EEE会議(Re:核燃料サイクルオプションと地層処分)
2003/6/30

各位殿
 
先日(6/27)、「核燃料サイクルオプションと地層処分:IAEA専門家会合の概要」と題する河田東海夫氏(JNC)のメールを配信しましたところ、これに対して豊田正敏氏(元東電副社長、前日本原燃社長)から次のようなコメントをいただきました。ご参考まで。
--KK
 
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 地層処分に関する河田氏の報告に対して次のようにコメントします。

 直接処分、ガラス固化処分のいずれを採用するかについて、処分場の所要面積も判断材料の一つではありま
すが、高速増殖炉が実用化出来ないとか、プルサーマルが何時までたっても経済的に成り立たなければ、この
ような議論をしても無意味であると考えます。JNCは、本来の使命である高速増殖炉及び高度再処理技術の実
用化のための技術開発に、もっと真剣に取り組み一日も早い実用化を目指すべきであり、それをなおざりにし
て必要性のみを強調するのは本末転倒といわざるを得ません。私としては、現段階では、これらの実用化が
40~50年後に実現されるという一縷の期待を持っているので、直接処分に賛成しているわけではありません
が、もし、これらの実用化の見通しが得られなければ、直接処分に踏み切らざるを得ないと考えております。

 処分場の所要面積については、処分概念、岩盤特性、深度などによって大幅に異なるがこれらの設計条件が
同じであれば、廃棄体の発熱量及びベントナイトの厚さと密度が主な支配因子になると考えます。わが国で採
用が考えられている花崗岩または堆積岩の場合、直接処分とガラス固化処分で2倍以上の開きが出るとは考え
られません。アクセス坑道や連絡坑道の共通部分も考慮すればその差はさらに縮まると考えます。ベントナイ
トの厚さ及び密度(珪砂含有量)、ベントナイトの飽和に伴う熱伝達係数の時間的変化、ガラス固化体の場合の
オーバーパックの腐食膨張に伴うベントナイトの力学特性特に流動化現象なども含め、処分場の設計内容と検
討結果の詳細をお知らせください。

 所要面積が大きくなる理由として、アクチニド元素の発熱影響をあげておられるが、FPのSrとCeがもっとも
大きな発熱源であり、かつ、アクチニド元素の大部分はガラス固化体にも含まれています。使用済燃料に含ま
れているPuとUによる発熱のみが相違点であると考えます。 

所要面積をそれほどまでに重要視されるのであれば、古川氏の提案されているトリウム溶融塩炉で40年の耐用
期間中、再処理しないで運転する方式を採用することについて検討すべきと考えます。これによれば、Puも生
成されず、アクチニド元素も殆んど発生せず、FPも炉内で中性子照射によってかなりの量が消滅することが期
待され、処分場の所要面積が飛躍的に小さくなると考えます。この方式は、Puを生成しないので核拡散防止の
観点からも極めて優れているといえます。

次に、地層処分場を「貴重な社会的資源」といっておられるが、わが国でも地下数百メートルのところは殆ん
ど利用されておらず、処分場の適地は数多く存在しておりますが、一般国民の9割以上が高レベル放射性廃棄
物の処分は危険であると考えている現状では、一箇所の処分場を作ることも不可能と考えます。まず、一般国
民に対する理解活動の抜本的見直し、強化が必要であり、これは、直接処分を採用するか、ガラス固化処分を
採用するか以前の問題であると考えます。以上

豊田正敏

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