送信者: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>
件名 : EEE会議(Re:日本核武装論など:Puの臨界量)
日時 : 2003年5月25日 7:38

各位殿

標記テーマに関し、近藤駿介氏(東京大学大学院教授)からも、次のような貴重なコ
メントをいただきました。ご参考まで。
なお、近藤氏ご指摘の通り、昨年6月福田官房長官や安倍副官房長官の「日本核武
装」発言をきっかけに当EEE会議でも約2ヶ月にわたって集中的に議論を行いまし
た。これら一連のメールは目下ホームページでデータベース化しつつあり、近い将来
検索閲覧が可能になる見通しです。
−KK
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核兵器に必要な核分裂性物質の最小質量に関しては以前にも本会議で議論されたよう
に記憶します。その際には、ご発言の方々はDaivid Bodansky著”Nuclear Energy”
の14章はお読みになっておられるのかなと思っていたのですが、このような議論が行
きつ戻りつするのでしたら、例えばこの本の記述を参照しながら論を進めるようにし
たら、よろしいと思います。この章はNRDCの面々の発言も踏まえて記載されています
が、物理学者ですから、それなりの整理をしながらのわかりやすい記載になっていま
す。論点の核兵器の最小質量は実現される核分裂性物質の密度の2乗に逆比例します
が、この密度は爆縮機構を工夫してどこまで高い爆縮速度を実現できるかに掛ってい
ます。ですから議論の対象となっている量はこの技術の動向如何ということで、向山
氏のおっしゃるところが適切です。つまり、この量は、外部の爆薬レンズの大きさと
ウラン、ベリリウムの反射体、そして肝心の核分裂性物質の多層構造を技術の限界を
踏まえて何を指導原理に設計するかで変化するものであり、当然のことながら、核分
裂性物質量が小さい爆弾は放出エネルギーが小さくなりますから、設計する兵器の使
用目的にも依存しているはずです。なお、最近、小型戦術核兵器の研究を英米で始め
るとのニュースがありましたから、この量がkgを割る設計がそのうち登場するかも
しれません。

近藤駿介

----- Original Message -----
From: Kumao KANEKO
To: Undisclosed-Recipient:;
Sent: Saturday, May 24, 2003 8:55 PM
Subject: EEE会議(Re: 日本核武装論:Puの臨界量など)