の自立、自尊、自衛を
標榜しています。兵器旧高濃縮ウランは保有しておらず、米国が推測している通り、
核弾頭1−2個分のプルトニウムを保有しているだけだと思います。今後は使用済み
燃料8000本からのプルトニウム再処理を急いで、自力で核実験を実施、正式に保
有宣言をするだろうと思います。核保有してどうするのか、日米を核攻撃する意図は
さらさらなく、(すれば直ちに自滅であることを熟知しています)、体制を認知さ
せ、経済制裁を解除させ、支援を引き出すことにあります。北が核とミサイルで恫喝
するというやり方には小生も否定的ですが、ブッシュ政権の対決政策が北をここまで
追い込んでしまったとも言えるわけです。以上。