送信者: "金子 熊夫" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>
件名 : EEE会議(Re:北朝鮮核問題:日米韓の対応ぶり)
日時 : 2003年5月17日 14:42

各位殿

北朝鮮核問題を巡って、盧武鉉政権発足以来ギクシャクしていた米韓関係は、今般の
ブッシュ・盧初会談(5月15日)で一応なんとか修復されたように見えますが、両
国の姿勢には依然かなり隔たりがあるようです。とくに、北朝鮮に核開発計画を断念
させるための「追加的措置」(経済制裁発動を含む)の問題は韓国だけでなく日本政
府にとっても難題であり、来週の日米首脳会談(5月23日)を控えて、今後日米韓
3国の連携関係をいかに調整、強化して行くか注目されるところです。次の分析は、
そのような現状を概観する上で参考になると思います。
金子熊夫

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◆米韓、北朝鮮核で最低限の協調姿勢◆
                                (2003/05/17)

 北朝鮮の核開発問題に関し、ブッシュ米政権の態度は極めて明確だ。クリン
トン前政権が1994年の米朝枠組み合意締結で犯した過ちを絶対繰り返さな
いということである。重油提供や軽水炉建設で支援を受けながら、北朝鮮は密
かに核開発を続けたのだから極めて当然だ。

 ブッシュ大統領と盧武鉉・韓国大統領は5月15日、ホワイトハウスで初の
首脳会談を開催、北朝鮮の核に関して「国際的協力を基盤として、平和的な手
段を通じて、北朝鮮核兵器計画の完全で検証可能で不可逆的な除去のために努
力していく」ことをうたった共同声明を発表。核カードの行使をこれ以上許さ
ないとの最低限の協調姿勢を示した。

 にもかかわらず、北朝鮮の朝鮮中央通信は米韓首脳会談に先立つ5月12日
、「朝鮮半島非核化を破綻させた米国の犯罪行為を告発する」との論評を公表
。1991年に韓国と北朝鮮が共同で出し1992年に発効した朝鮮半島非核
化宣言が効力を失ったと一方的に決めつけた。

 盧大統領は、北朝鮮の朝鮮半島非核化宣言失効発言について、「柔軟に対応
できるカードを持たねばならない」とだけ、サンフランシスコに向かう専用
機の機中で語ったが、米韓共同声明は、「朝鮮半島での平和と安定に対する脅
威が増大する場合には『追加的措置の検討』がなされることに留意する」とし
ており、、対北朝鮮制裁発動の可能性がこれまで以上に高まった。

 いずれにせよ、盧大統領はブッシュ大統領との会談で、北朝鮮が核開発を完
全放棄しない限り、金正日体制存続の保障や無原則な経済支援付与など、北朝
鮮が企てている「見返り」要求で、米国が全く譲歩する考えがないことはっき
りと示された。それ最低線としての「外交努力」である。

 北朝鮮の核は、情緒的に流れる南北間の民族統一や文化交流とは全然違う次
元の問題。盧大統領は、金大中前大統領の轍を踏んではなるまい。(了)

         石川純一
         (国際情報ファイル・深層海流)