EEE会議(Re: 核燃料サイクル・オプション論争: 豊田氏のコメント)..................................2003/7/16

皆様

標記テーマに関する永崎隆雄氏のコメント(7/12)に対し、豊田正敏氏からさらに次
のようなメールをいただきました。 ご参考まで。

なお、現在進行中の本件論争を今後どのような方向に発展(または収斂)させて行く
べきかについても、積極的なご意見やご提案を歓迎します。 「金子限り」あるいは
匿名でも結構です。また、改めて申し上げるまでもありませんが、小生宛てに頂いた
メールは、特段のお断りがない限り、すべてそのまま(原文のまま)配信しておりま
すので、ご了承ください。
--KK
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永崎氏の再々質問に次のように解答します。

1. 私は通産省に激怒したのではなく、通産省の役人の指示があったからといって、
日本原燃(株)が、電力会
社に相談しないで、でたらめな内訳を作り電力会社を騙していたことに激怒したので
ある。別の会社の建設費
をどのようにして計算できるのか、お聞きしたい。総括原価主義でいくら高くなって
もよいと考えていたなど
という失礼な質問は取り下げられたい。私は今まで、原子力を進めるにあたって安全
性、信頼性(地元住民の
信頼確保を含む)及び経済性を重点に進めてきたつもりである。

2. 私は前回にも説明したように、エネルギー調査会の資料は信用できないと考えて
おり、この点は電力会社
に確かめてもらえば判ることである。なお、私は現時点で直接処分に賛成しているわ
けではなく、40~50年間
長期貯蔵し、40~50年後にプルサーマルまたは高速増殖炉が経済的になれば、再処理
・プルトニウムリサイク
ルすることを提案しているのである。プルサーマルをやめ、直接処分を採用すべきで
あるとは一言も言ってい
ない。
貴殿の計算をチエックするつもりはないが、MOX燃料加工費及び高レベル廃棄物処分
費の計算方法または前提
条件に誤りがあるのではないかと思う。もう少し勉強されてはどうでしょうか。

3. 再処理を今後も続ける必要があるのは、使用済燃料の量を減らし原子力発電所の
停電を避けることが本音
の理由であり、それ以外は考えられない。
「将来世代への負の遺産を減らす」というのはどういう意味か私には判らない。高レ
ベル放射性廃棄物は放射
能量と発熱量が主な支配因子であって、重量ではないことを指摘しておく。処分場の
所要面積については、
JNCの河田氏との討論を参照されたい。
また、これまでの説明でも述べてきたように、現在溜まっている英仏の再処理委託に
伴って回収されるPuは
「余分のPuは持たない」との国際約束からもプルサーマルにより出来るだけ早く燃や
すべきであると考えてい
る。
むしろ、プルサーマルが思うように進まず、3~4年後にも3~5基程度の原子炉でしかプ
ルサーマル出来ない状況
で、六ヶ所再処理工場で再処理を開始し、プルトニウムを回収すれば、プルトニウム
がさらに増えつづけるこ
とになるが、これは貴殿の言っておられる国際信義に反しないといえるのか、米国初
めアジア諸国の疑念を晴
らすことが出来るかが問題であり、これら関係諸国の了承を得て再処理を続けること
が出来るかどうか懸念し
ている。

4. 電力自由化の時代を迎え、電力経営者は電力費を1銭/kWhでも安くし、日本経済の
国際競争力を高めること
がその責務であると考える。ウランが安い現段階ではウランを燃やし、長期貯蔵した
使用済燃料は、40~50年
後にウラン価格が上昇しかつ、プルサーマルが経済的になれば、その時点でプルトニ
ウムを燃やす方が遥かに
経済的に得策であると提案しているのである。

5. わが国の核燃料政策の基本は、高速増殖炉・プルトニウムリサイクルであって、
プルサーマルはそのつな
ぎとしてごく短期間しか許容されないと考えている。このことは国際会議INFCEでも
日本及び西独が約束した
ことである。
私は、状況変化に対応して政策変更するのは当然であると考えている。状況変化に対
応せず、問題の先送りを
していることが原子力に今回の危機をもたらした一因であると考える。繰り返すが、
プルサーマルが安くなる
までの間、長期貯蔵することを提案しているのである。

6. MOX燃料加工費がウラン燃料の4倍のままであれば、再処理費が0.7億円/トン円程
度でもプルサーマルは経
済的にならないことは既に述べたとおりである。私の最初の解答の第1表を参照され
たい。なお、諸外国で再
処理費0.7億円/トン円程度といっておられるが、OECD/NEAの報告書の再処理費
720ECU/kgHMは2007年に運転開
始する仮想の最新再処理工場での恣意的な推定コストであり、さらに、2000年への現
在価値換算を行って安く
見せかけたものである。実際に今後作るとすれば、放射能の放出基準がわが国並に厳
しく規制されるので、
UP-3よりも建設費が高くなると考えられる。今のような進め方で、六ヶ所再処理工場
の寿命が来る20年後に、
誰が第二再処理工場を作ることが出来るとお考えなのかお聞きしたい。

7. 繰り返して申し上げるが、私は現段階で直接処分に賛成しているわけではなく、
長期貯蔵を提案している
のである。また、状況変化により、柔軟かつ機動的に政策変更すべきであるといって
いるのであって、ウラン
の需給が逼迫し、ウラン価格が異常に上昇すれば政策を見直すことは当然である。し
かし、ウラン価格が現在
の2~3倍の100~150ドル/kgU程度になってもMOX燃料加工費が安くならなければ、上述
の第1表に示したようにプ
ルサーマルは経済的にならないと考える。貴殿の引用されているIAEAの最近の研
究は信用できない。私は
2050年まではウランの需給はそれほど逼迫することはなく価格が100ドル/kgUを超え
る可能性は高いが、150ド
/kgUを超えることはないと考えている。ウラン協会など他の機関の見解を確かめられ
たい。

8. 高速増殖炉の実用化時期については、権限も能力もない貴殿と討論するつもりは
ない。
私は、JNC中神氏に対し次の要請をしている。
『高速増殖炉の実用化のための各段階ごとの確信の持てる詳細なスケジュールをお聞
きしている。例えば、要
素技術開発では、各要素ごとにどのくらいの期間に安全性、信頼性の確認が出来る
か、見積価格徴収後の見積
審査及びメーカー選定、詳細設計、立地選定、地元了解、安全審査、建設据付、試運
転、運転開始後の実証期
間等を示して欲しい。軽水炉でさえ、新設プラントの場合、計画から運転開始まで少
なくとも20年かかってい
ると言う事実を考慮されたい。
また、新しいプラントの場合、運転開始後数年間はトラブルが多発し、その際、今回
の「もんじゅ」のように
長期間停止することもあり得ることを考慮すべきである。
 また、「もんじゅ」に続き、実用化までに実証炉、実用炉(パイロットプラント)の
2段階が必要と考えてい
るが、実プラントのみでよいと考えられた理由をお聞きしたい。それで電力会社が高
速増殖炉の商業プラント
に踏みきれるとお考えでしょうか。
また、 再処理高度技術及びMOX核燃料製造技術についても、どの方式を何時までに
選定するのか、また実用
化のための実施体制及び実施スケジュールの詳細をお聞きしたい。』
現在までに中神氏からこれらに対する解答がないが、中神氏に再度解答されるよう要
請する。解答された上で
討論したいと考えているのでそれを参照されたい。

9. 『原子力委員会が核燃料サイクルの意見を聞く意向である』のであれば、原子力
会議に原子力委員、福島
県知事、 原子力未来研究会に私を加えたメンバーとの間で公開討論会を開催される
ことを要請する。
また、原子力委員がEEE会議での討論に参加されるよう要請する。原子力委員会には
説明責任があるので、断
るわけにはいかないであろうと考える。このため、金子様に会員以外の方でも特定の
テーマに限り、指名され
た方には討論に参加できるように運営規則の改訂をお願いしたい。なお、『意見を聞
く』は『意見を聴く』に
訂正すべきである。単に相手の意見を聞きおくだけでなく、身を入れて聴きその意見
の妥当と考えられるもの
は政策に十分反映させることを考えるべきである。中間貯蔵は、私の提案している原
子力発電所敷地内の長期
貯蔵とは異なり、一部の使用済燃料が貯蔵できるに過ぎず、これに多くを期待できな
い。というのは、地元に
とって雇用も税金収入も多くを期待できず、それほどの数の中間貯蔵地が確保できる
か疑問である上に、新た
に用地の確保、港湾施設の新増設及び使用済燃料の輸送が二重になることなどから、
日本経済にとっても望ま
しいことではない。何故、中間貯蔵はよくて、原子力発電所敷地内の長期貯蔵は認め
られないのかお聞きした
い。また、貴殿が『長期貯蔵を認めないというのは事実に反する』といわれているの
はどういう意味か聞きた
い。

10. 言っておられることがあまりにもひどくコメントする気にもならない。「エネル
ギー」6月号の拙稿を一
部加筆訂正した「原子力開発の進め方に対する提言」を別添ファイルで送るのでよく
読んで参考にされたい。
これは他の会員の方にも読んで頂いてご意見、ご批判を賜りたい。

11. 前回、『地域住民の理解を得ながらプルサーマルを進めるためには、全炉心から
ではなく、先ず、1/3炉
心から始め、炉心特性を確かめながら段階的にプルトニウム含有量を増やしてゆく方
法を取るべきである』と
いう私のコメントに同意されたと理解しているが、そうではないのでしょうか。
 以上の私の説明ないしコメントに対し、賛成か反対かを各項目毎に明確にし、反対
のものについては、私の
説明を理解した上ですれ違いにならない反論をされるよう要請します。何回も同じ説
明を繰り返させるのは相
手に対して失礼とはお考えになりませんか。以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp

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後記

上記9.に関し、「原子力委員がEEE会議での討論に参加されるように要請する」の
は、現在の小生の立場では困難な気がしますが、当EEE会議としては、これまで特定
の方々の参加(発言)を拒否したことはなく、ご希望があればどなたでも自由に参加
できる建前になっております。 ただし、累次のご案内のとおり、目下EEE会議を会
員制に切り替える準備を行っているところであり、今後いかに当会議を運営して行く
かについては、皆様方のご意向を十分斟酌しつつ、できるだけ合理的かつ効率的な運
営を心掛けたいと考えている次第です。 ちなみに、原子力委員に限らず、どのよう
な方々が現時点でEEE会議のメーリングリストに載っているかは具体的に申し上げる
ことが出来ませんが、官民各界各層の方々にメールをお送りしていることは事実で
す。右念のため。
金子熊夫 拝