Subject: EEE会議(Re: 北朝鮮の核開発能力は?)
Date: Tue, 13 May 2003 09:23:03 +0900
From: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>

各位殿

標記のテーマに関する吉田康彦氏のコメント(5月10日)に対し、ある「匿名希
望」氏から、次のようなメールをいただきました。
ご参考まで。他の方々のコメントや情報提供を歓迎します。
金子熊夫

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 吉田氏の考えは、例によってかなり北朝鮮に対して甘すぎる、逆にいえば、同国の
実力や真意をかなり軽視しすぎていると思う。確かに北朝鮮はプルトニューム爆弾は
まだ完成させていないかもしれないが、ウラニューム爆弾は相当なレベルに達してい
る筈であり、決して油断できない。パキスタンの場合も、1998年にインドが第2
回目の核実験を実施したとき、日本では、パキスタンが直ぐ続いて核実験を行うこと
はないだろう、それだけの実力はパキスタンには到底ないから、という見方が圧倒的
に多かったが、実際には同国はインドの核実験から僅か3週間後に実験を行い、見事
に成功させた。それは、中国から1970年代からウラン濃縮に関する技術供与・指
導を十分受けていたからであろう。
 そのパキスタンから北朝鮮は、1990年代半ば以降、スカッド・ミサイル技術
(旧ソ連から供与)と交換にウラン爆弾製造技術を導入していたと考えられるから、
既に相当なレベルに達していると推察するのが自然である。直ぐ役立ちもしないよう
ないい加減な技術と交換に、虎の子のミサイル技術を輸出するはずがない。北朝鮮の
実力を過小評価するべきではないと思う。   以上

「匿名希望」


----- Original Message -----
From: Kumao KANEKO
Sent: Sunday, May 11, 2003 9:40 PM
Subject: EEE会議(北朝鮮の核開発の現状)


各位殿

北朝鮮の核開発の現状、あるいは核開発能力の実情をどう見るかについては、いろ
いろ異なった見方がありますが、北朝鮮の事情に詳しい吉田康彦氏から次のような見
方を提示していただきました。ご参考まで。
金子熊夫

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(1)北朝鮮は天然ウランを産しますが、ウラン濃縮技術は未開拓、国内に濃縮施

もなく、(米偵察衛星でもそれらしい施設は存在せず)、このため1994年の
「米
朝枠組み合意」では、凍結の対象にはなりませんでした。(だから、ウラン濃縮を

じめても「枠組み合意」違反ではない、というのが北の言い分なのです。)

(2)その後、パキスタンから濃縮技術を導入、遠心分離器を調達した証拠を米国

パキスタン軍部から入手、昨年10月3−5日の訪朝の際、ケリー国務次官補がこ

コピーを突きつけて追及したわけです。北朝鮮側は、その時はノーコメント、一日

いて姜錫柱第一外務次官が「われわれは核よりも強力な兵器を保有する権利を有し

いる」と開き直り、これがウラン濃縮計画を是認したものと受け取られたのです。

(3)米国は偵察衛星と無人偵察機による観測結果を詳しく分析した結果、「ウラ

濃縮施設と特定できる施設は存在しない。パキスタンから入手した遠心分離器は未

働のようだ」と発表しています。

(4)これに対し、『現代コリア』グループの西岡力氏らは、国内でウラン濃縮を
やっていなくても、ミサイル技術提供と引き換えに、パキスタンから高濃縮ウラン

入手、あるいは直接、核弾頭の完成品を入手した形跡がある(亡命工作員の証言)

主張しています。小生の知人の田岡俊次氏(朝日新聞)も、「パキスタンに限ら
ず、
ロシアから秘密裡に購入した可能性もある」と推測しています。そうなるとキリが

いわけで、「北は体制存続のためには何をするかわからない、何でもする」という

信感ですべてを判断することになりかねないわけです。

(5)小生はこの見方には賛同しません。朝鮮民族はたいへん誇り高く、自尊心が

い。特に北朝鮮の政治理念は「主体思想」、政治、経済、国防の自立、自尊、自衛

標榜しています。兵器旧高濃縮ウランは保有しておらず、米国が推測している通
り、
核弾頭1−2個分のプルトニウムを保有しているだけだと思います。今後は使用済

燃料8000本からのプルトニウム再処理を急いで、自力で核実験を実施、正式に

有宣言をするだろうと思います。核保有してどうするのか、日米を核攻撃する意図

さらさらなく、(すれば直ちに自滅であることを熟知しています)、体制を認知さ
せ、経済制裁を解除させ、支援を引き出すことにあります。北が核とミサイルで恫

するというやり方には小生も否定的ですが、ブッシュ政権の対決政策が北をここま

追い込んでしまったとも言えるわけです。以上。