EEE会議(核燃料サイクルオプションと地層処分:IAEA専門家会合の概要)
2003/6/27


各位殿
 
最近、青森県むつ市における東京電力の中間貯蔵施設建設構想について注目すべき進展が報道されておりますが、一般に高レベル廃棄物の地層処分問題については各国それぞれの方法で真剣に取り組んでいるようです。 小生も今回のヨーロッパ旅行でそうした各国の状況を、きわめて限られた範囲内ですが、いろいろ視察してまいりました。
 
たまたま、核燃料サイクル開発機構(JNC)の河田東海夫氏が、先月末ウィーンの国際原子力機関(IAEA)で開催された専門家会合に出席され、その概要を次の通り報告してくださいました。大変示唆に富む重要な内容と思いますので、皆様のご参考までに。
--KK
 
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先月末、IAEAで「核燃料サイクルオプションに関する技術ワーキンググループ」会合があり、これに日本のメンバーの一人として参加してきました。
今回は、「核燃料サイクルオプションと貯蔵及び処分場設計との関係」が主要テーマで、14カ国が参加しました。
 
ここで、高レベル廃棄物の地層処分との関連についての議論で、ベルギー、フランス、日本から、直接処分とガラス固化処分の比較について以下のような報告がありました。また米国からの報告も注目に値するものでした。
 
(ベルギー)2001年以降再処理を止めたことを受け、その後の使用済燃料を直接処分することにした結果、従来の全量再処理の場合に比べ処分場の必要面積は4倍になり、コストは2.5倍になると見積もられた。
 
(フランス)ANDRAが、全量再処理の場合と、40%再処理・60%直接処分(2006年以後再処理中止のケース)の場合の地層処分場の概念検討を行った。直接処分の場合の使用済燃料の処分前冷却期間は、ガラス固化体処分の場合の倍としたが、60%直接処分のケースの処分場の総面積は、全量再処理のケースの約2倍となった。
 
(日本:小生が報告)スウェーデン型直接処分を想定した処分場の熱解析を行ったところ、ベントナイトの最高温度を100℃以下に抑えるためには、ガラス固化体処分の場合に比べ、約4倍の処分場面積を必要とするという結果が得られた。
 
米国からは、ユッカ・マウンテン計画がようやく具体的に進みだしたことにより、「地層処分場というきわめて貴重な社会的資源」を、今のままの直接処分で非効率的に浪費してしまう(2015年までに排出される使用済燃料で満杯になる)のは許されないとの認識が高まりつつあること、このため使用済燃料を核拡散抵抗性の高い方法で再処理することにより高レベル廃棄物の量と発熱を低減させ、処分場への収納効率を高める方策として「先進核燃料サイクルイ二シャティブ」(AFCI)が今年1月に急遽議会に提案され、3月に予算認可されたこと、が報告されました。
 
こうして、いずれの場合も直接処分では処分場の必要面積が相当大きくなることが示されましたが、これは使用済燃料に含まれるアクチニド元素の発熱影響がかなり大きい事に起因しています。
 
わが国では、プルサーマルが進まず混迷する中、「米国のように再処理を止めて直接処分でいいではないか」との議論も出だしています。一方その米国では、カーター政策から26年後の今日、直接処分の矛盾に気づきはじめ、反省しはじめているわけです。AFCIがどこまで本物に育ちうるのかは、しばらく様子を見る必要がありますが、米国のこの動きは大いに注目に値します。
 
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核燃料サイクル開発機構・経営企画本部 企画部
研究主席 河田 東海夫
E-Mail: kawata@hq.jnc.go.jp
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