送信者: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>
件名 : EEE会議(Re: 日本核武装論:Puの臨界量など)
日時 : 2003年5月24日 20:55

各位殿

標記テーマに関する向山武彦氏のご意見(神田啓治氏の講演メモ批判。5/24
07:26)に対し、澤田哲生氏から次のようなコメントをいただきました。ご参考ま
で。
因みに、プルトニウムの場合は1-2kgで核爆弾が1発できるという説は、数年前に米
国のトム・コクラン(天然資源防衛基金=NRDC=の主任研究員)やポール・レーベン
ソール(プルトニウム管理協会=PCI=の前会長)などから小生も直接聞いたことがあり
ます。たまたまトム・コクランは、5月26-29日御殿場で開かれる「アトムズ・フォー
・ピース50周年」国際会議(ローレンス・リバーモア研究所主催)に出席のため来
日するので、その際再確認できると思います。
金子熊夫

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向山さんのSQに関するご指摘はもっともかと思います。これは質問を発した私に齟
齬の原因がありました。
さて、“「高性能Pu爆弾の最小臨界質量」等というものは定義できない(のではない
でしょうか?)”というご指摘と補足も大変参考になりました。
質問の背景には、一般的に定義されます“最小臨界質量”→“臨界量”に関するわた
しのいわば教条主義的な理解がありました。原子力辞典(日刊工業新聞)によれば、
【臨界量】特定の幾何学的配置と材料構成のもとで系を臨界にするのに必要な核分裂
物質の最小質量。球体の金属の場合、235Uは約20kg、233Uは約9kg、239Puは約5kgで
ある。・・・
とありますが、これは静的な体系の話でありますね。これが認識の背景にありまし
た。
確かに、Implosion(爆縮)過程というダイナミックスが加わり、実効増倍係数が所要
の値を達成できれば、爆発的な急速核分裂連鎖が達成できるのは仰るとおり物理的に
至極自明ですね。
したがって、急速連鎖反応過程の結果得ようとする破壊力の大小を問わなければ、爆
縮技術の進歩如何でkeffが約2を達成できる限り、幾ら少量であっても‘核爆発’と
見なせる訳ですね。

「SQに関しては米国のトム・コクランやレーベンソールなどがPuの場合には1kgに
するべきだとの議論をしていた記憶があります。」は非常に印象深いものがあります
が、これは彼らは1kg以下で有為な核爆弾を製造する技術的見通しを持っていると解
釈できるのでしょうか。また、万一関連文献などございましたらご教示願えれば幸い
です。

澤田哲生

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