送信者: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>
件名 : EEE会議(Re:日本核武装論: Pu爆弾の臨界量について)
日時 : 2003年5月29日 14:43

各位殿

標記テーマに関する各氏のご意見に対し、吉岡律夫氏(鞄月ナ 電力社会システム
社)からも、次のようなメールをいただきました。
ご参考まで。
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神田啓治氏の講演のメモ(東工大澤田澤田哲生氏作成)に関する向山武彦氏のコメント
を考えてみました。
正確には「高性能Pu爆弾の最小臨界質量」というのは自己矛盾した言葉で、向山さん

言われる通りです。ただし、

>Pu爆弾は爆縮を用いてPuの塊の実効中性子増倍係数が約2になった時に、中性子を
>発生させて連鎖反応を開始し、爆発力を高めるようです。

ということですから、神田先生が言われる「最小臨界量」とは「実効中性子増倍係数
Kが約2の時
の臨界量」という意味ではないでしょうか?。
勿論、炉物理的な正確さでは「最小臨界量」とは「実効中性子増倍係数Kが1の時の
Pu量」
という定義ですので、K=1と、K=2では、例えば量は倍以上とか違ってきます。
しかし神田先生が、炉物理が専門でない方に講演されたなら、「実効中性子増倍係数
Kが約2の時
の臨界量」を意味されたのかも知れないと思いました。

なお、「高性能原爆」のみが問題で、「低性能原爆」ならOK、という議論は聞いた
ことがあり
ませんが、軍事的には「都市を破壊する高性能原爆」と「たかだか1街区を破壊する
か、Puを
撒き散らす低性能原爆」とは決定的に違います。そんな話題だったのでしょうか?

>「IAEAが言う8kg」は臨界質量ではありません。
>保障措置上の有意量(Significant Quantity: SQ)です。

これも公式には向山さんの言われる通りですが、Puを爆発させるのに必要な臨界量
はいくら位か
計算してみました。
球形の金属Puの臨界量はおよそ17Kgで、周囲にU238の反射体をつけると多分、
半分くらいで
8Kg程度とおもいます。
そうするとSQとは、低性能原爆に必要なPu量に当りそうです。
(先に書いたように高性能Pu原爆には、2倍以上必要かとおもいます)
SQには当然、数値を決めた背景があるはずで、もう少し勉強してみます。

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 吉岡 律夫
 鞄月ナ 電力社会システム社 情報制御事業推進室