送信者: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>
件名 : EEE会議(Re:北朝鮮の核開発能力をどう見るか?:吉田氏の反論)
日時 : 2003年5月15日 17:11

各位殿

北朝鮮の核開発能力等に関する吉田康彦氏のコメントに対する「匿名希望」氏の批判
(5月13日 09:23)に対し、吉田氏から次のような再反論のメールをいただきました。
1994年の米朝枠組み合意成立の当時の北朝鮮幹部の言辞など、中々興味ある情報が紹
介されています。ご参考まで。
金子熊夫

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「匿名」氏に以下反論します。吉田。

(1)「例によって」北朝鮮に「甘すぎる」といわれますが、むしろ「辛い」ので
す。ご指摘の通り、北朝鮮の核開発能力を「低く」見ているのです。これは私だけで
はなく、ケネス・キノネス氏はじめ米国務省関係者、旧ソ連技術者、IAEA関係者らも
同意見です。せいぜい核弾頭1−2個分のプルトニウムを保有している程度というの
が米政府の公式見解です。何のために核開発しているのかを見極めることで見方が分
かれます。クリントン政権当時は、米国を交渉のテーブルに就けさせ、取引のカード
として疑惑を振り回すだけで相手は譲歩してくれたのですが、ブッシュ政権になっ
て、疑惑では動かなくなったので、核保有まで行かざるを得ない判断しているとうの
が現時点の状況と思われます。

(2)ウラニウム爆弾は相当なレベルに達している「筈であり」という推測の根拠は
何ですか。パキスタンから入手したというのも推測に過ぎないではありませんか。そ
の可能性が皆無ではないことは私も(4)で認めているではありませんか。「パキス
タンがインドにすぐ続いて核実験をすることはないだろう」という推測は誰がしてい
たのか知りませんが、不正確です。インドが1974年、最初の「核爆発装置」を地
下実験した直後から故ブット首相が「草を食んでもインドに追いつけ」とハッパをか
けて核開発を命じており、結局自力で開発できず、オランダ、ベルギーから濃縮ウラ
ンと施設を密輸入して核弾頭を製造、1986年の段階で、すでにウラン型核弾頭4
−6個を保有しているというのが米CIAの推測でした。むしろインドを追い越してい
たのです。

(3)私の判断の根拠のひとつは、1994年11月、「米朝枠組み合意」の交渉に
当たった姜錫柱第一外務次官が平壌空港に降り立ったとき、党と政府の幹部が総出で
彼を出迎え、「これでわれわれは生き延びられる。疑惑を造るだけでクリントン政権
は折れてくる」と幹部が語っているのを直接、聞いたことです。私はその場にいまし
た。そして米朝国交正常化実現の一歩手前までこぎつけた時、ブッシュが逆転勝利
し、計算が狂ってしまったのです。金正日は自棄酒を飲んで八つ当たりしていたそう
です。(某朝鮮総連幹部の証言)。ブッシュ政権は動いてこない。「こうなったら、
核実験でもして核保有を証明するほかない」と判断、目下、再処理、核実験の準備に
まい進していることは確実です。ウラン型核弾頭を保有しているなら、とっくに実験
して実力を誇示しているでしょう。ご存知の通り、北朝鮮は不可侵条約(公約)の締
結、経済制裁解除、テロ支援国家認定除去などを要求しています。隠して持っていて
もブッシュ政権が取引に応じてくれないなら何の効果もないのです。いずれ事実が証
明するでしょう。