EEE会議(Re:核燃料サイクル・オプション論争: 豊田氏→河田氏)......2003/7/10

皆様
 

標記のテーマに関し、豊田正敏氏から重ねて次のようなメールをいただきました。ご参考まで。 
なお、これは河田東海夫氏(JNC)宛てになっていますが、他の方々にもできる限りお考えいただき、コメントや反論を積極的にお寄せいただければ幸いです。度々申し上げる通り、「難しい厄介な問題について敢えて出来るだけオープンにかつ本音で議論する」というのが当EEE会議の1つの目的であり、存在理由でもあると考えておりますので。
--KK
 
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私のコメントに対して河田氏から解答を頂いたが、最も重要と考えられる次の点について解答されるよう要請
します。
@処分場の設計の前提条件と設計内容及び検討結果の詳細
A古川氏が提案しているトリウム溶融塩炉の評価
B一般国民の9割以上が高レベル放射性廃棄物の処分は危険であると考えている現状をどのように考えておら
れるか。このような状態で処分が円滑に進むと考えておられるのでしょうか。

 再処理・プルトニウムリサイクルは、高速増殖炉の実用化を大前提に進められてきているのであって、本命
の高速増殖炉が計画通り実用化されれば、このような議論をする必要はありません。しかるに、その実用化の
見通しが何時までたっても不透明な点が問題であると考えます。「もんじゅ」があの程度のトラブルで10年以
上停止し、毎年、100億円の巨額の国費を浪費しているにも拘わらず、全く責任を問われないのは一般国民と
して納得できません。私は、貴殿に対して、月刊誌「エネルギー」昨年12月号でJNCとして責任をもって確約
できる実用化時期を詳細な実施スケジュールとともに示すよう要求しておりますが今なお解答がないのでこの
際、再要求します。
また、同誌1月号で、「原子炉級プルトニウムは、核爆発装置製造の観点からは全く魅力がない」と述べてお
られるが、今でもその考えに変わりがないのか、或いは、あれは無責任な発言であり、発言を取り消すといわ
れるのかお聞きしたい。

核燃料サイクル政策は、経済性、エネルギー・セキュリティ、環境負荷、核拡散防止などの観点から総合的に
判断して決めるべきであって、処分場の面積は一つの判断材料に過ぎないと考えております。
もし、貴殿の言っておられるように処分場の面積が最重要であるとするならば、何故、古川氏の提案さている
トリウム溶融塩炉の採用を考えないのでしょうか。
私は前回、『わが国でも地下数百メートルのところは殆んど利用されておらず、処分場の適地は数多く存在し
ておりますが、一般国民の9割以上が高レベル放射性廃棄物の処分は危険であると考えている現状では、一箇
所の処分場を作ることも不可能と考えます。まず、一般国民に対する理解活動の抜本的見直し、強化が必要で
あり、これは、直接処分を採用するか、ガラス固化処分を採用するか以前の問題であると考えます』とコメン
トしておりますが、これを全く無視して、独り善がりの主張を繰り返すのは、失礼であるとお考えになりませ
んか。わが国には、沖合い立地や人口の少ない無人島に近いところまで含めれば、さらに多くの適地があると
考えます。問題は、一般国民が安心できるような理解活動を殆んどしていないことが最大の問題であると考え
ております。

 私の燃料サイクルに対する考えは、永崎氏の再質問に対する解答の中でも明確に述べているので参照された
いが、私は、英仏からの再処理委託に伴って回収されるプルトニウムのプルサーマルも六ヶ所の再処理も必要
であると考えております。ただ、必要とする理由は相違します。原子力関係者が独り善がりの考えを押し付け
るのではなく、上述の解答で述べているような本音の理由によって説明しなければ、地域住民特に福島県知事
の納得は得られないのではないでしょうか。

次に、経済負担の問題ですが、国が支援するにしても結局は、一般国民が税の形で負担することになるので、
国の財政が逼迫している中で果たして理解が得られるか疑問に思っております。この問題は、福島県知事も
言っておられるように、原子力関係者の独り善がりの判断ではなく、国民的レベルで議論して判断すべきであ
り、一般国民、大口電力消費者、福島県知事を含む地域住民、株主、技術評論家、経済評論家、マスコミ関係
者などの意見を幅広く聞いた上でこれらの意見を政策に十分反映させるべきであると考えます。

最後に、処分場の面積の問題でありますが、私は40~50年間、高速増殖炉が実用化されるまで長期貯蔵し、
40~50年後に高速増殖炉が実用化された時点で、再処理・プルトニウムリサイクルをする方が遥かに得策であ
るとして提案しているのであって、現段階で直接処分に賛成しているわけではありません。
40~50年後に高速増殖炉が実用化出来れば、再処理してガラス固化体にする時期はずれても処分の時期は変わ
らないので処分場の面積には何ら影響ないはずです。この点、何回説明すればお判りになるのですか。高速増
殖炉が実用化されなければ、このような議論をしても無意味である点も了承願います。

廃棄体の発熱量については、アクチニド元素の発熱影響といっておられたので、相違点は、PuとUの発熱のみ
であって、他のアクチニド元素はすべてガラス固化体にも含まれていると指摘しているのであって表現が不適
当であると考えます。アクチニド元素といえば、通常その総称であり、Pu及びその娘核種のみをアクチニド元
素と呼ぶ人がいるのでしょうか。何故、誤解を避けるため、Pu及びその娘核種と明確に言われなかったので
しょうか。私もPu及びその娘核種の発熱の影響はあると考えており、これにより、処分場の面積が2倍程度に
なると推定しておりますが、4倍になるとは考えられないので、チエックしてみたいので、処分場の設計の前
提条件と設計内容及び検討結果の詳細を提出されるよう要求しているのであります。何故、国際会議に提出さ
れているのに、直ちに提出できないのでしょうか。

なお、次の点を追加的にコメントしておきます。
@ 処分場の最適設計は、処分場の立地が決まり、その岩盤特性や深度などが決まらなければ出来ない
A ベントナイトの許容温度100℃は絶対的なものではなく、処分場閉鎖後、100年程度の間20~30℃程度高く
なってもベントナイトの変質は考えられないので許容できるとの考えがあり、私もこの考えに賛成している
B 処分場の処分概念の決定にあたってはretrievableなど地域住民の安心を得るための安全対策についてその
意向を十分反映させるべきである
C 最初の処分場は、一般国民に約束しているので40~50年後に処分する必要があるが、次の処分場からは、高
レベル放射性廃棄物の貯蔵期間を100年程度に延ばす方が処分場の面積も減り、処分費も総合的には安くなる
以上の私のコメントに対し各項目毎に賛成か反対かを明確にされ、反対の項目については、すれ違いにならな
いような反論をされるよう要請します。その結果により、会員の皆さんの判断を仰ぎたい。        
                         以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp