EEE会議(北朝鮮の生物兵器)              
2003年6月8日

各位殿

北朝鮮の核兵器開発が相変わらず騒がれていますが、実はそれ以上に心配なのは生物
兵器だという点で専門家の意見は以前から一致しています。その割には日本国内では
この問題に関する警戒心が低すぎるように見えますが、次のような情報を皆様はどう
お考えでしょうか? 今朝小生のPCに送られてきたメルマガの一部です。ご参考ま
で。
--KK

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バイオ・テロ 〜 近未来シミュレーション

      シッポをつかまれずに局所的なテロを行える生物兵器は
      ある意味では核兵器より怖い。
                                                                      
(2003.06.08)
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■1.これは天然痘ではないか!■

     K国の貨客船がN市港に入港するという、そのちょうど1週
    間前。K国は核開発を公言しており、その資金や部品が日本か
    らこの貨客船によって密かに運び出されているのではないか、
    との疑惑から、日本政府は現行法の規定を総動員して監視にあ
    たるとの方針を固め、税関による積み荷全品に対するエックス
    線検査、国交省による船舶の安全検査、さらには厚生労働省に
    よる新型肺炎SARSの検査まで行う事を決定した。

     県警本部長の石田は、多くの関係先との調整を行いながら、
    1500人の警官を動員するという警備計画を立てていた。そ
    こに緊急の電話がかかってきた。市内のいくつかの病院に、全
    身に水疱ができた子供や、高熱を発した学生らが次々と運び込
    まれているという。

     保健所からの情報では、全身に水疱のできた子供を診察した
    老医師から「これは天然痘ではないか」という所見がもたらさ
    れたという。その老医師は「水疱にしてはかなりひどいな」と
    思いながら診察しているうちに、70年代にアフリカで診療を
    していた時に見た天然痘患者を思い出した由。

     天然痘は非常に感染力の強い天然痘ウィルスにより、人間か
    ら人間へと空気感染する。1980年に世界保険機構(WHO)が
    天然痘撲滅宣言を出しているが、今頃患者が続出したとしたら、
    テロとしか考えられない。K国の貨客船の入港に関係したテロ
    か、、、石田はぞっとした。

■2.爆発的な感染力■

     なにしろ20年以上も前に絶滅したとされる天然痘である。
    保健所では天然痘かどうかの判別もできない。急遽、東京・新
    宿にある国立感染症研究所から専門家に来て貰った。その専門
    家は、子供の水疱を採取し、すぐに東京に引き返して検査に回
    した。半日ほどで、結論が出たとの電話があった。まぎれもな
    い天然痘だった。

     石田はどのような対策を打つべきか、相談するためにその専
    門家にふたたび県警本部まで来て貰い、打ち合わせを始めた。
    坂井というその専門家はまだ30代半ばの背の高い青年だった。
    日本では数少ないバイオ・テロに関する研究者で、米国陸軍感
    染症医学研究所に2年間、留学していたという。坂井はすぐに
    説明を始めた。

         天然痘ウィルスは爆発的な感染力を持っています。1972
        年に旧ユーゴスラビアで広まった時は、メッカ巡礼で天然
        痘に感染した一人が帰国後、9週間で175人に伝染させ、
        35人が死亡しました。当時のユーゴ政府は国民2千万人
        にワクチンを緊急接種し、患者と接触した1万人を2週間
        隔離。隣国が国境を封鎖する騒ぎとなりました。

         米国では2001年に国土安全保障研究所などが中心となっ
        て、「ダーク・ウィンター(暗い冬)」と命名したシミュ
        レーションを行いました。対イラク戦を検討している最中
        に、オクラホマ・シティで天然痘が発生、10日目で発症
        者2千人、17日目では全米25州、海外15カ国で合計
        30万人が発症し、10万人が死亡すると推定されました。

■3.完全犯罪■

     坂井のアドバイスを受けて、石田は県警をあげて、感染ルー
    トの特定に乗り出した。天然痘の潜伏期間は7日から17日。
    すべての患者について、この期間の行動を洗い出した。すると、
    患者全員が12日前にN市スタジアムで行われたJリーグのサ
    ッカー試合を見ていたことが分かった。さらにその時の座席番
    号を調べると、患者たちは共通してスタジアムのある一角に座
    っていたことが判明した。

         それだ。それに違いありません。テロの実行犯が試合中
        に、何らかの手段で天然痘ウィルスを撒いたのです。たと
        えば、ウィルスをたっぷり含ませた霧状の空気で風船を膨
        らませ、それを空気を吹き出させながら飛ばせば、簡単に
        散布できます。周囲の観衆はウィルスを浴びても、無色・
        無臭だし、潜伏期間が長いのでまったく気がつきません。
        犯行の証拠も残りません。

    「うーん、完全犯罪と言うわけか」と石田は唸った。「でも、
    犯人自身もウィルスに感染するのではないかね。」

         あらかじめ天然痘のワクチンを接種していれば、本人は
        平気です。わが国でも20年ほど前まではワクチン接種を
        していましたので、30代以上の人は大丈夫でしょう。

     昔、「種痘」と言っていた予防注射の事だな、と石田は思い
    出した。それで10代、20代のファンの多いサッカー試合を
    ターゲットとしたわけだ。それに10代なら学校へ行くので、
    2次感染も引き起こしやすい。いかにも緻密に計算されたテロ
    だ。

■4.ワクチンは?■

    「日本にはワクチンはまだあるんですか?」と石田が聞くと、

         ちょうど昨年、250万人分が生産された所です。本当
        に危ない所でした。米国の同時テロの直後、炭疽菌の入っ
        た手紙がマスコミや上院に届き、何人かが死亡した事件が
        ありましたが、これを契機に、バイオ・テロの危機意識が
        高まり、米国では1500万人分のワクチン備蓄を3億人
        分に増やす準備を始めました。わが国でも遅まきながら、
        厚生労働省が製薬メーカーに指示して、製造ラインを復活
        させ、250万人分を確保した所です。

    「それではすぐに10万人分ほど送ってもらい、患者の周辺地
    域、および、医療関係者、警察官などに接種しよう」と、石田
    は部下に命じた。

     しかし、新聞やテレビでは「N市に天然痘発生。発症者23
    人」などと報道を始めており、市内の病院は、熱が出たので天
    然痘ではないかと心配する人や、種痘はないかと駆け込んでく
    る人でごった返していた。また市内を離れようとする車や市内
    に入らずに引き返そうとするトラックなどで道路も大渋滞とな
    っていた。

    「いかん、これでは感染が拡大するだけだ!」 石田はすぐに
    警官を総動員して、市民には自宅で待機するよう呼びかけるこ
    とを指示した。しかし、その程度で感染が収まるかどうか、、、

■5.自宅の台所で培養できる■

     次々にあがってくる情報を聞き、また部下に指示を与えたり、
    関係部署と電話連絡をしながら、その合間を縫って、石田は坂
    井に次々と質問を浴びせかけた。坂井はたびたびの中断にも気
    を害さずに辛抱強く応対した。警察に最大限の知識と情報を提
    供する事が専門家としての自分の使命だと思っているのだろう、
    若いのに頼りになる人物だ、と石田は心強く思った。

         バイオ・テロだと言うが、天然痘のウィルスを入手して、
        大量に培養してばら撒くなんてことが、簡単にできるのか
        ね。

         そこが核兵器や化学兵器と違う所です。アメリカで、生
        物兵器の製造マニュアルをインターネットでも公開したマ
        ニアがいました。そいつは、医学部学生程度の知識があれ
        ば、炭疽菌やペスト、コレラ、チフスすらも自宅の台所で
        培養できると言っています。

         地下鉄サリン事件を起こしたオウムも、その直前に地下
        鉄霞ヶ関駅でボツリヌス菌の噴霧装置に改造したアタッシ
        ュケース3個を放置し、このうち一つから実際に蒸気が噴
        出しました。この時はアタッシュケースを担当した信者の
        一人が、自らのテロ行為に恐れをなして、わざと調整に失
        敗したようです。

■6.ロシアから流れたウィルス株と技術■

     石田は犯人探しの難しさに絶望感を覚えながらも、さらに手
    がかりを求めた。

         その件については、私も聞いたことがある。天然痘は撲
        滅後、アメリカとロシアでのみ、ウィルス株が保存されて
        いるんだろう? 培養は容易でも、ウィルス株を入手する
        のは誰にでもできることではないんじゃないかね。

     坂井は「結構知っているんですね」という顔をしながら、答
    えを続けた。

         たしかにオウムの場合は自然界に存在するボツリヌス菌
        を集めたので、あまり毒性も強くなかったと聞いています。

         天然痘についてはロシアで何十トンという単位で兵器用
        に製造していた事が判明していますが、それが現在は半分
        ほどに減っているという説があります。マフィアによる盗
        難や横流しにあっている可能性が高いのです。

         ロシアの生物兵器開発組織「バイオプレパラト」の第一
        副部長でアメリカに亡命したケン・アリベックが米国下院
        での公聴会で証言しているのですが、ロシアの研究者がイ
        ランやK国に渡り、またモスクワ大学では長い間、K国も
        含め、キューバ、イラン、イラクなどの科学者を教育して
        いたそうです。

         さらにK国から亡命してきた兵士の血液中にはごく最近
        接種された種痘の形跡がたびたび発見されていて、米国・
        韓国の情報機関はK国が天然痘ウィルスの不法所持を続け
        ていると断言しています。

         これらを総合すると、K国はロシアからウィルス株と高
        度な技術を入手し、いつでも使える兵器として所有してい
        ると考えて間違えありません。

■7.本当に脅威なのは、核兵器より生物兵器■

     坂井は、さらに気迫を込めて答え続けた。

         K国は核兵器開発をぶちあげて米国やわが国を恫喝して
        いますが、核兵器なら実験をしてもすぐに判ってしまうし、
        実際に使ったら国際社会から総スカンを食ってしまいます。
        またわが国を焦土にしてしまったら何も得るものはないば
        かりか、イラクのように米国から空爆を受けて現政権は一
        巻の終わりでしょう。

         本当に脅威なのは、生物兵器の方なのです。今回のよう
        に一地方に限ってごく限定的に使って、敵国政府に脅迫の
        メッセージを伝えることができる。それによってただでさ
        え弱腰の日本政府に強硬姿勢を取りにくくさせることがで
        きます。

         今回の感染規模はあきらかに限定的なものです。本気な
        らドーム球場や羽田空港あたりの換気システムに天然痘ウ
        ィルスの拡散装置をしかけて、一次感染だけで数万人の発
        症者を出せます。二次、三次感染と広がれば、まさにダー
        ク・ウィンターのように発病者30万、死者10万人とい
        うような規模に達するでしょう。

         今のSARSの数十倍の規模です。海外との貿易も往来
        も閉ざされて日本経済は壊滅します。もっとも日本経済が
        壊滅すれば、日本からの不法送金や覚醒剤密輸でなんとか
        しのいでいるK国も寄生虫国家のようなものですから、一
        緒に倒れてしまいます。この点から見ても、K国の意図は
        限定的なバイオテロで、何らかの脅迫メッセージを送ろう
        としたものでしょう。

■8.何も証拠は残らないのですから■

    「しかしバイオ・テロだと分かったら、いかに平和主義的な日
    本の国内世論でもさすがに激高して、かえって逆効果になるの
    ではないかな」と石田が聞くと、

         何も証拠は残らないのですから、日本政府がK国のテロ
        だと公言できるはずもありません。もちろん政府内部では
        そう確信するでしょうが。拉致問題でもあれだけ明々白々
        な物証や証言があったにもかかわらず、K国自身が認める
        まで、政府も野党勢力も、またほとんどのマスコミもうや
        むやにしてきたではありませんか。[a]

     石田は痛い所をつかれたと言う顔をした。警察としても、公
    安委員長が「K国による拉致の疑いが十分濃厚」と参院予算委
    員会で明言するほどの証拠を集めながら、拉致問題解決に向け
    て強いリーダーシップを発揮できなかったのは、痛恨の極みだ
    った。

■9.来るなら来い■

     石田は黙って考え始めた。K国からの貨客船が寄港するN市
    で、到着の1週間前に限定的なバイオ・テロが行われた。これ
    にはどんなメッセージが込められているのか?

     今回は日本政府が現金や核ミサイル用部品の不法船積みがな
    いか、厳重な臨検を行うと予告しているのだ。今回ばかりは見
    つかって問題になるようなものを運び出すはずがない。たぶん
    貨客船は単なる「見せ玉」なのだ。日本政府や警察にバイオ・
    テロがK国によるものである事を暗示し、今後、経済的な制裁
    を行ったら、より本格的なバイオ・テロを行う、という脅迫な
    のだろう。

     ここで貨客船に「感染の恐れがあるので寄港は見合わせられ
    たし」などという通信を送れば、わが国がこの程度のテロで大
    混乱に陥っているという弱みを見せてしまう。ここでテロリス
    トに屈すれば、奴らを増長させるだけだ。

     幸い、わが国は空想的平和主義から目覚めて、本腰を入れて
    取り組みさえすれば、バイオ・テロを封じ込めるだけの技術も
    人材も資金もある。この青年によれば、わが国は世界で最も安
    全で優れた天然痘ワクチンを開発していたそうではないか。そ
    れにわが国の工業力からすれば、1億2千万人分のワクチンく
    らい、すぐに作れるだろう。

    「来るなら来い」。石田は腹を決めた。そしてK国貨客船にこ
    う連絡するよう指示を与えた。

         当地では少数の天然痘感染者が発生するも、わが国の万
        全の医療体制・警備体制により、貴船が到着する頃には事
        態は収拾されている見込みである。N市への御来港を歓迎
        する。
                                               (文責:伊勢雅臣)