送信者: "Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp>
件名 : EEE会議(Re:日本核武装論を糺す)
日時 : 2003年5月31日 0:56

各位殿

一昨日ご高覧に供しました標記拙稿(「日本核武装論を糺す」)に対し、坂倉敏雅氏
より次のようなコメントをいただきました。ご参考まで。
なお、このコメントに対するコメントも歓迎いたします。
金子熊夫

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三つの論点について記します。
まず最初に、この国の核武装の形として、公然たる核武装か、隠蔽されたそれかとい
う点です。海外あるいは国内の論者の論調は、明示的ではありませんが公然たる核武
装を当然視しているようです。核武装の国家的意思の前には、国際原子力機関の査察
は、そのグレードを問わず、ほとんど意味をなさないようです。核武装の可能性は国
際機関の監視をもって封じられているというのは、原子力コミュニテイの仮説でしょ
う。

第二にこの国が核武装から何を得られるものがあるかという点については、さまざま
な議論にもかかわらず、説得力ある論証をした議論は無いようです。
実際、現在のブッシュ外交を脅威と受け止める北朝鮮の暴発が懸念の重大要素です
が、その状況を緩和する日本の外交こそが今求められていると見ています。イラク戦
争で対米支持を明確にしたのが正しい選択であったわけではなく、米国からは一歩距
離を置いた日本外交のあり方が追求されるべきであったと考えています。

第三に、このような論調がこの国の核武装への世論誘導の形で意図的に流布されてい
るならば、この国の原子力関係者はそれに対してどう考えるかを、明らかにする責任
するがあるでしょう。核技術を商業的利用に限定するという約束の下に、多大な資金
の使用を承認されてきたこの国の核科学者や技術者は、核爆発装置の開発、製造現場
に動員される、あるいは協力を求められたとき、国家の意思に対してどう向き合おう
とするのか、知りたいところです。

   坂倉敏雅