送信者: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>
件名 : EEE会議(ポスト・イラク戦争:自爆テロの連鎖)
日時 : 2003年5月16日 9:48

各位殿

イラク戦争が終わったと思ったら(もっとも戦闘終結宣言があっただけで、戦争自体
が正式に終結したのかどうか判然としませんが)、今度はチェチェンやサウジアラビ
アの首都リヤドなどで米国人を標的とする自爆テロや無差別殺傷を目的としたテロが
相次いで発生しています。こうした状況にブッシュ政権がどう対応して行くか、同盟
国日本としても無関心ではいられません。頻発するテロ事件の背景について、次の分
析をご参考までに。
金子熊夫

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◆チェチェン、サウジそして再びチェチェン―自爆テロの連鎖◆
(2003/05/16)

 ロシア南部チェチェン共和国ズナメンスコにある地区行政府に対する自爆テ
ロ、サウジアラビアの首都リヤドで発生した米国人を標的とする自爆テロと5
月12日以来、無差別殺傷を目的としたテロが世界で頻発しているが、5月1
4日には再びチェチェンのグデルメスで女性が自爆テロを行い、この女性を含
む14人が死亡、45人が重軽傷を負った。

 先のズナメンスコの自爆テロでは、これまでに59人の死亡が確認されてい
る。このため、リヤド到着の数時間前に自爆テロに見舞われ、事件現場を視察
して「テロ撲滅」を訴えた後モスクワを訪問したパウエル米国務長官は5月1
4日、ロシア側のイワノフ外相、プーチン大統領と相次いで会談、自爆テロに
対する対抗策協議などに追われた。

 だが、ブッシュ米大統領が5月13日、遊説先のインディアナ州における演
説で、サウジのテロが「対テロ戦争が続行中であることを思い起こさせた」と
し、「米国は殺人犯たちを見つけだす。彼らに米国の正義の意味を思い知らせ
る」と指摘したのを裏付けるかのように、米国務省は5月14日、マレーシア
在住もしくは旅行中の米国人に対し、過激集団による攻撃の恐れがあると厳重
注意。

 チェチェンのテロの背景は独立派の仕業ということしか分かっていないが、
サウジの自爆テロは国際テロ組織アルカイダの関与が極めて濃厚。専門家筋の
間では、イラク戦争後、テロだけが欧米を震撼させることができるとして、テ
ロ実行者を世界中から募る上からも、今後もさらに各地でテロを繰り返す恐れ
があるとの見方が支配的。

 米同時多発テロで一敗地にまみれた米国は、アフガニスタン報復空爆、イラ
ク戦争と国家を相手にした通常戦争では圧倒的な強みを見せ続けている。しか
し、結果的に敵の意図する日時、場所、手段に相対するしかない「非対称の戦
争」では、情報収集能力と実際の自衛策のタイムラグの問題で、テロを事前に
阻止するまでには至っていない。ブッシュ大統領の先制攻撃論が空転している
といえる。(了)

国際情報ファイル・深層海流主幹 石川純一(文責)
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