Subject: EEE会議(Re:日本の原子力開発の進め方: 高温ガス炉問題)
Date: Mon, 12 May 2003 12:28:07 +0900
From: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>

各位殿

標記テーマに関し、大森良太氏(文部科学省・科学技術政策研究所主任研究官)から
も、次のようなメールをいただきました。ご参考まで。
金子熊夫
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 本EEE会議で高温ガス炉が話題となっていますが、もんじゅ、再処理の先行きが
不透明な中、日本は将来型原子力開発の間口を広げ、高温ガス炉をはじめとする革新
炉研究開発に取り組んでいくべきだと思います(文科省が出している「科学技術動
向」の今月号にペーパーを発表します)。

 高温ガス炉は、これまでの議論で出ましたように、1)固有安全性が高いこと、2)冷
却材出口温度が高く、水素製造をはじめとする核熱の様々な利用が可能であること、
3)エネルギー市場環境の変化への柔軟な対応が可能な中小型モジュール炉に有望な設
計がいくつか提案されていることなどから、近年、再評価されています。

例えば、
@第4世代原子力システム国際フォーラムが、国際共同研究開発の対象として選定し
た6つの第4世代原子力システムの内、ガス冷却炉が2つ(超高温ガス炉、ガス冷却
増 殖炉)選ばれている。
A海外では短中期的な高温ガス炉の商用炉導入計画が進行している。南アフリカの
ESCOM社が開発しているPBMRや、米ロが中心となって開発し米国への導入やロシアに
おける解体核プルトニウムの処分の観点から期待されているGTMHRなどのモジュール
型高温ガス炉は、2010年以前の運転開始を目指したプロジェクトが進行中である。
Bフランスは、実証炉スーパーフェニックスの廃炉措置を決定し、この炉型の実用化
を2050年以降に先送りする一方、ガス冷却炉の高い安全性と経済性に注目し、革新炉
開発をこれに集中して行う方針を打ち出した。長期的には超高温ガス炉や高温ガス増
殖炉の実用化を目指している。

原研のHTTRは熱利用研究炉として許可(平成2年)が下りていると聞いていま
す。すなわち、いまのところ、発電炉としての位置付けにはなっていないわけです。
高温ガス炉は一般に、ワンススルー型になりますので、この点で国策との整合性が難
しいのでしょうか。
ただし、高温ガス炉によるクリーンな大規模水素製造は、発電のみに限定されてきた
原子力エネルギーの用途を拡大し、エネルギーシステム全体におけるその役割を大き
く変える可能性があるわけですから、これも核燃料サイクルの完結と同じくらい魅力
的な話でしょう。DOEの2004年度予算要求ではHydrogenFuelイニシアチブの一環とし
てNuclear Hydrogenプロジェクトが新規提案されました。わが国でも、高温ガス炉を
はじめとする原子炉による水素製造研究開発プロジェクトの発足が望まれます。ま
た、HTTRに続く原型炉や小型高効率発電炉などの開発に取り組むべきだと思いま
す。



大森良太
文部科学省 科学技術政策研究所 主任研究官